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二日目:東神楽バスセンター

そこは雪がいよいよ深く、沈んでいく足を抜き出すことはむずかしい仕事で、汗がどっとふき出てきた。彼はとつぜん立ちどまり、もうこれ以上は歩みをつづけられなくなった。


『城』フランツ・カフカ作 原田義人訳

 東神楽町は、旭川市の南に隣接している。旭川空港があるのも実はこの東神楽町である。まあ浦安ディズニーランドみたいなもんだ。

 町の中心部への最寄り駅は西聖和駅だが、そこからのバス路線は存在しないという。どうも富良野線が、町内を通っていないらしい。旭川駅からバスで行くのが便利、と町のウェブサイトに記載されている。

 通勤通学の時間帯で、旭川駅ではしきりにバスが発着している。空はどんよりと厚い雲に覆われ、細かい雪が強風で吹雪になっている。しかし傘を刺している者は一人もいない。雪が上着についても、融けずにさらさらと落ちていく。それだけ寒いということか。

 事件の当事者たちは、現在高校生だ。制服姿の学生たちがバス停に長い列をつくっているが、流石に高校までは判別出来ない。北星中学校や北門中学校卒のキッズたちも、ここからバスを利用するのであろうか。

 東神楽バスセンター行きは利用者が少ないらしく、本数も少ない。帰りのバスを逃すと厄介なことになる。改めて車内を見回すと、皆しっかりスノーシューズのようなものを履いている。派手なスニーカーを履いているのは私だけだった。

 やがて市街地を抜けると、恐らく農地なのであろう、一面の銀世界になった。北海道に来たという感じがする。夏ならもっと楽しいに違いない。

 東神楽バスセンターには、広い待合室があった。バスが移動の中心なのであろう。図書館は九時半開館だと思い込んでいたのだが、改めて町役場のウェブサイトを確認すると、十時になっていた。ここで本を持ってくるのを忘れたことに気付いた。開館までまだ一時間以上あった。仕方なく、周囲で写真を撮ることにした。

 しかし、隣の義経公園も完全に雪で埋まっているし、歩道もアイスバーンと化している。横断歩道があるんだかないだかわからない状態で、道を渡るのも一苦労だ。足を雪で濡らすと、下手をすれば凍傷にだってなりかねない。

 そうこうするうちに十時前になり、図書館へ向かうことにした。

 東神楽町のホームページには、何故か住所もアクセスマップも載っていない。グーグルマップを超拡大して、やっと表示が出てくる。

 町役場の裏手に回り込むと、何やら工事中だった。歩道の雪かきがされていない。完全に雪に行く手を阻まれている。まるでカフカの『城』にでも迷い込んだような気分だった。仕方なく車道に出て、入り口があると思しき方向に向かった。帰りに判明したことだが、道路の逆方向はしっかり雪かきがされていた。道を間違えていたらしい。


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