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第三十三話 豊穣祭に向かう前編

「準備が出来てるなら出発するか」



 バージルのその言葉に、私は全員を見渡した。

 温めるだけのシチュードリアも作ったし、お昼に食べるお弁当も用意した。

 ケイタさんとジェラルドがいつでも食べれるように、冷凍庫にはお惣菜や湯煎するだけのおかずも入れてあるし、ご飯はジェラルドが炊けるから大丈夫。

 カップスープの素や、インスタント味噌汁もたくさん購入して置いてあるから、汁物も足りるかな。


 私達の晩御飯も、今日は平地での野営なので、某ハンバーガーで済ませる予定になっている。

 バージルが、どうしても某ハンバーガーを食べたいと熱烈な希望を出していた。

 好き嫌い無いって言ってたし、ジャンクフードが気になるのかな。気持ちは分かるけど。


 3日間続く豊穣祭の1日目と2日目を見物したら、3日目のお昼頃から帰宅を開始して、平地で野宿を1泊。その翌日の夕方頃に家に戻る日程を、バージルとジェラルドが組んでいた。

 進行スピードはメロディちゃんとテオくんに合わせるので、多少ずれが出るかもしれないけど、大体行きと帰りで4泊5日を予定しているらしい。

 子供より歩くのが遅かったら、申し訳無さが半端ないので、私も頑張って歩かなくちゃ。


 寂しそうにスンスン鼻を鳴らすプルメリア。

 今回は、人がごった返すお祭りに行くので、お留守番になってしまった。

 お酒の入った冒険者が、テイマーのペットを殺してしまって揉める事がたまにあるからだ。

 プルメリアはグリフォンだけど、まだ子供だし野生種よりか大分レベルが低いらしい。そう聞いてしまえば、連れて行きたいなんて我儘は言えなかった。



「ごめんね、お土産買ってくるからね」

「ピィ……」



 いい子いい子と、何度も頭を撫でると、仕方ないとでも言いたげに溜息を吐かれる。

 もう1m以上あるから、抱えて歩けないしね。メロディちゃんとテオくんも、プルメリアに抱き着いて別れの挨拶をしていた。

 別れの挨拶が済んだので、皆で玄関に向かう。

 ジェラルド、ケイタさん、プルメリアが玄関まで、見送りのために付いてきてくれる。



「悪ィなジェラルド、家畜頼むわ」

「ええ、任されました。たまには楽しんで来て下さい」



 今日は口でじゃれ合う事もなく、普通に別れの挨拶してるなぁと、ぼんやりグレンとジェラルドを眺めた。大体いつも言い争ってるもんね。



「バージル、魔導伝書鳩在庫ある?」

「まだ半分くらいあるぞ。ケイタもあるか?」

「ここ来る前に補充して来たから平気だ。何かあったら鳩飛ばしてくれ」



 ケイタさんとバージルは冒険者らしく、連絡方法のチェックをしている。

 何も無いのが一番だけど、何かあってから焦るより全然いいよね。

 流石、旅慣れしてる人は、そういうところしっかりしてるなぁ。



「チエさん、メロとテオをお願いしますね」

「ピィ!」

「うん、頑張って守るね!」



 私より小さいし、レベルも低いんだからしっかり守らないと!

 まぁ、私もそこまで強くないから、守られる方なんですけどね……。

 バージルとジェラルドの強さは何となく分かってるので、メロディちゃんとテオくんを守る事に専念しよう。


 その場に屈んで、しっかりとブーツを履いた後、紐で縛る。

 トゥインドルで買ってからずっと履き続けている為か、革は私の足に馴染んできていた。

 元々柔らかい革を使ってるけど、最初に比べて歩きやすく感じる。革の買い替えっていつくらいなのかな。まだ知らない事がたくさんあるから、覚えて行きたいな。

 つま先を玄関にトントンと打ち付けて、ブーツの位置を確認してから顔をあげた。



「じゃあ、行ってきます!」

「気を付けて行ってらっしゃい~」

「お気をつけて」



 5人で玄関を出て、魔導昇降機まで歩き始める。

 まだ陽が昇り始めたばかりで、少し薄暗いけど寒さは感じなかった。



「寒かったり、暑かったりしたら教えてね。上着持って来たからね」

「ありがとう、チエ姉ちゃん!」

「ぼく、まだ寒くないよ!」

「グレンとバージルは平気?」

「おう、寒かねぇな」

「ああ、俺も大丈夫だ。ありがとなチエ」



 話しながら歩いていると、すぐに魔導昇降機に到着した。

 子供達だけで勝手に出かける事は無いと思うけど、メロディちゃんとテオくんはまだ使用者登録していない。何かあってからじゃ遅いからね。

 バージルが、魔導昇降機を稼働させると、少しずつ崖の上を目指して移動していく。

 何回見ても、魔導昇降機は不思議な道具だし、景色は綺麗だなぁ。


 上に到着した後、私はテオくんと手を繋ぐ。走ったりしたら危ないからね。それから、テオくんと繋いでる反対の手を、バージルが優しく握ってくれた。

 メロディちゃんは、グレンと手を繋いで歩くらしい。



「何かあれば声を掛けるから、すぐに離れてくれ」

「うん、お願いします」



 バージルが先頭を歩く形で、全員で森に入っていく。

 ゴブリンとオークを討伐した為か、襲い掛かってくる魔物の姿は見えずに、私は安心して息を吐いた。

 やっぱり、視界が悪いところを歩くのは緊張するな。どこから何が来るか分からない、お化け屋敷を歩いているような気分になる。

 テオくんもメロディちゃんも、畑仕事や家の手伝いをしていた為か、今の所疲れや息切れもないし、私もレベルが上がって基礎体力が増えたからなのか、問題なく進むことが出来ていた。


 私の左手を握るバージルの右手を、歩きながらぼんやりと見つめる。

 バージルの手のひらを、自分の指で少しずつなぞっていく。いつも右手で剣を握っているバージルの手は、肉刺がたくさん出来て硬くなってる部分が多い。

 肉刺を1つ1つ確認するように、指を滑らせて確認していると、バージルは何度も親指で私の手の甲を撫でていた。


 最近、水仕事と畑仕事ばっかりしてたから、手が荒れてないかな。カサカサしてたらどうしよう。

 雑草を抜いてる最中に、草で切って怪我をしたり、家畜のお世話をしている最中に、餌を待ちきれないブレイヴチキンに突かれたりして、手は日本に居た時よりもたくさんの傷が出来ているので、触り心地は良くないと思うんだけど。

 女子力低いとか思われてたら悲しい。けど、バージルはそんな事考えてすらないかも。


 人を好きになるのが久しぶりすぎて、気持ちを持て余している。

 いい感じに拗らせてるなぁ……。少し苦笑いを浮かべた。



「あ! キノコ!」

「テオ! ママがキノコは危ないから駄目って言ってたでしょ!」

「そうだった!」



 私と手を繋いだまま走り出そうとするテオくんを、メロディちゃんが止める。

 テオくんの視線の先には、なめこのような黄色がかったオレンジのようなキノコが生えていた。

 なめこかな? 美味しそうだけど、キノコは確かに素人では危ないよね。

 グレンがじっときのこを見ていたので、グレンは知っているのかな?

 そう思って、グレンに声を掛けた。



「あれは何のキノコなの?」

「あん? ありゃノービル茸だ。食うと気絶する」

「何それ怖い……。じゃあ、あっちのキノコは?」

「あっちはカラカ茸。腹下し、吐き気、痙攣を引き起こすから食わねぇ方がいいぞ」

「薬草学か鑑定ルーペが無いなら、キノコは手を出さない方がいいな。殆どが有害だから、あまり食べられてないしな」



 グレンの言葉に続いて、バージルがそう教えてくれる。

 鑑定ルーペって、商業ギルドでマーカスさんが使ってた虫メガネみたいなやつかな。

 存在を聞いてはいるけど、実物がどれか分からないので、多分あれかな? ぐらいでしか判別がつかない。



「鑑定ルーペって高いの?」

「買おうと思った事が無いから噂でしか知らないが、白金貨2枚ぐらいするらしいな」

「なるほど。お金持ちしか買えないんだね……」

「チエは、鑑定あんだから自分で見れんじゃねぇのか?」

「あっ……」



 そう言えばそうだった。わざわざ訊かなくても自分で鑑定出来るから調べればよかったな。

 日本に居た時は、鑑定で調べられるなんていう特別な事は無かったので、つい忘れてしまう。

 思い出したかのように声を出した私の頭を、破顔したバージルが優しく撫でる。



「忘れてたんだな」

「ごめん、まだ鑑定とかの事忘れちゃう……」

「まぁ、出来ねぇのが普通だしな」

「チエ姉ちゃんはカンテイが出来るんだ! 勇者みたいだね!」



 無邪気にきゃっきゃと笑うテオくん。異世界から来たとは、まだ幼過ぎて伝えられてない。

 何かの拍子に話してしまったら、この子達も危険な目に遭ってしまうかもしれないから。

 私だって、出来れば秘境で静かに暮らして行きたい。

 目立ちたいなら秘境に引っ越したりせずに、街でサイバーモールを駆使して商売をしてれば、驚くくらい儲ける事は出来るだろうけども。


 それよりも、今のようなのんびりとした生活の方が私に合っている。

 どこのギルドとも関係を持たず、のんびりとした自給自足。

 1人では無いから話し相手もいるし、ご飯を作れば美味しいと言ってくれて、テレビがあるからDVDだって見れるし、ゲームだって買えば出来ると思う。

 本が買えるから漫画も読めるし、小説、絵本、辞典、暇つぶしにはちょうど良い。


 手元のお金が尽きる前に、サイバーモールで売れるよう、作物をたくさん作らなくちゃいけないだろうけど、今のままの生活なら、後10年くらいは作物を売らなくても生活していける。

 それまでに、知識や基礎なんかをゆっくり学んでいければいいな。

 私は、のんびりとした、壮大な農民生活を考えながら、皆と歩き続けた。


 5時間程で森を抜け、森から少し距離を取ったところでレジャーシートを広げる。

 皆で座り込んで、紙コップにお茶を用意したり、おしぼりを配ったりしてまったりしながら、持って来たお弁当を出して昼食の準備を行う。

 周りをハニービーが飛んでる中での昼食って、ピクニックにでも来たみたいで少し心が弾む。



「今日のお昼ご飯は、肉巻きおにぎりと、ポテトサラダと、卵焼き、ブロッコリーのカニカマあんかけと、人参とアスパラの炒め物です!」



 ブロッコリーのカニカマあんかけは、この間作り置きして冷凍したやつだ。

 お弁当作るときに、こういうのあると便利だよね!

 会社に通ってた時も、土日で作り置きして冷凍、お弁当にそのまま入れて会社で温めて食べる。朝の忙しい時間にすごく助かったし。



「これは三角じゃないんだな」

「三角だとお肉巻きにくいからね。丸くしたんだよ」

「色々考えてんだな」

「メロもお肉巻くの手伝ったよ!」

「ぼくはジャガイモをつぶしたよ!」

「ちゃんと手伝いしたのか、偉いな」



 ちゃんと手伝ったと主張するメロディちゃんとテオくんに、バージルは笑顔を浮かべながら頭を撫でる。

 朝早くから起きて、しっかりとお手伝いをしてくれた2人には感謝しきれない。

 可愛いなぁ。お手伝いをして褒められたら、またしようって思うもんね。

 メロディちゃんとテオくんの素直さに、私も笑みを浮かべてしまう。


 皆に紙皿を配り、おにぎりやおかずを乗せて配っていると、焼肉のタレで焼いた肉で包まれたおにぎりに、グレンは一足先にかぶりついた。

 グレンは、最近ずっとお腹を減らしてるなぁ。

 量が足りないのかな? 少し心配になってしまうくらいよく食べる。

 男の人はそれぐらい普通に食べるものなんだろうか。経験が少ないので、あまり参考になりそうにないけど、そう考える。



「うんめぇ! この甘じょっぱいタレが合うな」

「ああ、美味いな! 甘じょっぱさが米にちょうどいい!」

「良かった。いっぱいあるからたくさん食べてね」

「チエ姉ちゃん、こんな料理が作れるなんて天才だね! すごく美味しい!」

「お米とお肉がすごいね! ぼく、これ大好き!」

「ありがとね。メロディちゃんとテオくんもいっぱい食べていいからね」



 褒められるのはすごく嬉しい。

 顔を綻ばせなが皆がお弁当を食べてるのを見てから、私もおにぎりにかぶりついた。

 美味しい物を皆で食べれるって、幸せだなぁ。


 もぐもぐとおにぎりを咀嚼していると、口の端に何か触れる。

 不思議に思ってそちらを向くと、バージルが私の口元に親指で触れていた。

 え? な、なんだろう……。

 突然の事に驚いて動きが止まる私を余所に、バージルは口元を拭うと、そのまま親指を自分の口へと運ぶ。



「タレが付いてるぞ」

「え、あ、ありがとう……?」



 あれ、私は今何をされたんだろう?

 少し考え込んで、口元に付いてたタレをバージルが拭って、ペロってされたのか、と納得する。

 それと同時に、一気に顔が熱くなって、変な汗が出て来た。


 え、なん、で。いや、付いてたからなんだけど!

 これ、子供扱いなの? 大人扱いなの? 何で舐めて、え?


 頭の中が混乱して、自分でも何を考えているのか、訳が分からなくなってくる。

 一瞬にして挙動不審になる私を、怪訝そうに見ているグレンとテオくん。

 メロディちゃんはすごくいい笑顔を浮かべながら、私とバージルを交互に見ている。

 バージルは、特別な事をした様子もなく、ポテトサラダを頬張っていた。



「チエ、どうした? 食べないのか?」

「た、べる……」



 微笑みながらそう訊いてくるバージルに、バージルのせいでしょ! とは言えそうにない。

 私が勝手に意識して真っ赤になってるだけだもんね。

 きっと、口元にタレなんて付けてるから、子供扱いされたのかもしれない。


 自分自身に落ち着けと言い聞かせながら、何度か深呼吸を繰り返す。

 でも、触れられたところは、まだ熱が残るような、触感が残っているような、不思議な感覚は収まりそうにない。

 鷲掴みにされるような感じがするくらい、胸が痛みを訴えてくる。


 お、落ち着け私。バージルに他意はないんだから。

 1人でドギマギしてる方が怪しいし! 

 バージルには、こんな気持ちを持ってる事、気付かれたくない。

 気付かれたくないと言うよりは、振られて傷付きたくない、とでも言うのかな。

 振られる前提なのが悲しいけど……。

 ヤケクソ気味に、口の中にポテトサラダを詰め込んだ。



「あと5時間くらい歩いたら、少し早いが野営の準備をしようか」

「んだな。チビ達も居るしな」

「暗くなる前に終わらせたいからな。その代わり、明日は陽が昇ったらすぐにプレミリューに向かおう」

「そうだね、早く着いて宿も取らないと」



 きっと、お祭り時期だから混むんだろうな。

 この時期は、宿以外にも空き部屋がある一般家庭も人を泊めたりするらしい。

 泥棒とか心配じゃないのかな? と思ったけど、この時期に盗みを働くのはタブー視されてるそうで、無くはないけど、殆ど無いとの事だった。


 逆に、それぞれの街で行われる豊穣祭は、飾りや出し物が少しずつ違うそうで、色んな村や街を巡って商売をする人や、見物客の護衛などで冒険者も稼ぎ時らしい。

 街に入りきらないと、街の外で野営をする事もあるらしいけど。

 逆に、野営の時に護衛を引き受ける専門で、外で野営をしている冒険者も多いそうだ。


 大陸の中で一番大きい豊穣祭は、フルールブランシュの首都ヴィフタル。

 逆に、収穫祭はトワイランドの首都、ラオージュが一番盛り上がる。

 やっぱり、収穫量が多い地方の方が力の入れようが違うのかな?



「宿が取れなければ、外にテントを張る事になるからな。宿が取れるといいんだが」

「別に外でもいいけどよ、チエの飯はあんま食えねぇな」

「そうだな。匂いからして違うからな……。目を付けられても困る」

「おう。じゃあやっぱ頑張って歩くしかねぇな」



 グレンのその言葉に、テオくんとメロディちゃんは顔を見合わせる。

 そっか。確かに醤油とか味噌の匂いとか、普段はそこまで気にした事なかったけど、嗅ぎ慣れてないと匂いが違うなって思われちゃうもんね。


 フォークで卵焼きを刺して、それを少しずつ口に運んでいると、メロディちゃんとテオくんが口を開いた。

 もう食べ終えたのか、お皿の上の物は綺麗に無くなっている。



「メロ、歩くの好きだから大丈夫だよ」

「ぼくも頑張って歩くね!」

「わ、私も頑張って歩くね……」

「そうだな。だけど、無理せずにゆっくり行こう。何かあったらせっかくの豊穣祭が楽しめないしな」



 そういって、順番に頭を撫でるバージル。

 子供扱いかな? と、思ったけど、グレンの頭も撫でていたので、子供扱いではなく仲間扱いだと思う事にした。

 グレンは口をへの字にしているけど、目が嬉しそうに細まっている。

 頭撫でられて嬉しいんだ。確か、身長の高い男性は頭を撫でられ慣れてないから、頭を撫でられると弱いって何かで読んだ気がする! それだ!

 モテテクを披露してるのがバージルなのは、見なかった事にしよう。



「全員食べ終えたら出発しよう。調子が悪かったら必ず言う事。いいな?」

「分かった!」

「ぼく、お腹が苦しい!」

「それは食いすぎじゃねぇのか」

「そうかも! おにぎり4つ食べた!」



 楽しそうに話しをしているグレンとテオくん。お兄ちゃんと弟だなぁ。

 けれど、とても楽しそうだ。

 おにぎり、4つも食べてくれたんだ。気に入ってくれて嬉しいな。もう皆は食べ終わりそうなので、私もいそいでお皿を空にしようとフォークを進める。


 大分急いで食べたけれど、私が食べ終える事には、みんな食べ終えてレジャーシートの上に寝転がっていた。



「ごめん、お待たせ!」

「そんな急いで食べなくても大丈夫だぞ」



 口元に笑みを湛えたバージルが、私にそう声を掛けてくる。でも待たせてると思うと、焦っちゃうよね。

 だけど、気遣ってくれて嬉しいな。こんな事で幸せだ。



「ありがとう! ご飯の後片付けして、プレミリューに行こっか」

「メロ、コップ集めるね!」

「メロディちゃん、ありがとね」

「ううん、いっぱいお手伝いするから言ってね!」



 健気で可愛い! もう、食べちゃいたいってきっとこういう事を言うんだろうなぁ。

 可愛さだけで、お腹いっぱいになりそう。それぐらい可愛い。

 

 皆でレジャーシートの両端をつまんで、人が移動する形で折り畳んでいく。そのままアイテムボックスに入れても大丈夫だけど、変な癖がついたら座り心地も良くないだろうし。

 1人だと畳むのも大変だけど、全員でやれば簡単に畳めるので、凄く助かる。


 レジャーシートをアイテムボックスにしまったら、全員で忘れ物チェックを行った。

 忘れ物チェック、日本に居たときよりしっかりやってるかも知れない。そう考えると少し面白い。



「それじゃ行くか」



 そう言って、私の手を握るバージル。平地でもしっかり手を握ってくれるなんて、護衛の鏡だ。

 だけど、他の人の護衛の時も、手を握ったりしてるのかな。

 文句を言う気はないけど、急に胸が苦しくなる。どんな相手か分からないのに、嫉妬なんて恰好悪いな……。


 そう思いながら、また皆で歩き出した。

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