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7 巻き戻ったエリオ

 エリオが自身の人生が二度目だと気がついたのは、婚約者となるボルドリーニ侯爵令嬢と顔合わせをする日の夜中だった。

 前の人生と同じように、父母や伯父である宰相、侍従に従い、真面目に勉学に励んでいた。そうすることが、生まれながらに王となることが決まっていた自分にとって当たり前なことだと信じて疑わなかった。

 しかし、かつての人生が記憶に蘇った時、自分は愛する者に想いを告げることさえできず、守るべき人を守る力さえない、愚鈍な男だったことを思い知らされた。


 かつての人生の婚約者、ロレッタは最悪な女だった。

 王である父とボルドリーニ侯爵家の思惑で結ばれた、愛のない婚約。王妃教育を受ける間、何度もヒステリックになり、侍女や侍従に八つ当たりし、教師を変えたのも一度や二度ではなかった。

 13歳になり、王立学園に入学すると、王妃教育のストレスを解消するかのように自由奔放に暮らしていた。

 取り巻きは女だけでなく、男も多かった。

 エリオのことは、夫になる、王になるだけのつまらない男だと吹聴していた。周りの男達に王妃になったら愛人にする、と公言していたとも聞く。

 そんな婚約者に愛情を抱くことなどできなかった。父王がこの婚約は絶対だというので、一緒にいる時はただ愛想笑いをし、その場を繕うしかなかった。


 そんなロレッタと同じクラスにいた、聖女候補で庶民のラウラ。

 当初は関わることもなく、そういう学生がいるくらいにしか思っていなかった。

 クラスに受け入れられず、いつも一人でいた。時々花壇の世話をし、育てた花はいつも優しく咲いていて、花自体は普通だったが、見ているだけで何故かほっとした。

 何でも、魔物が多く出現する地方にいながら、ラウラがいた街は被害が圧倒的に少なかったらしい。しかし、ラウラが離れてしばらくして、突然現れた魔物に両親を失ったと聞いた。

 聖堂が何度か奇蹟を求め、ラウラを連れ出したが、奇蹟が起こることはなかった。このままでは聖女候補から外れる見込みだと聞いていた。

 誰もが奇蹟を起こせる訳ではない。それを無理に引き出そうとしても無駄だろう。叶わない勝手な願いを押しつけられ、挫折し、卑下される。それでも何とか頑張ろうとする聖女候補を見ているうちに、自分の中にほのかな恋心が沸いているのに気がついた。

 しかし、それは禁断の恋だ。ずっと心に秘め、墓場まで持って行かなければいけない。


 婚約者であるロレッタは、エリオに愛情はなかったが、エリオが興味を向ける者には容赦がなかった。そしてラウラがそのターゲットとなってしまった。

 ロレッタが興味をなくすよう、穏便に対応するつもりだった。しかし、エリオがラウラと話すだけで気に入らず、時々花壇で会っていることを聞きつけると、浮気と断定し、数々の嫌がらせを重ね、ついには無理矢理卒業パーティに呼び出し、公衆の目の前でラウラを責め立て、貶めて、西の森へ追い払ったのだ。

 大勢の人の前で、ラウラをかばえなかった。目を伏せた自分に、ラウラが絶望したのが判った。


 エリオは自分に嘘をつき続けることができなかった。

 ロレッタの取り巻きに引きずられるように連れ去られるところを追いかけ、馬車に乗り込んだ。全てを捨てて共に西の地に行くつもりだった。

 だがその途中に現れた魔物。

 剣など手にしたことがなく、誰とも戦ったことのないエリオは、愛する人を守るための盾としてでさえ、不充分だった

 ラウラを覆うように抱きしめ、その身を守ろうとしたが、鋭い爪で背中を切り裂かれ、続いて胸を貫かれた。

 あまりにあっけなかった。

 死にゆく前に、ようやく伝えた、遅すぎた言葉。

「ラウラ…、愛して…」

 そして、気がつけば、7年前の自分に戻っていたのだ。


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