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世話係の二人と、二人のオタク仲間 〜箏峰柚葉〜

雪月先生の授業は面白かった。年が近いせいか、質問もしやすかったし、他の先生より生徒に寄り添っている気がした。

しかし、一つの欠点を挙げると、たまにイラッとすることを言われることくらいだ。

例えば、課題が多いと不平を言うと、「女子三人対先生で腕相撲をして、勝ったら半分にしてあげるよ」と言うので、腕相撲をしたところ、びくともしなかったのである。それでいて、生徒の前でニンマリ笑っているのだからイラッとするのも無理はないだろう。

そんな先生だが、いや、だからこそなのだろうか。他クラスからも人気が高いのである。


ある日の終礼後のこと。掃除を終えた私は雪月先生から呼び出しをくらって、職員室に行くことになった。


水影(みかげ)君と一緒に、教室のチョークの補充と、カレンダーをめくっておいてくれるかい?後、教卓の引き出しの中にある落とし物を、学校の落とし物預かり室にいる人に渡しておいて欲しいのと、黒板を雑巾で乾拭きしといて欲しい。頼めるかな?というより、係の仕事だから、やってもらわなくちゃ困るんだけどね」


「はぁ…雪月先生って人使い荒いですよね……」


「じゃあ、宜しく頼んだよ」


先生は私の話を無視して、強引に事を進めた。これだから()()()()()()なんてやりたくなかったのになぁ。はぁ……大きなため息とともに、面倒だなと思う気持ちがグッと増えた。


「水影君、先生からの言伝、私と二人で、教室のチョークの補充と、カレンダーめくり、教卓の中の落とし物を預かり室まで持って行くのと、黒板の乾拭きをしてくれって雪月先生が」


「マジ?」


「うん」


二人で落胆する。


「はぁ……なんで寄りにもよって今日なんだよ……!」


何か用事があったらしく、地団駄を踏んでいた。

かくゆう私も、帰りに少し寄り道する予定だった。


「何か用事とかあった?」


「うん。まぁ、下らない用事だけど」


「何の用事?」


「いや、いいよ」


頑なに言おうとはしないのでこれ以上は聞くまいと、話を切り上げる。


「とにかく、早く帰りたいから分担して進めようぜ」


「じゃあ私、カレンダーとチョークの補充と黒板の乾拭きしとくから」


「いいのかよ、そんなに任せちまって」


「チョークがある物品室はすぐ近くだし、そっちの落とし物方は結構あって時間かかると思うから」


「悪りぃ。ありがとな。じゃ、任せたわ」


「うん」


水影くんは思ったより優しいし、この仕事も、案外楽しかったりする。先生のイラっとする一言が無ければだけどね。

さて、今日はアニメイトに新作のラノベ(限定特典付き)を買いに行かなきゃ。 

二人とも予定があったからか、二十分とたたずに終わった。

係の仕事が終わり、雪月先生に報告をしてから「お疲れ様ー」というと、水影君はダッシュでその場から立ち去っていってしまった。。やっぱりなにか大事な用事があったのだろうか。気を使わせてちゃったかな。


その後、私は池袋のアニメイトに行った。

やっぱ本店に限るよね〜アニメイトは。


新作を買い終えて、店内をうろうろしていると、見覚えのある人影があった。

初めは勘違いかと思ったが、やはりそうだ。その見覚えのある人物は、間違いなく、水影君だった。声を掛けようと思ったが、今日はもう遅いし、明日学校でじっくり話すことに決めた。


〜そして翌日の朝〜


「水影君、昨日アニメイトに居たでしょ」


確信をつくように訪ねる。

ラノベやグッズを両手に持った彼を見かけたのは偶然だった。


「な、何で知ってんの!?」


「私も昨日、新作のラノベを買いに行ったから」


「そうだったんだ……俺は昨日、「小林さんとメイドとドラゴン」のタペストリーが出るって聞いてて、ルノアさんと、エトマのやつが欲しかったから……」


そこまで話してから、急に顔が赤くなる。

大分恥ずかしそうにしている水影君を見て、普段見せない一面に思わず笑ってしまった。


「箏峰さんは、誰かと一緒に行ったりするの?」


「うん。私も中学からのオタク仲間がいるから」


「誰?」


桜海雪(おうみゆき)ちゃん」


「は!?あの桜海が!!?」


一瞬、クラスの皆が、ドキッとしてこちらを見つめてきたので、私は「声が大きいよ」と諭してあげた。


「まぁ、普段の振舞いからしたら、そういうの嫌いそうな感じなんだけど、結構すごいよ?雪ちゃん」


普段の雪ちゃんは、陸上部でスポーツ万能で可愛いくて有名な女の子だから、周りから見たらオタクとは思えないだろう。


「まってくれ、頭の回転が追いつかない……あ?……ん、ん?………んん?」


「あっはっはっはっ。このことは他の人に言わないでねー!」


すると、ようやく事を飲み込んだ水影君は、口を開いた。


「俺にも、一人紹介したいやつがいるんだけど……」


「じゃあ、そっちのオタク仲間の話もしてよ」


「ああ。渚〜!!」


呼ばれた男は教室の奥からのろのろとこちらへやって来る。


「何だ。急に呼びつけて。恋の相談か?それともグッズが買えなかったことへの腹いせか?」


「ちげーよ。つーか、グッズならしっかり買えたわ!」


面白い二人。オタクには、一人にこだわっている人や一人が気楽でいい人、人付き合いがめんどくさいという人も多いけど、これなら仲良くなれそう。良かった。


「成るほど、箏峰さんもオタクでその箏峰さんにもオタク仲間がいるからお互い仲良くしようと、そういう話?」


「ああ」


「じゃ、改めまして。天月渚です。宜しく、箏峰さん」


「いえ、こちらこそ」


初手で握手か。結構グイグイ来る子だな。

そう思いながら握手を交わした。雪ちゃん以来のオタク仲間に内心ワクワクしていた。

そうこう話している間に、雪ちゃんが教室の扉を開ける。


「あっ、雪ちゃーん。ちょっとこっち来てー!」


「何? 柚葉〜」


私は、「いいから」と半ば強引に雪ちゃんを連れてきた。


「この二人は、今朝知った、私のオタク仲間。雪ちゃんも紹介しとこうと思って。」


「驚いたでしょ」


雪ちゃんがドヤ顔をして二人に歩み寄る。

水影君達二人はどちらもオタクと言われればしっくり来る感じだから、こちら側は驚くこともない。


「ええ、正直ビビりましたよ。水影なんて、さっき叫んでましたし」


天月君が割ってはいる。


「そりゃ叫ぶだろ〜!」


本当仲がいいな、この二人。ま、私と雪も負けないけどね〜!心の中で二人に張り合った。


「まぁ、何はともあれ、お互い宜しくね!」


これからはもっと楽しくなりそう!!今年度に入って間もないけど、一番嬉しかったなぁ〜

すると、唐突に天月君が、聞いてきた。


「そうだ、好きなアニメとかあります?」


最初に答えたのは雪ちゃんだ。


「多すぎて絞れないけど、バトル系なら盾勇(たてゆう)が好きかな。知らない?『盾と勇者の成り上がり』」


「もちろん知ってますよ!でも、俺はバトル系なら、「終末のセラフ」とか、「駿城(はやじろ)のカバネリ」とかが好きだなぁ」


「水影、お前はアニメのことになると本当目を輝かせてるよな」


四人でそんな話を数十分も話していた。


「そろそろ、朝礼始まるから、続きはまた後でね」




はぁ〜〜、楽しい!

今日の帰り、皆誘ってアニメイトに行こうかな…






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