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9 共に生きるエリオ

 聖女の卒業を前にして、王城で王と聖堂の関係者との会談が行われた。もちろん聖女ラウラも同席していた。

 卒業すれば、聖女は大聖堂に所属しながら、王城にも上がり、国の安寧を願い、定期的に王城の聖堂で祈りを捧げるようになる。そのための打ち合わせだった。

 その会談の後から、王の様子がおかしくなった。

 次の聖女の呼び出しは卒業後の月初めだったはずなのに、毎日聖女を呼び出すようになった。

 そして聖女が来ると、会議中であっても会議を抜けて聖女に会い、帰りには聖女に貢ぎ物を渡すようになった。

 はじめは小さな指環1つ。しかし1週間もすると、複数の貴金属になり、数は増える一方で、小箱に収まらない金貨を与えることもあった。

 仕事にも熱が入らず、諫める者の言葉を聞かず、母を蔑ろにする。

 その変化は目に見えて明らかで、聖女に会うたびにひどくなっていった。

 父王に代わり、急ぎの仕事に対応しながら、宰相や大聖堂の司祭とも連絡を取った。

 時期的に卒業式か卒業パーティで何かをするかもしれない、と思われた。

 怪し気な、聖女とは思えない力を振りまき、人々を惑わす証拠を押さえるため、当面の間何かあってもラウラに従う振りをしろ、と指示を受けた。


 ロレッタと共に卒業パーティに出席するというのに、もう何日もずっと会えず、久々にあった馬車の中ではロレッタは俯きがちで、目も合わせてくれない。

 泣きたい気持ちを、外の景色を見てごまかした。

 パーティにゲストとして来ている父王のことも心配だったが、ファーストダンスだけは譲れなかった。

 ロレッタも仲のよい友人との語らいもあるだろう。ダンスを終えるとそばを離れ、父の元に行った。だが、その手を離すべきではなかった。

 ラウラは父王を操り、ロレッタを聖女を蔑ろにする愚かな女だと糾弾させたのだ。

 すぐにこの騒ぎを止めたかった。しかし、会場にいた司祭とその部下達に目で合図を送られ、今は我慢をしろ、と止められた。

 腕に巻き付いてきた手から異様な力を感じた。またしても自分の心を乗っ取ろうとしているようだったが、ロレッタへの強い思いがそれを許さなかった。


 ロレッタがこの場を離れると、もう我慢ができなかった。

 誰が止めるのも聞かず、自分の身分など投げ出して、ロレッタを追いかけた。

 ロレッタを乗せるために横付けされていたのは大聖堂管轄の馬車で、そばには大聖堂の衛兵がいた。ラウラが用意したものだ。大聖堂の権力を私的に使っているのは明らかだった。

 ロレッタの腕を掴んだ衛兵を一喝した。

 衛兵になどロレッタに触れさせない。ロレッタは私が守る。

 エリオは司祭の名を出して衛兵にこの馬車を追うよう命じ、強引に馬車に同席すると、道すがら出てくるだろう魔物に備えた。

 あの時と同じなら、この道中で魔物が出てくる。勝てるかは判らない。

 だが、ロレッタは守り抜く。

 この馬車を追うよう指示をしてある。万が一自分が力尽きようと、後から来る衛兵達がロレッタを守ってくれる。それまで時間稼ぎができればいい。

「君はこの中にいるんだ。決してドアを開けてはいけない」

 ロレッタを残し、一人外へ出て、魔物に対峙した。

 だが、思った以上に魔物は強かった。三匹の魔物のうち、倒せたのは一匹だけ。二匹目と戦う中で剣を失った。それでも諦めることなく立ち向かおうとする自分にしがみついたロレッタの体から、まばゆい光が発せられた。



 この光を、覚えていた。

 かつての自分と、かつてのラウラの命が消えようとした時、ラウラの体から同じ光が広がった。あの光は天へとつながる光で、自分は死んだのだと思っていた。



 光が収まると、そこに魔物はいなかった。

 あの光は、魔物を追い払い、傷を癒やす、聖女の光。安らかな死へと(いざな)うものではなかったのだ。


 共に生きる。自分の願いはロレッタの願いと同じだった。

 ロレッタこそ、かつて愛した、聖女ラウラと同じ魂を持つ者。

 かつても今も、自分の愛した魂は同じだった。


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