第2話 神との会話1
初老の男性と別れ、志穂と家に戻ると、リビングには見知らぬ少年がいた。
「やあやあやあ!僕の名前はフォルテ!異世界のウリエーラという世界で創造神やってるよ!よろしくね!」
「えーっと?あれ?鍵は?あ、いや、とりあえず金光悟です」
「 秋菜志穂です」
「知ってる知ってる知ってるよー!鍵なんて、僕からしたらあってないような物だからね!人の家や女風呂なんて入りたい放題さー!はっはっはー!」
テンション高いなこの子。いや、見た目は少年だろうが俺より歳上なんだろうけども。外見と言動がマッチしすぎてる。
「失礼な!これでも年齢は万を超えてるんだからね!神としては、まだまだ若造だけれども!やっと話を聞いてくれる人がいてテンションが上がってるだけさー!」
でたよ。異世界あるあるの心読める系神様。てゆーか、万超えて若造って神の世界すげーな。
心読まれてるなら取り繕っても仕方ないし、自然体でいこう。
「とりあえず、何か飲みます?大体の物ならありますけど、神様は食べたり飲んだりしない系ですか?」
「食べるし飲むよ!ショートケーキとリンゴジュースお願いしたいな!」
いや、子供かて。まぁ、俺も食べよう。
「志穂、人数分お願いしていい?」
「はいはーい」
「では、フォルテ様。少々お待ちください」
「いいよいいよー!何年でも待つからねー!」
年って。待つ時間のスケールが違う。
それから待つ事数分。
「お待たせしましたー」
志穂が人数分のショートケーキとリンゴジュースをお盆に乗せてリビングのソファーにやってきた。
「わぁ!ありがとう!いただきまーす!」
「志穂、ありがとう」
「どういたしまして」
それから三人ショートケーキを食べ、落ち着いた頃。
フォルテ様が今回の説明を始める。
「じゃあ、何から話そうか。とりあえずなんで金光君を異世界に誘ったかだね!それは簡単に言うとお金を沢山持ってるからなんだ!」
「お金ですか?」
神にしては俗物的な話だな。
「そ!お金!もしこれから話を聞いて金光君が異世界に行くってなったらお金いらないよね?一応、異世界勧誘する時に身辺調査とかするんだ。君がもしいなくなっても財産は秋菜君に渡るだろう?秋菜君も行くってなったら君の今の財産無駄になるよね?なら、異世界に行くなら僕が貰うねって事だよ!」
「えーっと?つまりはフォルテ様はお金が欲しいから俺達を異世界に誘ってるって事ですか?」
「いや、そうなんだけど、そうじゃないんだ。まず、大前提だね!世界を渡って異世界に行く事。これはとてもダメな事なんだ」
フォルテ様が顔の前で手を交差してバツ印を作っている。
子供かて。
いや、それよりもダメな事なら今のこの話アウトじゃないか?神が自ら、ダメ事に誘ってますけど?地球に神様がいるのかは知らないが許容してるのか?
「金光君の考えてる事はもっともだね!あ、地球の創造神には了解を取ってるよ!本人と会話して納得するならって条件付きだけど!」
「なる、ほど?じゃあフォルテ様の世界に行かなければならない理由があるとかですか?」
「そうだねー。まぁ絶対に!って訳じゃないけどね。そこも説明しとこうか」
「お願いします」
「えっとねー。今から大体300年後ぐらいだね、僕の世界の一つの国がよくある異世界召喚をしようとするんだよ。魔王とかが出てくる訳じゃなく、戦争の道具としてね」
フォルテ様がやれやれとアメリカンな感じで首を振る。確かに創作の話ではよくある話だな。やられた方はたまったもんじゃないが。
「それでね、僕がそれを止めて異世界召喚は失敗するんだけど、次元に穴が空いちゃうんだ。これはよくある気付いたら異世界に来てましたパターンだね」
「それは300年後の話なんですよね?今分かってるなら、異世界召喚しようとしてるの自体をやめさせればよくないですか?」
「そうなんだよ。僕もそう思って色々シュミレートしてみたんだけど、こっちで阻止したら、あっちで召喚。あっちを阻止したら、そっちで召喚ってキリがないんだ。だから一度召喚させて失敗してもらって痛い目にあえばやめるかなーって思って」
なるほど。でも失敗させると次元に穴が空くと。それで、結局俺達が異世界に行く意味は?
「そうだね。長々と話したけど、僕の世界ね。まあ、よくある魔法があって地球より文明は遅れてる、いわゆる中世ってやつだ。もちろん、スキルなんかもあってゲームそのままって感じなんだけど、スキルがね、ランダム付与なんだ」
「ランダム付与?それはどうゆう?」
「えーっと、僕の世界はね、スキルを10個までしか持てないんだ。魔法適性とは別でね。これは人間も獣人もエルフも魔物もみんな一緒。それが生まれた時にランダムで付与される」
「それは後天的に努力してもスキルを覚えれないって事ですか?例えば剣術スキルがなくて、ひたすら剣術を練習しても意味はないと?」
「そうだね。もちろんスキルは無くても剣術は使えるよ。スキルのアシストがないだけでね。勿論、例外はあるよ!生まれた時にスキルが10個未満だった場合だね!これは練習やそれまでの行動によってスキルを覚えるよ。勝手に覚えちゃうから小さいの行動かなんかで結局は…なんだけど」
ふむう?あまり行きたく無くなってきたぞ。ランダムってもし意味があるのか分からないのばっかなら生きていける気がしない。
「フォルテ様の話を聞く限りなかなか厳しそうなんですけど…?」
ここまで黙っていた志穂が俺が思っている事をそのまま代弁する様に言ってくれた。
「そうだよね!そ!こ!で!これさ!」
フォルテ様がどこからか辞書みたいに分厚い本を俺達に差し出してきた。
表紙には【フォルテ謹製ウリエーラ全スキル図鑑】と書かれた物だった。