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3 王立学園のロレッタ

 13歳になると、お城での勉強だけでなく、王立学園に通うことも許された。

 学園で学ぶ勉強が簡単と思えるほどに知識が身についていることを実感できた。それくらい、王妃教育で受けた授業はスパルタで高度だった。

 かつての私は、聖女の力を引き出そうと、どんなに頑張ってもどうにもならないものに、あてもないままただひたすらもがき、結局何にもならなかった。それに比べれば、今は頑張った事はちゃんと身になり、自分の力になっている。報われなかったあの頃とは違う。


 違うのは、私だけじゃなかった。

 王城に通う間も時々お見かけしていたけれど、エリオ様は剣の稽古を熱心に受けていらっしゃり、その腕前は護衛の方を凌ぐほどになっていた。かつてのエリオ様は細身で剣を持つことはなく、武芸は護衛に任せていた。

 それでいてお勉強も隙がなく、かつても今も常に学年1位。今のエリオ様は、文武両道で、かつてのエリオ様以上に素敵で、本当にこんな方が私の婚約者でいてくださることがただただ嬉しかった。

 こんな風にエリオ様の隣で生きていけるなんて。私にとっては夢のようだった。かつてのように遠慮することなく傍にいられる。お話もできる。私からお声をかけても叱られない。転びそうになると、さっと手を伸ばして支えてくださり、時には腕を組んで歩くことだってある。このままこうしてエリオ様の隣でずっと過ごせると思うと嬉しくて、本当に幸せだった。


 王立学園には、聖女候補と言われた女の子も入学してきた。それはかつての私…。

 名前も同じラウラと名乗る聖女候補は、かつての私とはあまり似ていなかった。

 同じ街出身だけど、聖女候補になる前に住んでいた街が魔物に襲われ、両親を亡くしていた。両親の元でのんびりと過ごしていた私と違い、いろいろ苦労されたのだろう。

 そしてかつての私とは違い、入学前から既に聖女の力が表に現れることがあるという。

 私のように偽物ではない聖女候補を、学園の皆さんも一目置いていて、庶民でありながらも偏見なく、皆敬っていた。事実上、もはや聖女候補ではなく、聖女だ。

 お友達もすぐにできて、特に男性の方に親しい方が多いようだった。

 婚約者のいる方とも遠慮なく仲良くされ、庶民では当たり前のこと、と公言し、お相手の方が困り顔になっていることも多かった。

 とはいえ、聖女とつながりを持つ機会などそうあることではないので、誰もが関係を悪くすることを恐れ、注意することもなく、聖女様のやりたいように任せていた。


 エリオ様にも積極的に声をかけていて、

「私が聖女になれば、優先的に王妃になることもできますよね!」

 そう言われた時には、心が痛んだ。

 この国では王が聖女を娶ることはよくあることだった。

 私も聖女候補としてそのことを知っていて、もしかしたら聖女の力を身につけられたら、結婚まではできなくても、エリオ様に好きと言うくらいの権利はできるかもしれない、なんてはかない妄想を抱いたことがあった。でも、そんな俗っぽい思いしか持てないような私は、やはり聖女ではなかったのだ。

 あの時、自分が願っていたことを、目の前で実現されそうで、しかも、私は奪われる側。

 不安になって、泣きそうになった。

 だけど、エリオ様ははっきりと

「私には大事な婚約者がいますので」

と言ってくれたのだ。

 もう…。もう、惚れまくりです。やっぱり、エリオ様は素敵!

 かつてのエリオ様なら、きっとそんなことは言わず、優しい笑顔で好意だけを受け取るそぶりで、さらりとかわしていたかもしれない。それもまた素敵だと思っていたけれど、こうして婚約者の立場になると、はっきりと「大事」と言ってもらえて、相手にお断りをしていただけることがどれだけ心の力になるか。

 エリオ様にしがみつくように抱きついて、はしたないと気付き、慌てて離れようとした私を、エリオ様はゆっくりと両腕で包んでくださった。


 ラウラ様が祈ると、花壇の花が光り輝く。周りから聞いた噂通りだ。今日も花たちは生き生きしている。

 私は水や肥料をやるくらいしかできないけれど、お世話をした花が喜んでいると、私も嬉しい。

 こんな風に、聖女の力は目に映るものなのだ。

 やはりかつての私は、聖女もどきにすぎなかった。


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