第二十九話 収穫した物を食べる!前編
「チエ、眠そうだけど大丈夫か?」
少し寝不足気味なせいで太陽の光が沁みる目を、瞬きと欠伸で誤魔化しているとバージルにそう声を掛けられた。
最近、早寝に慣れてきたせいか、何時に寝ても朝は毎回同じ時間に目が覚めるようになってきている。
寝る時間がずれただけでこんなに眠くなるんだなぁ。そんな事が頭を過った。
けれど、意識が無くなる程に眠い訳では無いので、私はバージルに笑顔を向けて元気な声を出す。
「大丈夫だよ。ちょっと目が乾燥しちゃって!」
「ならいいが……。無理はするなよ」
髪に優しく触れるような手使いでバージルに頭を撫でられ、私は恥ずかしくなったので目を閉じて俯いた。何で寝不足だって気付かれたのかな。欠伸しすぎた? 目が充血してた?
どっちにしても見られてたなら恥ずかしいな。そう思いながら目を開けると、バージルの瞳と同じ色のネックレスが目に入って余計に羞恥心が湧いてくる。
昨日の私は頭でもおかしくなっていたんだろうか。絶対恥ずかしくなるに決まってるのに。戻れるなら昨日に戻って、自分自身の目を覚まさせたい。
でも、それは不可能な事なので、羞恥心を押し殺して顔を上げた。
変な顔になってないといいな……! 心の中でそう願いながら話を続ける。
「バージルも野菜の収穫手伝ってくれるんだね」
「ああ、やった事はないけどな。グレンが教えてくれるらしいからやってみようかと思ってな」
「そっか、頑張ろうね!」
「そうだな、頑張ろう」
畑の前で1人落ち着きなくソワソワしてしまう。
ジェラルドもバージルも、メロディちゃんやテオくんですら落ち着いてるのにな。
自分で育てた物を美味しく食べるなんて、気軽には出来ない初めての経験なので、つい気持ちが弾んでしまうを自分でも持て余す状態になっている。
因みにケイタさんは、昨日の負傷で午前中は寝ているとの事だった。
バージルとジェラルドに殴られてたあれの事だと思う。
落ち着くってどうやるんだっけ。取り敢えず深呼吸でもしてみようかな。
そう思って大きく息を吸い込んだところで、グレンに声を掛けられた。
「チエ、鋏と木箱出してくれっか?」
「ここに出しちゃってもいい?」
「おう、構わねぇぞ」
既にサイバーモールで購入してあった木箱と麻袋を大量に取り出した後、野菜の収穫にオススメ! と、書かれていた剪定鋏と、収穫用包丁、鎌、芋掘り用フォークを取り出して、木箱の上に並べて行く。
今回、10ヶ所の畑には、キャベツ、アスパラガス、レタス、ブロッコリー、タマネギ、カブ、ジャガイモ、ニンジン、イチゴ、小麦が植えられている。
開花の手のお陰で、季節なんてあってないような扱いらいしいので、よく使う野菜を中心に一応春が旬の野菜を植えてみた。貯蔵庫のお陰でこれで来年まで持つというのでとても不思議な気持ちになる。
スーパーとかで買い物する時は、旬だって言われてもそんな季節なんだな、くらいにしか感じていなかったけど、自分で育ててみると1ヵ月でこの大変さだから、生産者の人達にお礼を言って回りたくなった。
年中買えるように育ててくれて、ありがとう……。
小麦だけは乾燥させた後に、グレンが製粉作業をしてくれるとの事だったので、今度やり方を教えて貰おう。話を聞く分には全粒粉に近い感じになるのかな? と、予想している。
「んじゃ、収穫すっか。メロディとテオ、ジェラルド、バージルはジャガイモとタマネギ、カブと、あとニンジンを掘ってくれ。やり方は分かるか?」
「メロ、お家でもやってたから大丈夫だよ!」
「ぼくもバージル兄ちゃんとジェラルド兄ちゃんに教えてあげるね!」
「頼もしいな。よろしくな」
「んじゃ頼むわ。ちいせぇのは家畜の飼料か畑の肥やしにすっから避けといてくれ」
「はーい!」
「まかせて!」
元気いっぱいに返事をするメロディちゃんとテオくんに、気持ちがホッコリとした。
結構な量を4人で収穫するみたいだけど大丈夫なのかな……。残り6種類は私とグレンしか居ないから配分もおかしい気がするけど……。
「んで、チエは何が収穫してぇんだ?」
「うーん、収穫してみたい物かぁ……」
急にグレンからそう尋ねられて、私は考え込むように腕を組む。
収穫の仕方自体が分からないので、野菜を傷めちゃうといけないし、簡単な物がいいかな? でも、私が簡単なのだとグレンの負担が大きくなっちゃうんじゃないかな?
どうするか決めあぐねていると、メロディちゃんが助け船を出してくれた。
「メロね、チエ姉ちゃんはイチゴがいいと思うのよ」
「そうなの?」
「うん、チエ姉ちゃん可愛いからイチゴがいいと思うの!」
「んだな。そこまで難しくないしな」
「ピィ!」
理由になってない理由を述べられたけど、グレンも納得している。
今のは、初心者をメロディちゃんなりに優しく言ってくれたんだろうか……。
私の足元をグルグル回って喜んでいるプルメリア。これは何に対しての喜びなんだろう。まだ練度が足りないのか、いまいち分からない。
でも、私イチゴの収穫なんてした事あったかな? と思い返して、両親が生きていた頃にイチゴ狩りに行った事を思い出した。あの時なんて言われたっけ。ヘタの少し上から切り離してねって言われたんだったかな。
「ヘタの少し上を切って収穫すればいいのかな?」
「おう、知ってんなら問題ねぇな。イチゴはすぐ潰れっから木箱じゃねぇ方がいい」
「じゃあ重ねて置けるコンテナに入れておくね」
ヘレトピアのイチゴは、酸味の方が強いらしくて積極的に育てられてないせいか、最初植えると言った時にグレンに変な顔をされた。なので、日本産のイチゴを食べてもらうと、グレンは目を見開きながらイチゴを次々口に放り込むと、すごい早さでイチゴ賛成派にまわった。
色と見た目がいいので、スイーツ何かには使われる事はあるらしいけども。
サイバーモールからコンテナを購入して、積み重ねて置いておく。
たくさんは持てないので、1個ずつ運ぶようにするつもりだ。転んで潰したら立ち直れない。
このイチゴで何を作ろうかな。ショートケーキ? イチゴのレアチーズケーキ? イチゴジャムも作って焼きたてトーストに塗ってもいいし、やりたい事は次々に浮かんでくる。
「んで、俺はキャベツから収穫してっから、手が空いた奴から手伝ってくれ」
「分かった! 頑張るね!」
「おう。んじゃ収穫入ってくれ」
グレンのその言葉に、各々担当する野菜の元に向かう。
バージル達は最初にじゃがいもを収穫するらしい。
芋掘り用フォークを使って、梃子の原理でジャガイモを掘りやすいようにする為か、土を柔らかくしているメロディちゃん。感心しながらバージルとジェラルドは見ている。私も思わず拍手をしたくなった。
因みに、男爵イモ、メークイン、インカのめざめの3種類を植えてある。
これなら、コロッケから煮物、マッシュポテト、更にはフライドポテトまで完璧に作れる!
インカのめざめは長期保存に向かないらしいけど、貯蔵庫のお陰で1年も持たせる事が出来るので、色んな料理に使いたいなぁ。
グレンは木箱を2つ抱えて畑に入ると、開いてしまっている葉を何枚か避けて、キャベツを傾けた後に包丁でさっくりと芯から切り離すと、どんどん木箱に詰めて行ってる。動きに全く無駄がない。
あれがプロの技なんだ……!
私も見てるだけじゃなくて、イチゴの収穫をしないと……。
コンテナを抱えてイチゴに近付くと、ヘタまで赤くなっているイチゴをどんどんコンテナの中に入れて行く。ちょいちょいプルメリアがつまみ食いをしているのは見ないふりをした。
昔イチゴ狩りに行った時、1株に対してこんなにイチゴは実っていただろうか……。
1株に生育途中の物も含めて、30~40程のイチゴが実っていた。おかしいな、昨日も摘花したんだけどな……。
これが開花の手の能力なのかな。物凄い量になりそうだけど。
出だしから若干挫けそうになったけど、構わずイチゴを摘んでいく。
1つ、2つと積みあがっていくコンテナとイチゴ相手に、痛んでないか、虫がついてないかを確認する作業は、想像以上に大変だった。
開花の手のお陰か、イチゴの大きさは大体均一だったけれど、たまに二股イチゴやタコのような8股(?)イチゴを見かけて、私は思わず笑みをこぼす。
こういう形の物はスーパーで売ってないから、余計自分で作った感じがしたからだ。
「やっと半分……」
「ピィ! ピッピィ!」
「うん、頑張る……頑張るよプルメリア……」
私がイチゴを半分収穫している間に、グレンはアスパラとブロッコリーの収穫を終えていて、今からレタスに取り掛かろうとしていた。
作業が早すぎない? 慣れるとそんなに早くなるの?
グレンの有能さにびっくりして周りを見渡すと、バージル、ジェラルド、メロディちゃん、テオくんは二手に分かれてタマネギとニンジンの収穫を始めていた。
あれ、私だけめちゃくちゃ遅れてるのでは……!?
もうちょっとスピードを上げようと意気込んでイチゴに向き合うけれど、私がイチゴの収穫を終える頃にはバージル達はカブの収穫も終えていて、グレンは小麦の収穫を始めていた。
コンバインなんて無いから、小麦を掴んで鎌で切る。その単調な作業を繰り返しているのが凄い。
小麦はたくさんの実がなっていて、重そうにしなっている。
作業を終えたばかりなのに、メロディちゃんは小麦の収穫を手伝い始めていて、テオくんは刃物は駄目! とメロディちゃんに強く言われたので、刈られた小麦を運ぶ仕事をしていた。
木箱や麻袋を隅の方へと運んだジェラルドとバージルは、汗だくの私に気付いて傍に来てくれる。
「チエさんお疲れ様です。1人で大変だったでしょう?」
「4人でも大変だったからな。チエ、鼻に泥がついてるぞ」
心配して声を掛けてくれる事を嬉しく思っていると、バージルが親指で私の鼻を何度か優しく撫でた。
泥を落とそうとするその手の動きに、思わず身体が硬直してしまう。
バージルにそんな意図は無いのに、私って意識しすぎなんじゃないのかな……!
平常心、と自分に言い聞かせながら、私は返事をする。
「あ……ありがとう。でも、その言葉は私よりもグレンの方がふさわしいかもしれないね……」
「僕達が4人で4種類収穫してる間に1人で4種類収穫していますね……」
「流石だな。俺達が気軽に食ってる物は、こうやって作られてるんだな」
3人でグレンの動きに感心していると、小麦を刈っていたグレンが私に気付いたのか、顔を上げて私を呼んだ。
「チエ!」
「どうしたのグレン」
「腹減った!」
「もうそんな時間!?」
時計を見ると11時半になっていたので、少し慌てる。朝からイチゴを収穫するだけで、どれだけの時間使ってるの私……!
今からご飯作るとなると、さっと作れる物の方がいいんだろうか。
でも、この収穫した野菜は太陽の下に置いたままでいいのかな。一回グレンに確認しないと。
せっかく収穫したのに、悪くなっちゃったら嫌だしね。
「じゃあ作ってくるね! あ、でも先に野菜とかしまった方がいいのかな……」
「僕とバージルで貯蔵庫に運びますから、チエさんは食事をお願いしても良いですか?」
「ああ、そうだな。プルメリア、ケイタがチエに何かしたら噛んでいいからな」
「ピィ!」
「ケイタさんにも相手を選ぶ権利はあると思うけど……。じゃあお願いね」
バージルの言葉に、思わず苦笑いをする私を気にする事もなく、プルメリアは元気な返事をしていた。
野菜を貯蔵庫にしまってくれるなら、後はお願いして一度家に戻らなくちゃ。
私は急いで家まで走り出す。プルメリアが前を進んでいて、私が付いてきているか何度も振り返って確認してくるのが、可愛いけど辛い。足が遅くてごめんね……!
玄関を開けてリビングに入ると、頬に湿布を貼ったケイタさんがソファで寝転んでいた。
起きてはいるようで、私とプルメリアに気付くと起き上がって伸びをする。
「ケイタさんおはよう、いや、こんにちは、かな。ご飯今から作るからちょっと待ってね」
「チエさんおはよ。俺カルボナーラが食べたい」
「カルボナーラですね、いいですよ。怪我は大丈夫ですか?」
「肉体より心が傷付いてるだけだから……大丈夫……ぐすっ」
「ピィ!」
「いってぇ!? なんで!?」
悲しそうな顔で泣き真似をするケイタさんの足の指に、溜息を吐いたプルメリアが噛みつく。
血は出ていないけれど、若干赤くなっていて痛そうだ。コントのような流れを見て笑ってしまう。
プルメリアの顔を掴んで、何で俺だけ……と、呟いているケイタさん。プルメリアは気にする事もなくケイタさんを押し倒して、ケイタさんの上で寝転んでくつろぎ始めた。
あれは、抑え込んでるのかな……。バージルの行った事ちゃんと守ってるんだ……。
ケイタさんも、負けじとプルメリアに抱き着いてるので嫌では無さそうだし、放っておこう。
そう思ってキッチンに向かう。キッチンで冷蔵庫の中を確認する。生クリームと卵とベーコンとパスタとチーズが無いのかな。ほうれん草とニンニクはあるし、買わなくて大丈夫。後はお好みだけど温泉卵かな? とりあえず人数分買ってしまおうとサイバーモールを開いた。
市販品のパスタソースの方が簡単だけど、自分で作った方が濃厚で美味しいので私はいつも自作する。
購入した商品を袋から取り出して邪魔にならないところに置いておく。
「待って! プルメリア待って!」
「ピィ!!」
「ごめんって! やめて!」
何だろう、と思ってソファの方を覗き込むと、プルメリアの尻尾を掴んでいたケイタさんが、プルメリアに顔をぐりぐりと踏まれていた。
どんな遊び方なんだろう。私のプルメリアがどんどん逞しくなっていく……。
悲しみを心に秘めながら、ベーコンを食べやすい大きさに切っていく。私はカリカリになるまで炒めるので、少し厚めのベーコンの方が好きだったりする。今回も少し厚めに切っていった。
ボウルに卵黄、塩、ブラックペッパー、パルミジャーノとペコリーノを同量削り入れて混ぜておく。最後に使うので、邪魔にならないところに避けておいた。
次に、ニンニクを2欠片取り出して、皮を剥いて包丁の腹で潰す。
フライパンにオリーブオイルをたっぷり入れて、潰したニンニクを炒めて香りづけを行う。その間にほうれん草を洗って5cm程の大きさに切ってザルにあげておいた。
オリーブオイルにニンニクの香りが移ったところで、ニンニクを取り出してベーコンを炒める。ベーコンに焼き色が着いてきた辺りで、切っておいたほうれん草もフライパンに入れて一緒に炒めていく。
炒めてる間に、パスタを茹でる為の大きめの鍋に水を入れて火にかける。
今回、パスタはフェットチーネを使うので、パスタ同士がくっつかないようにする為に、塩と一緒にオリーブオイルも入れておいた。
お湯が沸騰したらパスタを投入して、適度に優しくかき回してパスタ同士がくっつくのを予防する。
ほうれん草に火が通ってしんなりしてきたら、生クリームと顆粒コンソメで味を整えていく。
この後チーズが入ってる卵液を混ぜるので、コンソメは濃くしすぎない方がいい。ペコリーノのは甘味が強いけど塩分多めに入ってるし。濃くなりすぎたら、牛乳か豆乳、なければパスタの茹で汁で薄めておく。
味の調整が終わったら、生クリームが沸騰するまで様子を見つつ、焦がさないように適度にかき回す。
しっかり沸騰したら火を止めて、パスタの茹で上がりを確認する。しっかりとアルデンテになっているなら、湯切りをして生クリームの中に入れてしっかりとソースと絡めていく。
パスタとソースを絡めていると、玄関が開いた音がして皆が戻って来た。
プルメリアと揉み合ってるうちにソファから頭だけ落ちたケイタさんと、その顔を変わらず踏み続けているプルメリアに、入ってきた皆は笑い出す。
どうしてそうなったか分かんないもんね……。
バージルは笑いながらソファに近付くと、プルメリアをガシガシと撫でて声を掛ける。
「プルメリア、ケイタの顔が歪むから離してやってくれ」
「ピィ……」
「ちょっと! 何で不服そうなんだよ! このドS!」
「ピィ!!」
「嘘! ごめんなさい! 嘘です! プルメリア様やめて!!」
「何で、お前はいつも一言多いんだ」
余計な一言で更に強く顔を踏まれるケイタさんに、バージルが大きな溜息を吐いた。
「もうすぐご飯出来るから、皆手を洗ってね」
「はーい! メロ、机拭くね」
「ぼくはフォーク出すね!」
「なんて良い子なの……!」
ぎゅっと2人を抱きしめてしまいたいけど、今は調理の途中なので諦めるしかない。
抱きしめたい衝動を抑えながら、お皿、フォーク、コップを人数分用意すると、皆が手分けして準備を手伝ってくれる。
いいなぁ、こういうの。家族みたいだなぁ。
少し嬉しくなって笑みがこぼれた。叶わないと思っていた事が、異世界で叶ってしまった。
しっかり生クリームが絡んだパスタに、作っておいた卵液を混ぜる。手早く混ぜて、卵液が固まるのを防ぐ。早くしないと、余熱で卵がボロボロになっちゃうからね……。
これでカルボナーラは完成! あとは、ベーカリーのパンでいいかな。
人数分のお皿に盛ってから、ベーカリーまつぼっくっりでロールパンを購入した。足りなかったら惣菜パンでも買おう。全部のお皿に温泉卵を乗せてから、皆に声を掛けた。
「ご飯出来たよ」
「カルボナーラ……! 10年ぶり……!」
一番にキッチンまで飛んできたケイタさんは、カルボナーラの乗ったお皿を持つとクルクルと回りながらイスに座る。行動が早い。
皆も、自分のお皿を運んで席に着く。グレンはロールパンを一個つまみ食いしながら、自分のお皿とロールパンが乗ったお皿を運んでくれた。
本当はつまみ食いは駄目だけど、今日はいっぱい働いてたしお腹減ってたって事で見逃してあげよう。
そう考えながら、私も自分のお皿と、プルメリアの分を運んで席に着く。プルメリアの分はそのまま床に置くと、お腹がすいていたのかプルメリアは一気に食べ始めた。
「頂きます!!」
「はい、召し上がれ」
「美味しい! これなぁに? トロトロで美味しいね!」
「これは、チーズを使った料理だよ。カルボナーラっていうの」
「チーズ!? ぼくチーズ初めて食べるよ!」
「チーズも塩も胡椒も高級品ですしね。でもすごく濃厚で美味しいです……!」
「うんめぇ!! 口の中で甘さと風味が広がってくな……」
「ああ、これは美味いな! どれだけでも食えそうだ」
子供達にも食べやすいように、生クリームもいれて正解だったなぁ。
生クリーム無しだと、ブラックペッパーの辛みが結構来るしね。スパイシーなのが好きな人ならない方が好みかもしれないけど。
自分でもぱくりと口を開けてパスタを噛む。
うん、しっかりとアルデンテ! 良かった!
もぐもぐと咀嚼していると、すごい勢いでパスタを食べてるグレンが口を開く。
「チエ、今日の晩飯採れたモンが食いてぇ」
「今日採れた物かぁ、分かった! いいよ」
「じゃあ、僕は午後からボアでも獲ってきますね。夕食に使えるように解体もします」
「お、なら俺もついて行こうかな。手は多い方がいいだろ?」
「ええ、お願いします。あ、ケイタさんは要りません」
「どうして……!」
理解できない! といった顔をするケイタさん。ジェラルドはまた何かやらかされるのが嫌なんだろうなぁと思って苦笑いしていると、頭を抱えたバージルがケイタさんに声を掛けた。
「自分の胸に手を当てて聞いてみたらいいんじゃないか」
「…………だめだ、俺のピュアな鼓動しか聞こえない」
「東の方にホーンラビットやボア系統の魔物が多く生息しているので、色々貯蔵しておきたいですね」
「そうだな、腐らないから獲れる時に獲った方がいいかも知れないな」
「ねぇ、無視しないで……?」
ケイタさんを無視した2人は、構わず何を獲るかの相談をしている。
いじけているのか、ケイタさんは2人に背を向けて床に座り込んだ。
「いいよいいよ、俺ァ1人で海でも見てくるからさ……」
「じゃあ、メロはご飯の準備手伝うね!」
「ぼくは、グレン兄ちゃんと小麦をだっこくするね!」
「ピィ!」
「プルメリアは魚獲って来るってよ」
「ねぇ、グレンは何でプルメリアの言ってる事が分かるの……?」
グレンがプルメリアの言葉を私に伝えてくると、プルメリアはそうそう、と言いたげに頷く。
疑問に思ってグレンにそう尋ねると、パスタを食べ終えたグレンは、パンを齧ろうと大きな口を開けたまま首を捻る。
「あん? 勘だけど」
「勘なのかぁ……」
その答えに思わず口角が上がってしまう。勘でも逆にすごい。
「じゃあ、午後からは別行動だね」
「おう、頼むわ」
「メロも頑張るね!」
「美味しい物を獲ってきますね」
「ピィ!」
「チエ、大変だったら誰かに声を掛けるんだぞ」
バージルがそう言って、私の頭を撫でてきた。
嬉しいけど、恥ずかしい。でも、これってやっぱり子供扱いなのかな。34歳から見たら、24歳なんてまだ子供みたいなものなんだろうか。
少し気持ちがしぼんでしまいそうになったので、慌てて顔をあげる。
「ありがとうバージル。バージルとジェラルドも気を付けて行ってきてね」
「ありがとうございます」
「チエさん、何もしないのは流石に悪いから、皿だけは俺洗っていくわ。カルボナーラめっちゃ美味かった。ごちそうさんでした」
床に座り込んでいたケイタさんが立ち上がって、流しにお皿を片付けると、皆も食器を下げ始めた。
ちゃんとキッチンペーパーで汚れを拭き取ってから洗っているので、ケイタさんも実は家で手伝いなんかをちゃんとしてたのかもしてない。
油をそのまま流すと配管が駄目になるもんね……。
各々準備を終えて、また家から出かけて行く。
私も洗い物をケイタさんにお願いして、メロディちゃんとソファで何を作るか話し込む。
「家で作物が初めて採れた日は、ご馳走を作って皆で食べるんだよ」
「そうなんだ。だから皆色々集めてくれるんだね」
「うん! だからいっぱいご馳走作らなきゃね!」
意気込むメロディちゃんがそう教えてくれた。家でやる初収穫のパーティーみたいな物なのかな?
じゃあ、私も張り切ってご飯作らなきゃ。
メロディちゃんが収穫した物を持ってきてくれると言う事なので、お任せして私はサイバーモールと睨めっこを始める。
何を作ろうかな、こうやって人の為に何を作るか悩めるのは、嬉しい事だなぁ。
そう思いながら、色々カートに入れていった。




