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第三十四話 豊穣祭に向かう中編

「ゴブリンの巣を壊しちゃったからかな? 魔物全然出てこないね」



 歩き続ける事3時間。先に進んでも、花畑の中には、私達とハニービーの姿しか見えない。

 平和なのは全然いいんだけど、暖かい陽射しと、平和な空気が揃うと、どうしても眠気が刺激されるせいで、気が緩んでしまいそうになる。

 日向ぼっこしながら眠ってしまいたい……。


 閉じそうになる瞼を、私が必死に開けようとしていると、繋がれた手が密かに揺れていた。

 横を向くと、バージルが声を押し殺して笑っている。



「眠そうだなチエ」

「昨日もいっぱい寝たんだけどね……」

「慣れねぇ生活の疲れが溜まってんじゃねぇの?」

「それもあるかも知れないな。無理してないか?」

「ありがとう、大丈夫だよ」



 心配そうに声を掛けてくれるバージルとグレンに、思わず笑みが零れてしまう。

 こうやって身体を心配される事、最近は無かったな。

 心配をかけてしまって申し訳無いと思う気持ちと、心配をしてくれて嬉しいなと思う気持ちで、板挟みにされるけど、心配してもらえるのは純粋に嬉しかった。



「チエ姉ちゃん疲れてるの? ぼくがおんぶしようか?」

「ふふ、テオくんありがとう。気持ちだけ貰っておくね」

「チエ姉ちゃん、本当に大丈夫?」

「ありがとうメロディちゃん。眠いだけだから大丈夫だよ」



 こんな子供達に心配をかけるのは良くないよね。

 やっぱり基礎体力が上がっても、ずっと農作業をしたり、戦ってた人達とは、根本的なところで違いが出てしまうんだろうか。

 少しは筋肉もついてきたかな? と、思ってたんだけどなぁ。

 自分の前腕を揉んで筋肉を確かめた。元々筋力なんか無いに等しかったので、少し動かしただけで筋肉がついたのが実感出来る。

 それでもグレンの腕と比べると、半分くらいのサイズしかない。



「もう少し歩いたら野営の準備を始めるし、無理そうならおぶるからな」

「ありがとね。その時はお願いします」



 もうそこまで貧弱ではない筈なんだけどなぁ。でも、気持ちは嬉しいのでお礼を伝えておいた。

 テオくんの顔にハニービーがぶつかってきて、テオくんが泣いてしまうという事件もあったけど、1時間程歩いても結局魔物とは合わず、木の根元付近で野宿の準備を始める。

 減ってしまった魔物の数は、そんなにいきなり増えないのかな? と、少し安心した。

 木の根元に野宿をするのは、何かあった時に、私とメロディちゃんとテオくんを木の上に逃がす為らしい。ハシゴもあるから上り下りも出来るしね。


 平地に離れて生えてる木は、薄紅色の小さな花をたくさん咲かせていて、まるで桜のようだ。

 懐かしいなぁ。お花見とかしたかったな。今度、お団子を作ってみんなで食べようかな?

 その場合、みたらしにするか、あんこにするか、草餅にするか、三色にするか悩ましいけど。ヘレトピアでは砂糖が手に入りにくいみたいだし、あんこかみたらしかな?

 作るのはすぐに出来るから、夜食に作ってもいいかもしれない。

 でも、夜食だと時間経つと団子硬くなっちゃうし、おしることかの方がいいのかな。


 テントの設営が終わったところで、グレンがアイテムボックスから薪と枝を取り出した。

 それを見て、アイテムボックスに薪を入れて置けば、誰かが探しに行く手間が省ける事に気付く。平地では草はたくさんあるけど、薪になる木があまりないもんね。

 現在のメンバーの安全を考えると、とても合理的だと思う。


 駄目だなぁ、全然何も考えてなかった。

 そういう事に気付いてくれる人が一緒に居てくれるのは、すごく心強い。



「ありがとうグレン。薪、持ってきてくれてたんだね」

「おう、前通った時に全然木が無かったかんな」



 毎日の日課として、グレンは畑と家畜の世話を終えると、1人か、もしくはプルメリアと一緒に森へ入り、レベル上げも兼ねながら、木を伐採して間引いて、薪を作って冬に備えてくれている。

 北に比べれば温暖だというだけで、冬は寒いので薪は必須らしい。

 森が暗くなりすぎないように、葉が生い茂りすぎないように、森を気にして歩き回ってくれていた。

 ジェラルドが付近の哨戒をしながら、グレンが森の手入れをする。

 一緒に住んでる人達が、万能すぎるので、私に森での仕事は無かった。

 それはそれで、寂しいけど。私はまず農業を覚えなくては。


 自分の目標をしっかりと胸に刻んで、私はグレンとバージルに声を掛ける。



「今日の晩御飯はハンバーガーとして、夜食に白玉入りのお汁粉を作ろうと思うんだけどいいかな?」

「オシルコってなんだ?」



 グレンにそう尋ねられて、私は言葉に詰まっってしまう。そうだ、お汁粉が無いからまずそこからを説明しなくちゃいけないんだった。

 でも、お汁粉って何って言われても、何から説明したらいいんだろうか……。

 原材料? 形? 食感? 味?



「えー……うーん、黒くて甘い汁に、モチモチした白い物が入ってる食べ物……?」



 結局、よく分からない形容の食べ物として紹介してしまった。

 でも、その形容し難い食べ物に対して、臆する様子の無いグレンは、興味津々に話に食いついてくる。



「焚火で作れんのか?」

「チエは、何だったか……ガスコンロだったか? あれがあるから作れるんじゃないか?」

「うん、使うのはお湯とお鍋とあんこと調味料くらいだし、そんなに時間もかからないから大丈夫だと思う」

「食ってみたいからいいぞ」

「ああ、俺も食ってみたいな」

「メロも食べたい!」

「ぼくも!」



 話を聞いていたのか、メロディちゃんとテオくんも手をあげて賛成してくれた。

 2人とも甘い物が好きだし、色々食べてみたいのかもしれない。

 甘い物が食べれると聞いて、とても嬉しそうにニコニコと笑っている。



「でも、よく私の説明で食べる気になったね?」

「よく分かんねぇけど、チエが作んなら大丈夫だろ」

「ええ、何その信頼感……」



 これは期待を裏切れない。だけど、お汁粉って派手さもないからなぁ。

 がっかりされたらショックだと思いながら、陽が沈む前にテントの中に入って、LEDランプを設置しておく。暗くなっても大分明るくなるし、寝る直前までつけておきたい。

 外はオレンジ色に染まり始めているので、手早く作らなくては。

 時間が無いので、今回メロディちゃんには見学をお願いした。


 サイバーモールを開いて、あんこと白玉粉、絹ごし豆腐とミネラルウォーターを購入する。ここに水はないから、贅沢だけどしょうがない。

 白玉だけで作ると、初もちもち食感の人が、喉に詰まらせてもいけないしね……。グレンとかバージルに、私ではハイムリック法は出来ない気がするもん。


 外に出てから、バーベキューの時に使ったテーブルと椅子を出す。椅子が1脚足りないので、サイバーモールの購入履歴から、同じ物を購入する。

 机の上にガスコンロを出してセットしてから、お鍋に水を入れて火にかけた。


 ボウルに絹ごし豆腐と白玉粉を入れて、しっかりと捏ねていく。

 目安は耳たぶくらいの柔らかさ。生地がボソボソしておらず、しっとりしてるくらいがちょうどいい。

 豆腐1丁に対して、200gの白玉粉。もしボソボソしているようなら、水を少しずつ入れて調整する。

 1口サイズに千切って丸めておき、お湯が沸いたら団子を入れていった。

 中まで火が通れば勝手に浮いてくるので、浮いてきたものはザルにいれて水を切っておく。


 別のお鍋に、つぶあんのパックを入れて、あんと同量の水を混ぜる。小豆がいっぱいあるなら最初から煮ても美味しいけど、今日は時間がないのでパックにしておいた。

 砂糖と塩で味を整えたら、白玉団子を中に入れて一煮立ちさせれば出来上がり。

 もちもち食感なのに、噛みきりやすい白玉入りのお汁粉が完成だ。



「チエ、出来たか?」

「うん、これで完成だよ」



 グレンにそう声を掛けられたので返事をすると、バージルが不思議そうに鍋を覗き込んだ。

 確かに、見た目が黒いからインパクトはあるよね……。

 メロディちゃんとテオくんも、お鍋に顔を近付けて匂いを嗅いでいる。



「確かに、黒い汁に白い物が入ってるな……」

「チエ姉ちゃん、ぼくこれ食べたい!」

「メロも食べたいけど、もうすぐ晩御飯だから駄目だよね……?」



 チラリと、上目遣いで私を見るメロディちゃんに、可愛いからいいのではないかという気持ちと、ご飯はちゃんと食べて欲しいという気持ちがせめぎ合う。



「そうだね。晩御飯食べて、まだ食べれそうならデザートに皆で食べよっか」

「やったー!!」

「チエ姉ちゃん、ありがとう!」



 飛び上がって喜ぶテオくんと、私に抱き着いて笑みを浮かべるメロディちゃん。可愛すぎて甘やかしてしまいたいけど、あんまり甘やかすわけにも……! でも、これだけ可愛いんだし……。

 心の中で1人葛藤していると、もうすぐ陽が落ちてしまいそうだったので、慌ててサイバーモールを開く。

 グレンは焚火に、バーベキューの時に使った着火剤を使いながら火をつけていた。

 文明の利器に慣れすぎなんだよねぇ……。


 お汁粉結構な量が出来たし、夜食として食べ切れなければ明日も食べれる。

 食べ切れなければ、アイテムボックスにしまっておけばいいしね。なんて便利なんだろう!


 そんな事を考えながら、某ハンバーガーショップを覗いていく。

 やっぱりここは、チーズバーガー? でも、てりやきバーガーも皆好きそうだな。

 味はお任せなので、責任が重大だ。

 でも、いきなりメニュー見せられても味の想像は付きにくいだろうから、お任せにしたい気持ちも分からないでもない。


 色々悩んで、バージルとグレンにはチーズバーガーと、てりやきバーガー、メロディちゃんとテオくんには月見バーガーを買った。卵とてりやき、きっと子供は好きだと思う!

 私の分は無難にチーズバーガー1個にしておいた。この後お汁粉もあるしね。

 後は、皆でつまめるようにと、セットでポテトをつけて、ドリンクを人数分、ナゲットを2つカートに入れる。

 購入すると、テーブルの上に紙袋に入った商品が届いて、袋の上からでも分かるくらいのいい匂いを放っていた。

 確かに、これは他のテントまで匂いそうだよね……。


 皆におしぼりを渡して手を拭いてもらい、ハンバーガーとドリンクを配った後、紙皿にポテトとナゲットを出し、つまんで食べれるように準備した。



「チエ姉ちゃん、これどうやって食べるの?」

「包み紙を剥がしながら、手が汚れないように包んで、こうやって持って食べていくんだよ」



 メロディちゃんとテオくんにハンバーガーを持ってもらったまま、実際に包み紙を剥がしながら実践してみせる。

 口で説明するのも、中々分かりにくいし、実際に見てやってもらった方がいいよね。



「これ、てりやきはタレが零れやすいから気を付けてね」

「はーい! ありがとうチエ姉ちゃん!」

「美味しそう!」



 元気良く返事をしたメロディちゃんとテオくんは、大きな口を開けてハンバーガーにかぶりついた。

 口の端からタレが漏れているけど、目を見開きながら、嬉しそうに咀嚼している。

 味が気に入ったみたいで、私も一安心だ。

 バージルとグレンも、綺麗に包みを避けながらハンバーガーを食べていたので、私も口に含む。



「美味いな! 前にチエが作ってくれたのとは、また味が違う」

「そうだね、てりやきは醤油ベースだしね」



 バージルの質問にそう答えていると、私の横に座ってたグレンが、私の服の袖を引っ張た。

 何だろうと振り返ると、二個目のチーズバーガーをかじりながら、少しバツが悪そうな顔をしたグレンと目が合う。



「どうしたの?」

「チエ、こんだけじゃ足りねぇ……」

「足りなかったら追加で頼むから気にしないで。何が食べたい?」

「こっちのチーズの方がいい」



 チーズがお気に入りのグレンは、迷わずチーズバーガーを指名してくる。

 本当にチーズが好きなんだなぁ。


 追加でチーズバーガーと、まだ欲しいと言うグレンの為に、季節限定のハンバーガーを注文した。

 これだけ食べれば大丈夫かな?

 そう思いながら、追加のバーガーを手渡すと、グレンは笑顔でそれを受け取る。



「チエ、ありがとな」

「ううん、いっぱい食べてね。でもこの後デザートあるからね?」

「おう、まだ入るから大丈夫だ」



 まだ、入るんだ。その食欲に少し笑ってしまった。

 ちょっと塩が多めでしょっぱいポテトを食べながら、バージルに視線を向ける。

 幸せそうに頬を緩めながらハンバーガーを食べて、メロディちゃんとテオくんの世話をしていた。

 それを見た私は、自分の頬が緩むのを感じながら、最後のハンバーガーを口に含んだ。

 最後のお楽しみ? に、なるかもしれないお汁粉が残っている。



「皆、お汁粉も食べれそうかな?」

「ああ、俺は大丈夫だぞ」

「メロも!」

「ぼくももっと食べれるよ!」

「じゃあ、準備するね」



 器にお汁粉を盛り付けて、みんなに配った。

 口に合うといいんだけど。そう思いながら、椅子に座った私はお汁粉をすする。

 まだ湯気がホカホカ出てるしね。結構熱かった。



「熱いから気を付けてね」

「はーい!」



 そう声を掛けると、メロディちゃんはお汁粉に口を付けた。

 白玉団子を口に含んだ瞬間に、もちもち食感に驚いたのか、目を見開いたまま噛んでいる。

 パンとも違うその食感は、癖になるよね。そう思いながら、もう一度お汁粉をすすった。

 メロディちゃんが食べたのを見てから、お汁粉を食べ始めたテオくんも、不思議そうな顔をして白玉団子を噛んでいたので、つい笑ってしまう。

 ポカーンとした顔が、そっくりだなぁ。可愛い。



「甘い! 美味しい! 何か白いのすごい!!」

「ありがとう! 喉につまりやすいから、しっかりと噛んで食べてね」

「うん!」



 美味しい、美味しいと嬉しそうに食べるメロディちゃんとテオくんの間で、バージルは目を細めながらお汁粉を食べている。

 白玉団子をスプーンですくって、口に運んでしっかりと噛んでいた。



「チエ、俺このあんこ……? が、凄く好きだ」

「バージルって、結構甘い物好きだよね」

「ああ、好き嫌いはないからな。特に最近は、食物は何でも食おうと思ってるぞ」

「そうなの?」

「ああ、畑の手入れや収穫なんかをしてみて、ああやって手にかけて育ててる物を捨てるのは悪いだろ?」



 私を見つめて、バージルはそう呟く。

 誰にも聞こえないような声量だったけど、バージルの本心がつまってるんだろうな。

 私も、バージルの言葉に嬉しくなって、何度も頷いた。

 好き嫌いは殆どないけど、自分で育てた物を格別美味しく感じるので、きっとバージルも同じ気持ちなのかもしれない。



「そうだ、グレン。今日の見張りは、俺とグレンで4時間ずつ交替しよう」

「あん? 4時間ずつでいいのか?」

「ああ。俺が先に見張りに入ろう」

「寝る時間少なくなるぞ。いいのか?」

「慣れてるから大丈夫だ」



 見張りを立てずに、無防備に眠る事は出来ないので、見張りは絶対にいる。

 けれど、バージルが見張り8時間くらいになっっちゃうけど、体調は大丈夫なのかな。

 心配そう見つめる私に気付いたバージルは、大丈夫だと言わんばかのような仕草で、グレンの言葉をかわしていた。確かに、冒険者だから野宿と見張り、どっちも経験あるよね。



「片付けを任せて悪いが、俺は先に仮眠をとって来る。何かあったら呼んでくれ」

「いいよ、私片付けるから先に休んでて」



 私がそう声を掛けると、バージルはすぐにテントの中に入っていく。

 しっかり寝ておかないと、判断力も鈍るしね。

 バージルの背中を見送りながら、私は片付けをし始めた。

豆腐で白玉団子を作るとヘルシー!(当社比)

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