何故、水場なのか
もし爽彩さんが自ら永山中央公園に来たのだとしたら、何故その場所を選んだのであろうか。
先にも書いたが、自殺企図といっても、明確な決意や意志がない場合も多い。
境界性PDなどで自殺を試みる場合には、死ねないとわかっていても、リストカットしたり薬を一気飲みしたりする。
爽彩さんの場合も、遺書めいたラインを送ってはいるが、そこまで具体的な方法は考えていなかったのではあるまいか。
母親が出かけた後、友人にラインを送り、行き先を決めずに家を出た。
漠然と自殺について考えながら歩いていると、永山中央公園に辿り着いた。
気温は氷点下付近、薄着、歩行による疲労、薬の作用などの諸条件が重なり、低体温症を発症した。思考力は著しく低下しているだろう。
公園には来たものの、ここでどうやって自殺すればいいのか?
確か水場があったはずだ。以前にも川に飛び込んでいる。そこなら何とかなるのではないだろうか。
60センチの積雪で、腰まで埋まりながら水場を目指した。
しかし、実際に水場を目の当たりにすると、雪で埋まっており水はなかった。
そう言えば、冬季は水道が止められているのだった。
家を出た時点では、恐らく気分も高揚していたことであろう。
しかし、この時点で気力が尽きた。低体温症で急速に体力を消耗している。60センチの雪で身動きが取れなくなった。
疲労が限界に達している。急に眠くなってきた。元々死ぬつもりだった。もうどうでもいい。
雪を掻き分けて、その場に横向きに倒れ込んだ。
意識消失により倒れ込む可能性もあるが、その場合は、雪にそこまで深く埋まるのか疑問が残る。この点は雪に詳しくないのでよくわからない。
当初は、低体温症によるパニックまたは錯乱状態に陥って、自ら雪に埋もれたという状況も考えた。
しかし、そもそもパニックとか錯乱というのは、生き延びたいと願う者が、死の恐怖に直面した時に陥るものであって、それ程明確なものではなかったとしても、元々死を望んでいた被害者の場合には、そのような状態にはならなかったのではないかと思える。
今回の考察では、元々低体温症によるパニックや錯乱の可能性から始まった訳だが、それらを否定して、結局振出しに戻るという数奇な経過を辿ったことになる。
遺体遺棄の可能性も考えた。
しかし、YouTubeで映像を見る限り、60センチの積雪では普通に歩くのも困難に思える。
歩道と車道の間にも植木があり、相当な距離がある。そこには、雪が手つかずで積もるようだ。
車両から遺体を運び出し、歩道を越えて公園内に遺棄するとなると、不可能ではないにせよ、至難の業であろう。
交差点付近の積雪の切れ目からカートをゴトゴト引いて、歩道を歩いてくる。カートごと雪上を押して水場付近で遺体を遺棄する、といったことも不可能ではないだろうが、現実として想像はしにくい。
被害者の失踪後には、捜索が行われている。
しかし、60センチの積雪では、公園内を隈なく歩き回るという訳にもいかない。
誰かが公園に来たとしても、発見するのは難しいのではないだろうか。
そもそも、永山中央公園は、永山南中学校の学区からは外れている。
捜索隊は中学校の関係者が中心だと思われるので、学区外だと、捜索自体が行われていない可能性もある。
爽彩さんが亡くなるまでの経緯は、未だ謎のままである。
解明する方法はあるのだろうか。
先にも書いたように、スマホのログや位置情報の詳細な解析は必要であろう。せめて家を出て、どちらの方向に向かったのかだけでもわからないものなのか。
本来は、分単位でタイムテーブルを作成するべきであろう。
爽彩さんはブーツを履いていたという。60センチの積雪だと、恐らくブーツ内にも雪が入り込んでいるであろう。ブーツ内の水の痕跡の微細な分析というのは可能ではないのか。普段から深雪の中を歩き回るとも思えないので、そうした痕跡があれば、自分で公園内に侵入した可能性が高いのではないだろうか。
発見時の遺体の状況も、手掛かりにはなるであろう。
偽装の可能性もなくはないが、ポーズ、手の位置、所持品などの状態によって、遺棄されたのか、自分から倒れたのか、ある程度は推測可能であろう。
掲示板では、衛星画像を購入出来るという話もある。
現在判明しているのは、遺体が永山中央公園で発見されたというところまでで、そこに至る経緯が不明のままである。自殺にせよ、殺人にせよ、裏付け捜査が必要となるであろう。
8月中に、いじめに関する最終報告が出されるという。
自殺事案の場合、法的にどのような扱いになっているのかよくわからないのだが、警察はそのタイミングで再捜査なり、会見などを行うべきではないだろうか。