55話
オウルはシーザーの言葉に到底賛同などできなかった。
それに賛同することは、いままで歩んできた騎士道が、自分が信じてきたことの土台が、ガラガラと跡形もなく崩れ去ってしまう。
だからこそ認められるかと憤り、ニヤニヤと笑う目の前の男を生かしてはおけないと剣を握る手にグッと力を入れて声が張り裂けんばかりの大声で叫んだ。
「戦場にも美学というものが存在する‼︎騎士たるものならば正々堂々と戦うことこそが本懐である!騎士道に反する貴様のような貪汚に心を侵された男など絶対に生かしてはおけん‼︎騎士の誓いの元、必ずや貴様を屠ってくれる!」
オウルは言い終わると息が切れたかのように鼻息を荒くしてシーザーを睨みつけた。
その目はもはや冷静ではなく、ある種の拒絶反応を起こしているかのようだった。
「ククク、いいぞいいぞ。自らの信条に酔いしれろ。その酔いが深ければ深いほどそれが覚めたときの輝きは甘美なものになるぞ?」
ククク、と嗤笑しながら姿を消していくシーザーを見て、オウルは理性を半分失っていてもほぼ反射的に警戒の声を上げた。
「っ‼︎警戒せよ‼︎」
先ほどまで姿を消す能力を使えていなかったはずのシーザーが姿を消したことでオウルの頭に警鐘が鳴り響いていた。
油断など出来ようはずもない。
たとえ能力を封じようと、どれだけ仲間との連携で相手を追い詰めようと、まだ一度たりともシーザーに傷をつけれていないことには変わりないのだから。
終始オウル達が押しているが、押しているだけで決めきれない。
オウルが叫んだときには全員が即座にフォロー出来るように陣形を張り終わっていた。
しかしそんな陣形など嘲笑うかのようにシーザーの声が陣形の内側から聞こえてきた。
「まず、一つ目。先ほどからずっと観察していて思ったのだが・・・・・・お前は余程部下が大切らしいな?」
シーザーはオウルから少し離れたところにいるオウルの部下の背後に現れその頭をガシッと鷲掴みにした。
部下も必死でその手から逃れようとするがシーザーが何気なく掴んでいる手によって首から上が微動だに動かない。
オウルは声がした方に振り返りながら叫んだ。
「当然だ‼︎我らは一心同体である‼︎部下を奴隷の如く扱う愚か者もいるが、私は違う!部下とは戦場で我が身を預ける家族であり体の一部同然である‼︎」
オウルが自身を奮起させ、部下を鷲掴みにしたまま離さないシーザーを怒りの目で睨みつけた。
シーザーも握る力を強めているのか、ミシリと音がしそうなほど部下の顔が苦痛に歪み始めていた。
「そうかそうか。ククク。お前達の再生能力は確かに大したものだ。だが、こんな風にしたらどうなるのだろうな?」
シーザーは子供が虫を遊びで殺すような無邪気で邪悪な笑みを浮かべながら鷲掴みにしている男の頭に短剣をゆっくりと突き刺した。
「あ・・・が・・・⁉︎」
脳を短剣で突き刺された男はまるで魚が陸でピチピチと跳ねるかのように
首から下がピクピクと痙攣していた。
シーザーはオウルに向かって‘助けてみろ‘と挑発するかのようにニヤリと笑い、グリグリと短剣を回した。
シーザーが放つ異様な空気に飲まれて固まっていた他の部下達もすぐさま仲間助け出そうと怒りの表情を浮かべてシーザーに群がってきた。
シーザーはニヤッと陰湿に笑うだけで、四方八方から襲いくる攻撃を避けようとすらしなかった。
シーザーが攻撃をしているときは実体化しなければならないことはもう承知している。
だからこそ、攻撃を仕掛ければ実体を持つものには触れられなくなり仲間は助けられる。
そう思っていた。
部下達の剣は霧状化によって当たることはなかったが確かにシーザーを貫いた。
部下達は自身の思い通りに事が運んだと自然にニヤリと口角が上がった。
が、その口角はすぐに下がることとなった。
刺している。
何本もの剣が確かにシーザーを貫いている。
そして思った通りにシーザーは霧状化の能力を使っている。
なのに何故、捕まえられている男はまだ苦しんだままなのか。
シーザーから逃れることが出来ていないのか。
理解できない現象を前にして部下達はたじろぎシーザーからヨロヨロと離れた。
‘違う。明らかにさっきまでとは様子が違う’と。
オウルは先ほどまでの一連の戦いはただの演技だったのかと疑いを持ち始めるほどシーザーの纏う雰囲気、そして放つプレッシャーが段違いであった。
「ククク、そしてこうして・・・・・・」
シーザーは実験でもするかのようにそのまま更に短剣をグリグリと捻り回し始めた。
「あ・・・・・・あ、が・・・・・・‼︎」
刺された男は更にピクピクと痙攣し口から泡を吹いていた。
その様子を見て、笑いが抑えられなくなったシーザーはさらにグリグリと深く突き刺した。
「ククク、アハハハハ、どうだ?自分の家族を、体の一部を傷つけられた気分は?さっきお前達を攻撃していたら気づいたことがある。再生しているだけで痛みは感じているのだと。確かに即死の攻撃なら痛みは最小限で済むし、それ以外の攻撃もすぐに治せば痛みはほぼ失くすことができる。その優れた連携があれば、たしかに持続的な痛みなんてないわけだ。なかなか考えられている」
シーザーは自身を先ほどまで苦しめていた戦術に素直に賛辞を送った。
だが、その言い草はとても苦渋の嘗めた人物のものではなかった。
シーザーは短剣を動かす手をピタリと止めてオウルの方に視線を向けた。
「それで?君は家族を助けないのかい?」
いつまで経っても動かないオウルに痺れを切らしたかのように、そして少し遊びに飽きてきた子供のような雰囲気を纏いシーザーは問いかけた。
‘他の者はすぐに動いたのにお前は動かないのか?’と侮辱の笑みを浮かべながら。
オウルの固まっていた体も突然硬直が解けたかのように力が漲ってきて、部下達に比べればだいぶ遅れながらも怒りの表情を浮かべてなりふりかわまずシーザーに突っ込んできた。
「お前は部下が攻撃されるたびに顔を歪めていたな?そんなに大事なら宝箱にでもしまっておけば良いんじゃないか?家族と騎士道、一体どっちをお前は選ぶのかな?さぁ、教えてくれ」
向かいくるオウルに向かってシーザーは嬉しそうに稚気を帯びた様子を見せていた。
自身が封じていたものを解き放ったかのような様変わり具合は一種の狂気を孕んでいた。
ロキや『傀儡士』が放つような狂人の気配。
オウルは心を侵すような狂気に満ちた波動を受けても、意志に反して進むことを躊躇う自身の足を叱咤しながらシーザーの元まで駆けた。
オウルが目の前まで来てもまだニヤけているシーザーを視界に入れながらオウルは剣を横なぎに放った。
「ふん‼︎」
それはシーザーを狙った攻撃ではなく部下の首を飛ばすための攻撃だった。
今までシーザーを苦しめていた再生能力やその他の能力はオウルの持つエルフの武具1つの力であった。
仲間との連携に特化した能力を持つ武具であり、仲間が多ければ多いほどその効果も高くなる。
オウルが身につけている鎧とセットで用意された鎧を着た者が能力の対象となる。
オウルが身につけている鎧1つに対して最大100個のセットの鎧が昔はあったらしいが、いまでは失われて用意されているのは65個。
14個余っているが、オウルはそれを見ず知らずの誰かに着せることはなくずっと戦ってきた部下達だけに着せることを選んだ。
実際オウル達が死ななかったのは仲間全てが運命共同体であり、一度の戦闘中に命が失われる攻撃を仲間の数だけ無かったことにできる能力のためである。
オウル達はオウル含め52人。
52回分はたとえ何度殺されようと再生するということだ。
シーザーは何度か死に至る攻撃をしているが、まだ21回。
そして細かなダメージが蓄積したことによる死亡判定が2回。
計23人分の命しか取っていない。
それゆえ何度殺そうとまだオウル達は死なないのである。
そして死んだ回数が高くなるほどその連携にもバフがかかるようになるため、殺せば殺すほど相手も強くなる。
エルフの武具の中でもかなり強力な部類と言ってもいい能力である。
だが、そうは言っても同時に全員が死ぬような攻撃を喰らえばその能力は無いに等しいため人によってはそれほど強い武具に感じるというわけではない。
それこそ熟達した魔法師ならば一撃で全員を屠りさることも出来るだろう。
戦いの場を選べばかなり使い勝手が良い武具ではある。
オウルは自分の部下を助けるために殺そうとした。
そのオウルの行為にシーザーは嬉しそうに口元を笑みで歪めた。
たとえ生き返ると分かっていたとしても、自分の中では仲間を助けるためと正当化されようと、仲間を手にかけようとしたことには違いはない。
先ほど騎士の誓いを口にしたその手で仲間殺しという大罪を躊躇なく犯す。
その人間の都合の良いことを優先する醜さを目の当たりにしシーザーは恍惚とした表情を浮かべていた。
‘ああ、醜い’と
生き返るから、仲間も了承しているから。
そんな理屈はシーザーには通用しない。
あるのは自らがした行為の結果だけ。
(ああ、これこそが人間の本質、本性・・・・・・。口ではどれだけ綺麗なことを言おうが所詮そんなものは口先だけ・・・・・・。命を賭してまでそれを守れる者などいはしない。ククク、その自分は正しいという顔が崩れ去るときが見ものだ)
騎士として仲間を殺すという禁忌を犯そうとしたオウルの頭を占めているのは仲間を救えなかった自責の念しかなく、そこに罪悪感が入るような隙間など微塵もない。
だがそれも当然である。
オウルにとって先ほどの行為は正当なもの。
仲間を救い、戦いに勝つための手段でしかないのだから。
仲間殺しという考えすらない。
オウルは剣を振り終わった体勢でシーザーを親の仇とでも言いたげな血走った目で睨んでいた。
「どうした?そんな怖い顔をして。騎士としての禁忌、仲間殺しを防いでやったんだ。騎士として私に感謝の気持ちを表してはどうだ?ククク」
オウルの攻撃はシーザーに攻撃したときと同じように男の体をすり抜けていった。
シーザーが自身の能力を捕らえている男にも適応したためだ。
「き、きさまぁぁぁぁ‼︎このようなことをして心が痛まんのかぁぁ‼︎その男には妻子もいるのだぞ⁈それを・・・・・・、それを‼︎」
シーザーの残虐性について非難してくるのかと思えばまさかの情に訴える言葉。
シーザーは一瞬呆気に取られたかのようにキョトンとした表情を浮かべたあと必死に笑い転げるのを我慢していた。
「だからなんだ?まさか妻子がいるから傷つけるなとでも言うつもりか?まさか・・・・・・戦場で笑い殺されそうになるとは思わなかった・・・・・・ク・・・・・・クク、お前は戦場をお遊戯の場だとでも思っているのか?まさか一方的に相手を殺すことができるとでも?死ぬ覚悟どころか傷つく覚悟すらないとはな」
オウルは歯をグッと噛んで何も言い返してこなかった。
いまのオウルにとってはシーザーの言葉などどうでも良く、どうやって仲間を助けるかということしか頭になかった。
シーザーを殺すことよりもそれが優先されていた。
シーザーはため息を吐くと捕らえていた男の頭から短剣を抜き、その男の髪の毛をグイッと掴んで勢いよく投げ捨てた。
すぐさま抜いた短剣の部分が回復し男は意識を取り戻した様子であったがシーザーはそんな男のことなどもうどうでもよかった。
「はぁ〜、興醒めだ。まさかこれほどつまらない男とは。ただ傷つくのが傷つけられるのが怖いだけとはな。うちの幼主様ですら傷つく覚悟ができているというのにお前達はその歳で傷つくのがただ怖いだけとは。基本的に醜い人間というものは死に際が面白いから好きだけど・・・・・・お前はダメだな。まぁいい。もう少しゆっくり遊ぼうかと思ったけどお前達に戦場ではどういうことを覚悟しないといけないか、その身に教えてやる。ただ綺麗事を抜かすだけの紛い物の騎士ではなく真の騎士たる者の実力を見せてやろう」
シーザーが短剣を前にかざすと薄暗い青色のオーラがシーザーの手に纏わりついた。
しかしまだオウルの闘志は死んでいなかった。
シーザーが何かするよりも前に力を込め始めた。
「ほざけ‼︎貴様など我らの力の餌食としてくれるわ‼︎」
紛い物の騎士という言葉は聞き捨てならんかった。
仲間も助かり、もう気にすることはない。
騎士としての誇りにかけて目の前の人物を何としても打倒しなければならないとその思いだけがいまのオウルの原動力であった。
オウルが全身に力を込めると身につけている武具からオーラがゆらゆらと浮かび上がった。
「はああああぁああああぁぁああぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎」
オウルがさらに心を興起させ叫び声を上げると鎧から発していたオーラが大きくなり四方に広がっていった。
そのオーラがシーザーの足元を通り過ぎようが全く反応を示さずただ叫び声を上げているオウルのことをつまらなさそうに見ていた。
風が何かに吸い込まれるように動き出し、吸い込まれていくほうを辿るように視線を動かすとオウルの持つ剣に尋常ならざるオーラが纏わりついていた。
その剣は眩い光を放ちながら脈動し全てを喰らいつくすような輝きを放っている。
「我が神具の奥の手よ‼︎慢心したな‼︎貴様の命運ももはやここまでだ‼︎」
自信満々にニヤリとオウルが笑い、剣を振り上げた。
その剣が纏う力をまともに扱えていないからかその振り上げる動きは鈍重であったが、その場には誰も動く者はいなかった。
いや、動けないのだ。
オウルの部下達は自身の力全てをオウルへと捧げたのだから。
シーザーは今まさに破壊の限りを尽くさんとするその剣を見て鼻で笑った。
その顔に焦りなどというものは微塵もなかった。
「その余裕ぶりも今のうちだ!貴様はもはや逃れることなど出来ん‼︎『滅敵鎹斬』‼︎」
『滅敵鎹斬』は仲間の力を集めそれを一撃に込める技。
因果を無視した必中の攻撃。
たとえシーザーが霧状化しようが逃れることなど出来やしない。
オウルが剣を振るうとシーザーの身長の3倍ほどの大きさにもなる凄まじい斬撃が地を砕きながらシーザーに迫ってきた。
だが、シーザーは避けようとするどころか、手に持っていた短剣を投げ捨てた。
こんなものは不要とばかりに。
「言ったはずだぞ。真の騎士たる者の実力を見せてやると。紛い物の力に頼る程度では成しえぬ領域をな」
シーザーが好むことは相手の嫌がることをすることである。
普段は真面目に任務をこなす模範的な騎士であるが、一度スイッチが入ってしまうともう任務のことなど頭から抜けてしまう。
シーザーはその気になれば最初からオウル達を瞬殺できるだけの実力があるのである。
だが、その実力が発揮されるのはシーザーが不真面目なときだけ。
オウルは最初シーザーが遊んでいたのだと思っていたが、そうではない。
探っていたのは事実であったが、シーザーは最初攻めきれていなかった。
だが、オウルの言葉を聞くうちに興が乗ってきたシーザーの力は徐々に上がってきた。
任務中に遊ぶ悪癖があるとはいえ任務に失敗するということはないため特に問題はないのであるが、最善を尽くさないためダンケルノ内でのシーザーの評価は分かれている。
そのためダンケルノ公爵家の使用人としての格は低く、また興が乗ったときにしか全力を出さないので騎士としての階級も騎士級止まりなのである。
そんなシーザーが自らの攻撃に自信を持っている男の攻撃を真っ向から叩き伏せないわけはなかった。
それを叩き潰したときにどれほど面白い反応が見れるかと。
シーザーは迫りくる斬撃に対して嗜虐的な笑みを浮かべてただただ右手の手のひらを前へと突き出した。
腰を落として衝撃に備えることもなくただただ棒立ちである。
眩い閃光がシーザーを飲み込んでいった。
凄まじい閃光と爆発が起こり、辺り一面を砂煙が覆い尽くした。
砂が舞う音だけが辺りを支配し、視界が戻るまでかなりの時間を有した。
オウルは手応えを感じニヤリを笑い、力尽きたかのように膝から崩れ落ち剣を杖のようにしてなんとか倒れるのは免れた。
まさに神に入る一撃であった。
砂埃が晴れてきたがオウルはもはやシーザーなど跡形もないだろうと思っていた。
普段『オーラブレイド』を見る機会のないオウル達にとってはもはや先ほどの攻撃は理を超越した神の一撃。
たしかにオウルの放った一撃はオウル達全員の力を束ねて放たれた一撃であるため普通の『オーラブレイド』よりは威力が高かった。
オウルとシーザーの間にある斬撃が通った地面はもはや一切原型が留めないほどその一帯だけ荒廃とした土地のようになっているし、生えている草もすべて根こそぎ引っこ抜かれ荒れた地が露出していた。
その光景を自分が作り出したのだとオウルはにやける顔を抑えることが出来なかった。
しかしその先、そこに浮かぶ人のような影を見てオウルの表情は凍った。
砂煙が徐々に晴れ、その姿が見えるようになってきた。
シーザーは傷一つなく、技を放つ前と同じ状態であった。
そしてシーザーの後ろ、その大地がまったく傷ついていなかった。
オウルも馬鹿ではない。
その意味に気づいてしまった。
馬鹿な、ありえない、そう考えすぐに、勝てない、勝てるわけない、という感情が心の中から無意識に湧き出るほどオウル達にとってシーザーの行為は生物としての格が違うと思い知らされた。
自身が撃った攻撃ですらオウルには手に余る力なのである。
それを止められた。
それも必死にギリギリ止めたわけではない。
無傷、無傷なのだ。
自身と仲間全ての力を集めて放った攻撃が無傷。
全てを束ねても傷一つつけられぬのか、とオウルの心が折れる音がはっきりと聞こえた。
先ほどの一撃を横から見ていた部下達はシーザーがどうやってあの攻撃を止めたのかを見て、ある者は絶望したような顔を浮かべ、ある者は諦めたかのように地面に倒れ伏した。
シーザーはただ手を前に突きだし、その攻撃をハエでも払うかのように無造作に打ち払ったのである。
たったそれだけで、たったそれだけで自分たち全員の力が破れたのかと拳を握りしめもはや無い力を振り絞って地を叩き、その理不尽さを呪った。
シーザーがどうやって止めたのか分かっていないオウルですら畏れを抱いたような顔をしていた。
敵対者に畏れを抱くなどもはや終わりであった。
「どうした?そんなにガタガタと震えて。お前も分かっていたことだろう?言ってたじゃないか、私の方が実力が上だと。仲間とともに戦わなければ倒せないと。私はちゃんとお前に聞いたぞ?逃げないのか、と。逃げる者には慈悲を与え、立ち向かう者には絶望を与える。この結末は当然の結果に過ぎない。・・・・・・その武具はたしかになかなか良いものだが——」
シーザーは無造作に手を振り上げオーラを纏わせると誰もいない方に向かって振り下ろした。
たったそれだけ、たったそれだけのことでさっきオウルが放った『滅敵鎹斬』と同等かそれ以上もの威力のある『オーラブレイド』が放たれた。
その光景を見て、オウルは僅かにあった生への希望が完全に潰えた音を聞いた。
「その程度の攻撃が奥の手ならば私にとっては造作もない」
放心状態となったオウルと『滅敵鎹斬』の副作用で動けなくなったオウルの部下達を眺めたシーザーは悪魔のような笑みを浮かべその体からオーラを浮かび上がらせていた。




