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第三十八話 豊穣祭1日目後編

「屋台がすごくいっぱいあるね。何にしようか悩んじゃう……」



 アスレチックから数分歩いて大通りに通じる道に出ると、隙間なく並んでいる屋台に、私とメロちゃんとテオくんは、目移りするようにキョロキョロとしている。

 食べ物だけ見ようと思っていても、他の屋台にも目が行ってしまう。

 アスレチックの反対側の方では、大きな歓声が聞こえてくるので、何か競技をやっているのかもしれない。見物人と時間が被ると、私は絶対にはぐれる自信があるので、余計に何を選べばいいんだろうと焦ってしまう。


 周りを見渡してみると、持ちあるける串焼きや、座って食べるようなスープが多いように見える。

 もちろん、ステーキや定食のような物を売ってる人達もいるけど、そういうお店は外観が他とは違っていて、しっかりとした店構えをしていて、客層も裕福そうな人達が多かった。



「メロ、やっぱりマーモットの串焼きがいいなぁ。一番好きだもん」

「ぼくは、シープとブルの串焼き!」

「俺は何でも食う」

「じゃあ、あそこに座って食べようか」



 所々に設けられた飲食用スペースには、テーブルや椅子が並べられていて、座ってご飯を食べている人達が何人か居るのが見える。

 まだ早い時間なので、私達と同じように混むのを回避してるのかな?

 席はまだあるけれど、人数が多いので早めに席を確保した方が良さそうだ。



「そうだな。なら、そこの串焼きを買っていって座ろうか」

「わーい!」

「こら、走んな」



 串焼きの屋台に走り出そうとしたテオくんを、グレンはしっかりと脇に抱えて歩き出す。

 でも、いい匂いがするから早く食べたい気持ちも分かるなぁ……。

 皆で串焼きの屋台の前まで行くと、焼かれた肉から滴る脂が炭の上に落ちて、じゅうっと音がして煙があがる。その光景に、思わずお腹が鳴ってしまった。


 恥ずかしい!

 思わず顔を伏せると、バージルが静かに肩を揺らしているのに気付く。

 あ、これ気付いてるけど、静かに爆笑してるんだ。よりによってバージルに気付かれるなんて。



「何か、すごいお腹の音がしたね?」

「悪いな、俺だ」

「バージル兄ちゃんか~」

「あ……」



 皆にも聞こえていたのか、テオくんが声を上げると、何でもないような顔をしながらバージルが自分だと名乗り出た。

 庇ってくれてるんだ……。

 そう気付いて、お尻がムズムズするような気恥ずかしさを感じる。

 伏せていた視線をそっとバージルに向けると、バージルが優しい顔で私を見ていて、その優しい微笑みに私は心臓を拳で殴られたような、激しい痛みを感じてしまう。

 ときめき過ぎて心臓が痛い。私このまま死ぬんじゃないんだろうか。

 鼓膜まで響くような鼓動を誤魔化そうと、1人で挙動不審になっていると、屋台のおじちゃんに声を掛けられた。



「いらっしゃい! 全部直火焼きだから、美味しいよ!」

「グレンも俺も結構食べるし、全部5本ずつ買うか」

「おお、兄ちゃん太っ腹だね! なら端数はオマケして銀貨10枚でいいよ!」



 おじちゃんはそう言うと、どんどん串焼きを妬き始める。

 全部5本ずつ買うと、20種類くらいあるから結構な量になりそうだなぁ。食べ切れなかったらバージルとグレンに頑張ってもらおう。

 焼き上がった串焼きは、どんどんお皿に盛られていく。紙皿やパックなんて当然無いので、大きなお皿がおじちゃんの後ろに山積みになっていた。

 1皿に20本ずつ盛られた串焼きを、グレンが受け取って近くのテーブルに運んでくれる。 


 最後の串焼きと引き換えるように、アイテムボックスから銀貨10枚を取り出して支払いを済ませると、皆でテーブルまで移動した。

 皆もお腹がすいていたのか、おしぼりで手を拭くとすぐに串焼きに手を伸ばす。

 見た感じ、香草が入ったタレがついてるのかな? そう思いながら、私も串焼きを頬張る。

 オリーブオイルのような香りに、レモン、香草、それと少しの甘味を感じた。塩は高級品だから入ってないみたいだけど、洋風焼き鳥といった味付けで、とても美味しい。

 思わず顔を綻ばせていると、皆も美味しかったのか笑みを浮かべている。



「美味しいね! マーモット柔らかい!」

「うんめぇ」

「確かに美味いな、何個でも食えそうだ」

「お姉ちゃん、これも美味しいよ!」



 テオくんが、自分の気に入ったものをメロディちゃんに薦めているのを見て、あまりの可愛さにニヤニヤしてしまった。

 自分が美味しいと思った物を、一番最初に薦める。凄く仲良しだなぁ、可愛い。

 グレンとバージルも同じ事を考えたのか、メロディちゃんとテオくんを見て目を細めていた。



「この後、どうしよう? またアスレチックに行く?」

「屋台を見て回ってもいいし、アスレチックでもいいぞ」

「おー、あの滑り台面白かったしな」

「ねー、面白かった! でも、メロ屋台も見てみたいな」

「明日、本選を見に行くなら、今日の内に屋台を見て回ろうか」



 屋台を見て回るとの事で話が纏まると、皆また串焼きを口に運ぶ。どうして人は、美味しい物を食べると無言になってしまうのか……。

 結局、途中で私とメロディちゃんとテオくんは、串焼きを全種類制覇出来ず、バージルとグレンが残りを全部平らげてくれた。確かに2人共筋肉質だけど、どこにそれだけ入るんだろう……。

 疑問に思いながら2人を眺めていると、目が合ったグレンが不思議そうに首を傾げる。



「あん? どした?」

「ううん、どこにそれだけ入るのかなって思って」

「まだ食えんぞ」

「まだいけるんだ……」



 私、お肉ばっかりで胃もたれしそうなのに、グレンもバージルも全然平気そうだもんね。胃の作りが違うんだろうか。もしくは、異世界だから私とは細胞から違うのかもしれない。


 そんな事をぼんやりと考えていると、食べ終わったお皿をグレンがお店に返しに行ってくれた。

 よく食べるけど、一番よく動いてるなぁ。太らない秘訣はそこにあるのかもしれない。



「よし、じゃあ屋台を見ながらぶらぶらするか」

「おう」

「そうだね、行こうか」



 さっきと同じように、メロディちゃんとテオくんはグレンと手を繋ぐ。

 メロディちゃんは私とバージルを見て、嬉しそうに何度も頷くと、グレンと笑い合っていた。

 一体なんだろう……。

 でも、特に害は無いので気にする事なく、自然にバージルと手を繋いだ。

 美味しい物を食べて、好きな人と手を繋いで、まるでデートみたい。

 そんな事を考えて、思わず頭を振って妄想を打ち消した。



「じゃあ、一回入り口の方まで戻りながら店を見て行くか」

「はーい!」

「欲しい物があったら、遠慮しないで言ってね」

「おう」



 サイバーモールで買うと、ここだと目立つ物も多いしね……。

 靴とか、服とか、デザインから製法、素材も違うし。家に居る時はいいけど、外に行く時用に必要な分だけあってもいいかもしれない。


 一応、ヘレトピアにもサイズの規格はあるし、ジェラルドにも何着か買って行こうかな。

 甲冑や鎧はオートクチュールになるらしいけど、革鎧やローブなんかは規格サイズで売っているらしい。


 色々見たい物があるなぁと思いながら、1軒ずつ屋台を覗いて行く。

 最初に立ち寄ったのは、革製品を扱う屋台だった。柔らかそうな革靴から、しっかりとした造りの鞄、革のバングルやチョーカーなどの大きくない物が中心に置かれていた。



「いらっしゃい! うちの革は品質がいいから見てってくれ!」

「確かに、しっかりとした革だな」

「しっかりしてない革もあるの?」

「ああ、鞣しがしっかりされてない粗悪品も結構出回ってる。ここの革は鞣し、加工がしっかりしてるな」

「兄さん冒険者か? 流石、見る目があるな。うちの本店はヴィフタルにあるし、王に献上もしてるんだよ」



 バージルと、商品を売ってるエルフの……お兄さん……? の、説明を聞きながら、私は何度も頷く。

 いい革とか悪い革とか、絶対見分けが付かないから1人で買うのは止めよう。

 お兄さんが言うには、祭りで気が大きくなると、普段革製品を買わない人でも買ってくれる事があるらしくて、わざわざ10日かけてヴィフタルからプレミリューまで商品を運んだらしい。

 商人って、大変そうだなぁ……。

 そう思いながら商品を眺めていると、子供用の可愛らしいショートブーツを見付けた。

 触ってみると硬さもなくて、履き心地も良さそうだ。



「お、姉さんお目が高いね! それは新作のブルのブーツだ! 2つ買ってくれるなら銀貨30枚にまけとくよ」

「メロちゃん、テオくん、これ履けるかな?」

「え、靴買ってくれるの!?」

「高いよ!?」

「うん、いいよ。履けるなら買っていこう?」



 売られた時に履いていた靴を、今日も履いている2人に視線を向ける。

 普段は子供用のスニーカーやサンダルを履いて過ごしているけど、今回は街に行くとの事で、汚れてしまっているブーツを履いていた。擦り切れてしまいそうな部分もあるし、新しい物を用意してあげたい。

 品質もいいみたいだし、どうせなら長持ちするものを買った方がいいよね。



「なら、ここに座ってサイズを合わせるといいよ。少しなら調整できるからね」

「調整までしてくれるのか」

「ああ、うちの商品を好きになって欲しいからね」



 お兄さんはそう言うと、屋台の横に置いてある椅子を指差す。

 最初にメロディちゃんがサイズを合わせて、次にテオくんがサイズを合わせた。

 大きくなるのを見越して、少し大きめのサイズで合わせて貰ったけど、調整できるってスキルだったんだなと、少しだけ感心してしまう。

 靴を履かせて、スキルを使うと、サイズを多少合わせる事が出来るらしい。魔法って便利だね。



「じゃあ、ブーツ2つで銀貨30枚だ。ありがとうね!」

「はい」

「チエ姉ちゃん、ありがとう! 大事にするね」

「ぼくも大事にする! チエ姉ちゃん、ありがとう!」



 銀貨30枚をお兄さんに手渡して、別れを告げた。

 今まで履いてた靴は、メロディちゃんがテオくんの分も含めて、自分のアイテムボックスにしまっている。

 お兄さんが、処分しようか? って、聞いた時、慌てて首を振ってたし、きっとお父さんやお母さんの思い出があるものなのかもしれない。


 5人でのんびり屋台を見て回っていると、昼食時になったのか急に人の数が増えだした。

 たくさんの人が道を歩くせいで、避けるスペースもあまりなく、少し歩きにくい。

 気を付けないと本当にはぐれてしまいそうだなと感じて、バージルの手を握り直したところで、後ろから急に大きな声が聞こえて来た。

 何事だろうと振り返ろうとしたところ、バージルに手を引かれる感覚と共に、背中に強い衝撃を感じる。



「いたっ」

「チエ!!」



 ぶつかったのが人だと気付いたのは、バージルと私が繋いでいた手の上に倒れ込んで来た時で、その衝撃で繋いでいた手が離れてしまった。

 疑問に思う暇もなく、ぶつかった人を追いかけるように人がなだれ込んで来て、バージルとの距離が離れて行ってしまう。



「てめぇ! 誰に向かって舐めた真似してんのか分かってんのか!?」

「うるせぇ! てめぇこそ何様のつもりだ!」

「バージル!」



 バージルを呼ぶ声は、怒鳴り合いで掻き消されてしまって届かない。

 間に入った人を避けるように、他の人達が隙間を開ける為、余計に距離が離れていく。

 人の騒音のせいで、バージルの声も聞こえないし、周りを囲まれてしまっている為、姿も確認できない。

 どうしよう! 早く合流しないと!

 そう焦るけれど、人の波に飲まれて身動きが取れなくなってしまい、どんどん押されてしまう。自分より背の高い人ばかりで、どっちに向かって押されているのかすら分からない。


 どれだけ押されたのか分からない。不安で仕方ない。合流できるだろうか。

 1時間くらい人に揉まれた気がする。そんな訳ないけど。


 突き飛ばされるように人の波から抜け出せた時には、バージルもグレンも見当たらず、自分がどこに居るのかすら分からなくなっていた。



「ここ、何処……」



 人気のない薄暗い狭い通路。

 建物と建物の間にひっそりとある道に、あれ、これ裏路地ってやつでは? と、気付いて、一瞬で背中が冷える。

 バージルが絶対行くなって言ってた所に来てしまったと、慌てて振り向くけれど、人の波は収まらずに大通りに戻れそうもなかった。

 だけど、ここに居るのも怖くて、何とか大通りに戻ろうと四苦八苦していると、ズボンを何かに引っ張られて思わず肩が跳ねる。


 お化けだったらどうしよう。

 恐る恐る振り返ると、後ろには何もいなくて、余計に肝が冷えていく。

 泣きそうになりながら大通りに戻ろうとすると、更にもう一度ズボンを引っ張られる。



「誰か……!」

「キュウ」

「え?」



 何かの鳴き声がして、ズボンの裾まで視線を下げると、頭に包帯が巻いてあるカーバンクルが居た。

 お化けじゃ、無い……。

 そのことに安心して、腰が抜けてその場に座り込んでしまう。



「キュウ?」

「ごめんね、お化けだと思って……」



 不思議そうに首を傾げるカーバンクルに、小さな声で謝る。

 この歳になって、お化けに怯えて腰を抜かすなんて。しかも、人攫いって言われてたのに、何でお化けだと思ったんだろう。


 自分の失態に見悶えていると、カーバンクルの後ろから大きな影が伸びて来た。

 今度こそ、人攫いかと思って視線を上げると、黒のロングコートに身を包んだ、1人の男性と目が合う。

 革の品質は分からないけど、見ただけで高級そうだと私にも分かるような服を着ているその人は、私の傍まで近付くと、片膝をついて視線を合わせてきた。


 動く度に、サラリと髪が揺れて、思わずそれに見惚れる。金色の美しい髪、色素の薄い肌、ペリドットような瞳。思わず人形かと思うくらいに美しい造形。

 あまりの美しさに、この人は本当に人間だろうかと、ぽかんと口を開けて眺めている私に、その人は話しかけて来た。



「お前がコレの怪我の手当をしたのか?」

「え? あ、カーバンクルの飼い主、さん?」

「ああ、そうだ。礼を言う。ありがとう」

「え、あ、どういたしまして……」



 カーバンクルは嬉しそうにその人の足にすり寄っている。

 良かった、美しいお化けでも無さそうだ……。



「あ、でも襲われてたのを助けたのは私じゃないです……。手当をしただけで」

「構わない。俺の大切な相棒だ」



 声まで美しいってどういう事だろう。声だけで背筋が震える。この人天使か何かでは?

 そう思ってしまうくらい、カーバンクルと男性が並んでいる姿は絵になる。

 すっごい無表情だけど。



「何か礼がしたいんだが」

「いや! そんな、手当だけですし、気にしないで下さい」

「見た事も無いような、伸縮性の高い布を巻いてくれていただろ?」



 男性にそう言われて、思わず肩が跳ねた。

 何も考えずに包帯を買って使ってしまったけど、伸縮性の高い地球の包帯なんて、この世界に無いに決まってる。どうしよう、なんて答えよう。

 俯いて言い訳を考えていると、男性が動く気配がして、優しく髪をかきあげられる。

 スキルの事がバレたんじゃないか。どうしよう。

 そう思いながら不安気に視線を上げると、さっきまでの無表情は困ったような苦笑いになっていた。



「答えたくないなら言わなくてもいい。ただ礼がしたいだけで、困らせたり、言い触らしたりしたい訳では無い」

「ご、ごめんなさい……」

「謝らなくていい。助けられたのは俺の方だ」



 そう言うと、男性は私の手を取って、ゆっくりと立たせてくれる。

 あまりの美しさに、私は白昼夢でも見ているのかと思ったけれど、触れた手に感じる温もりは生きてる人の物だった。



「俺はノエル。何か1つだけ、何でも願いを聞こう」

「あ、私は、千会、です……」

「そうか。チエ、またカーバンクルを使いとして寄越そう。何か考えておいてくれ」

「え、あの、でも……」

「チエ! どこだ!!」

「あ……!」



 ノエルさんと言うらしい男性にそう言われて困惑していると、遠くからバージルが私を呼ぶ声が聞こえてきて、後ろを振り返る。

 その一瞬の間に、私の手を離したノエルさんは、言いたい事を言って満足したのか、そのままカーバンクルと一緒に裏路地へ姿を消してしまう。


 あまりの引きの良さに、思わず混乱してしまうけど、気を取り直して私も大きな声を出した。



「バージル!!」

「チエ!?」



 人の間を縫うように、バージルが裏路地に向かって走ってくる。

 バージルの姿に安心して、また腰が抜けそうになったけど、必死に耐えた。しゃがみ込んだりしたらきっと心配をかけてしまう。

 そう思っていたけれど、走ってきた勢いのままバージルに抱きしめられて、想像もしていなかった事にとうとう腰が砕けてしまった。



「なん、ちょ……え?」

「チエ! 良かった……!」



 立っている事が出来ずずるずると座り込んでいく私を支えながら、バージルも膝をついて私を抱き締める。バージルは大きく肩で息をしていて、きっと必死に探してくれていたんだと思うと、胸が苦しくなった。

 気が張り詰めていたのか、ぽろっと涙が零れて行く。



「ごめんなさい……!」

「違う、チエのせいじゃない。俺が悪いんだ。気付くのが遅くなってすまない」

「バージル、探してくれてありがとう」



 恐る恐る、バージルの背中に手を回して、バージルのマントを握りしめると、更にきつく抱きしめ返される。少し苦しいくらいだけど、嫌な気持ちは全然しなかった。

 安心とときめきが一気に襲ってきて、何で泣いてるのか自分でもよく分からないけど、次から次へと涙が零れて行く。

 バージルの肩越しに、メロディちゃんとテオくんを抱えたまま走ってくるグレンの姿もあって、皆無事で良かったと安堵の息を吐いた。



「良かった……本当に、良かった……」

「ごめんね、すぐ戻ろうと思ったんだけど、カーバンクルが……」

「カーバンクル? 昨日助けた奴か?」

「うん、その飼い主さんに声を掛けられて……」



 抱きしめあったままそう話していると、追いついたグレンは、メロディちゃんとテオくんを地面に降ろして、私の髪の毛をぐしゃぐしゃとかき回すと、大きく息を吐いてしゃがみ込んだ。



「心配かけさせんな……まじでビビったわ……」

「ごめんねグレン」

「チエ姉ちゃん! 良かった!」

「チエ姉ちゃん、迷子になっちゃったの? 大丈夫?」

「メロディちゃん、テオくん、ごめんね」



 ぎゅうっと私に抱き着いてくるメロディちゃんとテオくんを、抱きしめ返す。

 何分か皆で団子になりながら怪我の確認なんかをしてから、今度こそはぐれない様にと、バージルがテオくんを抱っこして右手で、グレンがメロディちゃんを抱っこして左手で私を掴んで歩くという形になった。

 なにこれ、捕獲された宇宙人みたいなんだけど……。

 でも、もうはぐれるのは嫌なので、私も大人しくそれに従う。



「カーバンクルの飼い主、か……」

「神獣と契約出来んなら召喚士(サモナー)か?」

「そうだな……」



 グレンとバージルにカーバンクルの飼い主の話をすると、バージルは頻りに首を傾げている。

 私には何で首を傾げているか分からないので、不思議に思って尋ねた。



「でも、召喚士(サモナー)って言うくらいだし、契約しないと駄目だよね?」

「そうだ。精霊を従えると、精霊士(エレメンタラー)、幻獣や神獣を従えると召喚士(サモナー)、魔物を従えると獣使い(テイマー)の3つに分けられるんだが、どこにでも居る魔物や、比較的人間に友好的な精霊は契約が結びやすいし、テイミングもしやすいが……幻獣や神獣は、精霊女王の加護でテイミングが出来ないから、向こうが本気で気に入ってくれないと契約が行えないらしいな」



 バージルの話を聞いて、あれ? と、思ってメロディちゃんを見る。

 前に、精霊を怒らせちゃったから、召喚士(サモナー)を呼んだって言ってなかったっけ?

 メロディちゃんも引っかかりを感じたのか、不安そうに視線を彷徨わせていた。



「じゃあ珍しいんだな、召喚士(サモナー)は」

「ねぇ、怒ってる精霊と話す事は、誰にでも出来きるの?」

「怒ってる精霊を鎮めるって事か? それなら、精霊士(エレメンタラー)のスキルじゃないと無理だな。どうかしたのか?」

「ううん、気になって……」



 どういう事だろう? 後でメロディちゃんに確認してみた方がいいかも知れない。

 そわそわとして少し落ち着きの無くなってしまったメロディちゃんに、皆不思議そうな顔をしながらも、屋台を見て回りながらテントへと戻る事にした。

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