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第三話 スキルを調べてみた

「やば、寝過ぎた……」



 自分のお腹がぐーぐー鳴る音で目を覚ました。

 慌てて木枠で出来た窓を開けるが、外はもう既に明るくなり始めており、チラホラと仕込みの為の明かりが見えるだけで開いている店は無さそうだった。スマホを確認すると4:20と出ている。



「私のご飯……」



 そう呟いても食べるものは手元になく、大きく溜息をついてからベッドに腰かけた。

 ぐっすり眠ってしまった為、眠気もない。

 自分のお腹の辺りを手で押さえながら、空腹感を紛らわせて、お店が開いてからご飯を食べに行くしかなんだろうか。それは少し悲しいなぁ。



「そういえば、スキルってどうやって確認するんだろう……? サイバーモール、だっけ?」



 サイバーモールと呟いた途端に、目の前にインターネットのようなウィンドウが現れた事に驚いて、私は思わず周りを見渡すけれど、当然の事ながら私以外は誰も居ない。

 安堵の息を吐いてから、視線を動かしながらウィンドウの確認を行った。



「購入履歴によるオススメ、は購入した事ないから無いよね。メニューはこれかな」



 メニュー画面を見ながら、ふとマウスが無いけどどうればいいんだろうと悩んでしまったけれど、スマホはタッチパネルだしと、思いながら、画面にそっと触れてみる。

 想像した通りに、メニューリストが現れたので、ゆっくりとスクロールしながら画面を眺めた。 


食品・飲料水・酒・スイーツ

ドラッグストア・ビューティー

アウトドア・スポーツ

ホーム・キッチン・DIY

土地・住宅・生活

家電・電子機器

本・雑誌・文具

産業・研究開発

貴金属・ジュエリー

ペットショップ

買取

テナント募集


 メニューリストの一番上、食品・飲料水・酒・スイーツに触れてみると、メニューリストが更に細分化され、肉、野菜、魚介類、加工、惣菜などに別れており、一つ一つ数量や個数などを細かく指定して注文出来るようになっていた。


 何これすごい!

 お腹も減っていたのでちょうど良い。とにかく、まずはお腹を膨らませよう。


 急いであんパンとコーヒー牛乳をカートに入れると、”残金がありませんチャージしてください”と、画面に表示が出てしまい、商品の購入が出来なかった。

 そっか、タダで買える訳無いもんね。

 鞄の中に、給料を下ろしたばかりのお財布があった事を思い出す。

 けれど、現金って使えるのかな。電子マネーじゃないと駄目だったらどうしよう。

 そう思いながらも、鞄の中から財布を取り出して、下ろしたばかりの給料を画面に近づけてみると、吸い取られるように全額手元から無くなり、画面に金貨2枚、銀貨15枚と表示されていた。



「日本円もヘレトピア紙幣換算でチャージされるのかぁ……。まぁ、持っててもしょうがないもんね」



 銅貨8枚のあんパンと銅貨10枚のコーヒー牛乳を注文して決済すると、ビニール袋に入った商品が目の前に現れた。

 ご丁寧にコーヒー牛乳は冷えているし、ストローもついているのには笑ってしまう。

 チャージの残金は金貨2枚銀貨14枚銅貨82枚になっていたので、予想した紙幣価値と大きく乖離はしていなさそうだ。


 チャージ金額の横には、赤く縁取りをされた”払い戻し”というボタンがあったので、好奇心からそこをタッチすると、金額を指定する画面になり、チャージした金額を手元に戻す事ができることに気が付いた。

 銀行なんかなさそうだし、優秀な財布代わりになりそう。

 海外ではスリも多いと聞くし、ここの治安が分からないので安全面でも優秀そうだなぁ。


 あんパンの袋を開けてかぶりつきながら、サイバーモールをじっくりと見回っていく。

 お金さえあれば地球の物が手に入るため、生きていく為には役に立ちそうではあるけれど、このスキルが人にバレた時に問題が起きそうな予感がしてしまい、誰も居ない空間で大きな溜息を吐いた。

 お金を稼ぎながら、自分の身を護る事が、私には出来る気がしないせいだ。


 

「ペットショップってなんだろ? ヘレトピアの家畜とペットが売ってる、のかな?」



 ページを開いてみると、今日姉弟に買ったてあげた串焼きのビッグマーモットや、ブレイヴチキンなどの家畜から、ペット向きの愛らしい動物やめちゃくちゃ強そうな魔物まで並んでいた。

 家畜用飼料や餌、服からおやつまで何でも揃いそうだ。


 買取は”何でも買取致します!”と、いう謳い文句が大きく載っているし、野菜や家畜を育てて買取をして貰えば自給自足も可能かも知れない。

 いくらで売れるのか分からないので、何とも言えないけれども。



「土地・住宅・生活ってなんだろ、土地を売り買い出来るのかな?」



 スキル説明に視線を向けると、チートな内容に思わず三度見をしてしまった。



 "ヘレトピアにある土地を購入、売却出来る。

 購入した土地へは、購入者の許可が無ければ立ち入りが出来ず、攻撃も届かない安全地帯となる。

 どこの土地でも一律1㎡銀貨3枚。

 売却も可能で売却金額は一律1㎡辺り銀貨1枚になる。

 また、購入した土地に対して住宅などを購入し建築する事が出来る。

 モデル販売と注文販売があり、モデル販売は既に形の決まった住宅を選んで購入する事ができ、費用は少し抑えられる。

 注文販売は費用が嵩むが、間取りから外壁、床、備え付けの家具などを自分の好みにカスタマイズして注文が行える。

 どちらも水道、キッチン、トイレ、バスルームなどオプションで付けることができるが、生活カテゴリーから配管を行い、上水道、下水処理、発電機など必要な物を取り付けなければ動かない。

 また、生活カテゴリーの中に、畑や家畜用住居、柵や土、泥、牧草などの地面パネルなどの建築項目があり、購入した土地に対して使用する事ができる。

 購入すると一瞬で建築される。"



 開花の手とやらも農民向けらしいし、もう誰も居ないところで自給自足生活ができるのではないだろうか。

 街から離れた人が少ないような所で、農業をや

りながら生きていこう。

 上下水道や発電機をつけたら、今までと変わらない生活が出来るのはありがたい。気持ちの面で励みになりそうだ。

 今後の方針が決まった瞬間である。

 

 方針が決まれば明日からの行動も取りやすい。

 人里から多少離れている比較的安全な土地を探す事、そこまでの移動手段を探す事、土地と家を買う為に手持ちのお金を増やすことだ。


 サイバーモールのメニューを見ながら、鞄を開いてタブレット端末とスマホを取り出す。

 家に帰れないならば、持っていても仕方が無い。

 買取査定に出すと、タブレットは銀貨65枚、スマホは銀貨57枚の合計金貨1枚と銀貨22枚になるので、そのまま買取を行った。

 ついでに落とすといけない為、鞄の奥にしまった金貨9枚もチャージしてしまう。

 金貨11枚銀貨36枚銅貨82枚、およそ114万円の手持ちがあることになる。

 ポケットの中には、チャージせずに使えるお金をそのまま入れておいた。1本銅貨7枚の串焼きを6本買ったのと、宿の代金銀貨2枚を支払った残りの銀貨97枚銅貨58枚がある。

 当面の買い物はこのお金で行おう。



「これでよし! 後は市場調査してから、売れそうな物や必要な物を買おう」



 ヘレトピアの商業や税金などがどうなっているか分からないので、朝になったら宿屋の人に商業は誰に聞いたらいいか確認してみよう。

 目立ち過ぎず、売れそうな物を売ったらすぐにこの街を出て行かなければ。

 同じところに留まりすぎると、スキルが誰かにバレてしまうかもしれない。誰かにバレて問題になっても私には対応出来ないし、監禁とかされても困ってしまう。


 

「そう言えば、オリーヴァーさんはアイテムボックスと鑑定スキルも絶対付くって言ってたなぁ。アイテムボックスってどうやって開くんだろう」



 サイバーモールみたいに名前を呟いてもアイテムボックスは開かないので、別の方法で開く必要があるみたいだ。



「えー、じゃあステータスオープン?」



 ステータスオープンと呟くと、サイバーモールの上にステータス画面が重なるように現れた。

 多重起動(?)が出来るのかと少し感心をする。

 ステータス画面には私の名前やレベル、スキルなどが載っていて、アイテムボックス、鑑定、サイバーモール、開花の手もスキル画面に表示されていた。


 名前:柊 千会

レベル:1

  HP:150

  MP:150

 攻撃:30

 魔攻:40

 防御:30

 魔防:35

 敏捷:20

 

 スキル

 アイテムボックス

 鑑定

 サイバーモール

 開花の手



「開花の手の説明は……あ、見ると説明が出るんだ」



 "一次産業である農業、畜産業、林業、鉱業、水産業に対してブーストがかかるスキル。

 種や苗木に魔力を込めると品質が上がる上に成長速度が速くなり、虫がついたり病気になったりしなくなる。

 また、餌に魔力を込めるとその餌を食べた生き物の品質があがり、成長も速くなる。

 作業道具に魔力を込めると少ない力で道具を使う事が出来る。"



「農民向けスキルだねぇ、ありがたいなぁ。戦うのは怖いもんね」



 スキル画面のアイテムボックスに触れてみると、アイテムボックスが開いた。全部タッチパネル方式らしい。

 カテゴリーもしっかり分別されており、ソート機能やゴミ箱機能まである。


 試しにあんパンの空袋とコーヒー牛乳の紙パックをビニール袋に入れた状態で収納と念じると、アイテムボックスその他のカテゴリーにビニール袋が収納されており、更にビニール袋をタッチすると中に空袋と空の紙パックが入った状態になっていた。袋に入れておけば更に細分化出来るんだ、なんて便利なんだろう!

 そのままビニール袋をゴミ箱へスワイプすると消去しますか?と出て、はいを押すとビニール袋は無くなった。


 これでゴミ問題は解決されたし、アイテムボックスの優秀さも分かったのでアイテムボックスを閉じる。


 仮に一人で暮らしていくとして、畑と住居、家畜を数匹と考えると最低でも150㎡、45坪ちょっとくらいの土地が欲しい。土地自体は金貨4枚銀貨50枚で買えるので、あとは建物と家具、生活を始めるために必要な金額がどれくらいかかるかになってくるけれど。


 土地・住居・生活カテゴリーから、モデル販売を見る。

 平屋建て2DKで見てみると、IHヒーター付きのオープンL型キッチン、家電収納、オーブンスペース付きの壁面収納、1.5坪のバスルーム、ウォシュレットトイレ、洗面化粧台がついて金貨40枚。4畳のキッチン、6畳のダイニング、10畳の洋室が1つ、8畳の洋室が1つ。どちらにも1畳のウォークインクローゼット付きだ。

 一人暮らしなら何も問題がない。


 更に生活カテゴリーで上下水道、ソーラーパネル、発電機器、蓄電池を設置すると金貨18枚。

 そこに住居以外の土や畑パネルと鶏小屋、鶏の生体、鶏の餌などを足すとおよそ金貨1枚。

 生活に必要な家電と家具、食器や調理器具を最低限揃えたら金貨11枚くらいだろうか。


 およそ金貨80枚、有事の予備や生活が安定するところまでを考えても金貨100枚は欲しい。

 現在は金貨11枚なので、残り89枚も必要なことになる。



「890万円くらい……私の貯金より必要だよ……」



 いきなり頭を抱えるしかない。

 早くこの街を出て行きたいのに、890万も稼がないといけないなんて。

 どうしたものかと頭を抱えていると、姉弟がいっていた品質が高いものは王族貴族用に買取をされると言っていたのを思い出した。



「品質ってなんだろ? サイバーモールにも書いてあるかな?」



 食品・飲料水・酒・スイーツカテゴリーを開くと、目に付いたキャベツを選択してみた。


 "キャベツ 品質100

 千葉県産春キャベツ! 甘くて新鮮です!

 銅貨14枚"


 品質が100と書いてあるのを確認して、今度はトマトを見てみると、そちらも品質は100と書かれている。

 その後も色んな野菜、肉、魚、はては惣菜から魚肉ソーセージまで確認したけれど、値段差や加工の手間など違っていても全部品質は100と書かれていたため、地球産の物は全て品質100固定なのではないかと仮説を立てた。


 オリーヴァーさんの言っていた、密度は情報であり技術であり歴史である、と言うのと関係があるんじゃないのかな。

 私が家に帰れないのと同じで、密度が高いから品質という形で現れたのではないかと考える。



「王族貴族用に買取をしてもらって、目をつけられる前にここから逃げ出すしかないかなぁ。なら何日か情報を集めて、情報が集まり次第現金化して安住の地まで行こう!」



 スマホを売ってしまったため時間が分からないのが難点ではあるけれど、外はもう太陽が昇って明るくなっていた。

 窓から外を見渡せば道を歩く人や売り物らしき物を持って歩く人、屋台の準備をしている人などが居て、世界が動き始めている。



「あ、スマホもう無いしペンとメモ帳がいるね。生きてく為の情報ならルーズリーフとかのがいいかな?」



 ルーズリーフならページの移動もしやすいしルーズリーフにしよう。

 本・雑誌・文具カテゴリーから、消えるボールペン、B5の26穴バインダー、100枚入りルーズリーフ2個セット、クリップボードをカートに入れる。

 銀貨1枚銅貨50枚と出て、支払いを行うとビニール袋に入ったまま目の前に現れた。


 ルーズリーフを何枚か取り出してクリップボードに挟み、ボールペンもクリップボードに引っ掛けてベッドに置く。

 バインダーはビニール袋から出しておき、ビニール袋とルーズリーフはアイテムボックスにまとめていれておく。

 バインダーも袋から出した状態でアイテムボックスに入れる。因みに触りながら収納したい!と思うとすぐに収納出来て、物を考えながら取り出したい!と思えばアイテムボックスをわざわざ開かなくて良い事に今気付いた。



「鞄もアイテムボックスにしまって……よし! じゃあ情報集めに出発!」



 部屋から出て宿屋のカウンターに座る人の良さそうなおばちゃんに挨拶をして鍵を返す。



「おはようございます」

「あらおはよう。昨日はよく眠れたかい?」

「はい、ぐっすりでした! すみません、商売の事と近隣の国のことを調べるにはどうしたらいいですか?」

「商売なら商業ギルドに聞くのか一番さね。近隣の国は商業ギルドや魔導ギルド、冒険者ギルドに情報はあるんじゃないかい?」



 そんな事聞くなんて変わってるみたいな顔をされるので、苦笑いをするしかない。



「ごめんなさい、田舎から出て来たばかりでして……」

「なんだい、なら商業ギルドで話を聞いて地図を買うと良いよ。国を知るには冒険者に話を聞いてみるといいね。色んな国に出掛けてる人が多いから」

「何から何まですみません! あと2日くらい追加で泊まりたいんですけどいいですか?」

「何日だって居ていいよ! 田舎から出て来たなら住むとこもまだだろうし! 2日なら銀貨2枚だね」



 ポケットの中から銀貨2枚を取り出して渡すと、さっき返した鍵をまた渡される。



「連泊なら出かける時に声をかけてくれりゃシーツの交換に入るからね。鍵は無くさないようにアイテムボックスに入れといとくれよ!」



 そう言われて、鍵をすぐにアイテムボックスにしまう。無くしたら大変だし。

 慌ててしまう私を見て、おばちゃんは愉快そうに大笑いする。



「本当に田舎から出てきたばっかなんだねぇ。懐かしいよ。隣の食堂もうちがやってるから腹が減ったら食っていきなね!商業ギルドはここを出たら左に進んで、大通りに出たら時計台の方に真っ直ぐ進んで行くと二股に別れた道の真正面に立ってるからすぐわかるよ」

「本当にありがとうございます! 食堂もお昼に寄らせてもらいますね。行ってきます!」



 親切なおばちゃんと別れて、教えてもらった通りに歩き出した。

 目指すは商業ギルド!

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