第二十四話 探索
「ぜってぇおかしい、探しに行った方がいいだろ」
グレンの言葉に、私は頷いた。
朝5時25分。結局、一晩中グレンと交互に仮眠をとってジェラルドを待ったけど、朝になっても帰ってきていない。
何があったんだろう。ジェラルドが約束を破るなんて思わないので、きっと何かあったんだ。
早朝から小雨がパラつき始めたせいで、少し肌寒い。怪我でもしてるなら、きっと凍えているかもしれない。どうしよう、でもどこを探したらいいんだろう。
頭が混乱するけど、深呼吸をして落ち着こうとゆっくり息を吐きだした。
ゴブリンに襲われた?でも感知があるから囲まれる前に何とか出来るんじゃないか。
他の魔物に襲われた?可能性としてはこっちの方が高いかもしれないけど、確信がない。
怪我をしてるなら時間があまり無い。すぐに探しに行かないと。
「俺が探しに行ってくっから、チエはここで待ってろ!」
「でも人手があった方が……!」
「ダメだ! 何かあっても2人は守りきれねぇ!」
確かに、私は役に立たないけれど。
やっとゴブリンと1人で対峙出来るくらいだし、ゴブリン以外の魔物が居たら、助けに行った私がもっと危険な目に遭うかも知れない。
それでも、その言葉に簡単に頷けなかった。
グレンに言い返そうと口を開いた時に、玄関からガチャリと音がした。
ジェラルドが帰って来た!?そう思って走って玄関まで向かう。プルメリアとグレンも慌てて走り出す。
玄関には、雨に濡れたのか髪から水を滴らせる人の姿。
会いたくて仕方なかったバージルの姿があった。
「バージル!!」
「お? どうしたチエ?」
私の切羽詰まった声に、不思議そうな顔をしたバージルが首を傾げる。
全員の顔を見渡して、ジェラルドが居ない事に気付いたのか、少し眉を顰めた。
「ジェラルドは? どうした?」
「ジェラルドが帰って来ないの!!」
「どう言う事だ、説明してくれ。あ、その前にケイタも中に入れてやってくれないか?」
「へ? ケイタさん? あ、うん」
開いたままの玄関から外を見ると、雨の中寒そうに門の前に立っている男性が1人。
黒髪の短髪、黒目、日本人特有の平ぺったい顔。あれが噂のケイタさんか……。
サイバーモールを起動して、カメラでケイタさんを撮影して権限を渡す。
その間に、グレンはタオルを取りに行っていたのか、バージルにタオルを投げ渡した。
プルメリアは久しぶりのバージルが嬉しいのか、濡れるのも構わずに足にすり寄っている。
「ケイタ、もう入れるぞ!」
「おー! ありがとうチエさん! 初めまして! 俺は榊 圭太28歳! 北海道出身の独身! 趣味は「ケイタ緊急事態だ、自己紹介は後にしてくれ!」
頭をガシガシと拭きながらバージルが声を掛けると、自己紹介を始めたケイタさんが険しい顔で玄関までやってきた。
グレンはケイタさんにもタオルを投げて渡す。
「サンキュー! ツンデレグレンちゃん!」
「ああ? なんだこいつ」
「気にするな。で、ジェラルドはどうしたんだ?」
何かめちゃくちゃノリが軽い……。
そのノリに慣れているのか、全く気にする様子のないバージル。一瞬脱力しそうになりながらも、気を取り直してバージルに説明を行う。
グレンは警戒心バリバリの顔でずっとケイタさんを睨んでいた。
「昨日、闇の魔石と稼働機を買いに行くって1人でプレミリューまで出掛けたんだけど、22時には戻るって言ったのに帰って来ないの!」
「ジェラルドなら確かに1日で往復出来る距離だな……。分かった、探しに行ってくる。行くぞケイタ」
「え? 俺ジェラルドさんとやらの顔知らないんだけど?」
「身長は170cmより少し大きい。中性的で細見、茶色の短髪、種族はエルフだ」
「え、エルフって皆中性的じゃね? しかも大体細見だよね? 情報伝える気あんの?」
バージルの言葉に、困惑したような表情を浮かべるケイタさん。
行くぞ、と言ってケイタさんを引っ張るバージルに抵抗している。
何だろう、この緩さ。ジェラルドの一大事なんだけど。私がそんな事を考えてると、2人のやり取りを見ていたグレンは、腰に下げた武器を確認してから口を開いた。
「俺も行くぞ! 西にゴブリンの巣が出来てんだ。そっちの方に……」
「あらぁ、じゃあ俺がそっち行って巣の破壊ついでに探してくるわ。何か変な気配すると思ったらゴブリンキングが居るんだな。バージルとグレンは他の場所探してみてくれるか?」
「ああ?俺じゃ力不足だってか!?」
「ピュロロロロ!!」
「んな事言われてもなぁ。グレンは魔防全然無ぇべ? キングが居るならメイジも居るけど対応できんの?」
グレンを見ながらそう言うケイタさん。え、ケイタさんの鑑定はウィンドウが開かないの? なんでだろう?
そう言われたグレンは、悔しそうに唇を噛んでそっぽを向いた。図星だったらしい。
グレンがバカにされたと思ったのか、プルメリアはその場で何度も足踏みをしている。
でも今はそんな事気にしてる場合では無いので、私も口を開く。
私だって探しに行きたい。ジェラルドが心配なのに大人しく待ってるなんて嫌だ。
「私も行く!」
「だからダメだっつ「チエさんは俺の心の安寧と、バージルの淡い恋ブヘッ!!!!」
グレンの言葉を遮ったケイタさんの言葉を、バージルが拳で遮った。
ええ……。
若干その流れに引いていると、私を振り返ったバージルが、じっと見つめてくる。
私を連れて行くかどうか、見極めている気がしたので、しっかりとバージルを見つめ返した。
少しすると、バージルが折れたのか諦めたのか分からなかったけど、溜息を吐く。
「レベルも少し上がってそうだし、連れて行く。ただし……」
「無茶はしないし、勝手な事はしないし、言われた事は守るから!」
「ああ。約束だからな。ちゃんと俺の後ろに居てくれ」
そう言って私の頭を撫でるバージル。何か久しぶりだな、恥ずかしいけど嬉しいな。
ジェラルドが見つかったら、また色々話したいな。
私がそう思ってバージルを見ていると、バージルの後ろではケイタさんが驚愕の表情を浮かべていた。
「えバージルきもい優しい。誰だよお前」
「俺はいつでも優しいつもりだが?」
「ヒエッ! ごめんなさいバージル様調子乗ってすんませんっした!」
ケイタさんがバージルにペコペコ頭を下げていると、今まで我慢してたであろうグレンが口を開く。
「なぁ、こいつうぜぇから埋めようぜ」
「ピィ!」
「気持ちは分かるがいつもはもう少し静かなんだ……。見逃してやってくれ」
「10年振りに米と味噌と醤油を口にした俺の気持ちなんて、どうせ誰にもわっかんねぇんだわ……」
「そうだな。片道2週間掛かる筈の行程を1週間でぶっちぎってくるくらいだからな……」
遠い目をするバージルに、大変だったんだろうなぁと同情する。
けど、結構な量を渡した筈だけど、もうなくな無くなっちゃったんだろうか?
そう考えて、今はそんな事気にしている場合じゃないと頭を振る
アイテムボックスから空気銃を取り出して背中に背負うと、それが何か分かったのかケイタさんがぎょっとした。
多分、部類としてはドン引きの顔だと思う。
「え、チエさん大人しそうな顔してえぐい武器使うね……?」
「あ、いえ。その、ごめんなさい。私もちょっとファンタジーからは遠い武器だと思うんですけど……」
「いや、そうじゃねぇわ。俺そんな心配してんじゃなくて……」
ケイタさんがそこまで言いかけた所で、バージルが全員に声をかけた。
「話は後だ。ケイタは単独でゴブリンの巣に向かってくれ。グレンとプルメリアは東、俺とチエは中央。見つかっても見つからなくても3時間後には魔導昇降機まで集合。何か質問は?」
「ねぇな。頼んだぞバージル」
「了解、まぁ適当に処理してくるわ。何かあれば空に炸裂魔法撃つからよろしく。いつもの通り3回は救援要請だからな」
「あん? 3回ってなんだよ」
「空に3回赤い火の玉が上がったら、助けに来てくれって事!」
「ピィ!!」
「皆お願いします!」
全員で時計の確認を行っている間に、サイバーモールでタオル、合羽、長靴、救急セット、飲み物と食べ物を買って全員に渡せるように準備しておいた。
怪我してるかも知れない、無事でもずっとご飯を食べてないならお腹がすいてるかもしれない。
そう思ったからだ。
もしジェラルドが帰って来た時の為に、グレンが玄関に書置きを残してくれた。
魔導昇降機で崖を上った後は、3チームに分かれて行動する。
私はバージルと2人で中央、川沿いを中心に探索する事になっているので、バージルの後ろを離れないように、空気銃を両手で抱えながら歩いていた。
足元がぬかるんで少し歩きにくいけど、長靴のお陰か滑って転ぶような事は無い。
少し歩くと、川から少し離れた場所に突き刺さっているジェラルドの矢を発見した。
スチール製の矢だ、ジェラルド以外に使ってる人は居ない筈。
それに、ジェラルドは矢をいつも回収しているから、刺さったまま放置されてるとは考え難い。
矢を木から引き抜いたバージルは、少し考え込んでいる。
「雨のせいで木の乾き具合が分からないな。ここを通っては居るんだろうが……。雨さえ無ければな……」
「そうだよね、雨が無ければ魔物の足跡とかが見えやすいって言ってたし……」
「矢は東から西に射られてるな……。東へ逃げたのか、何かを追って西へ行ったのか……」
周りをキョロキョロと見渡しながら、バージルはそう呟いた。
そうか、逃げる以外にも、ジェラルドが何かを追っていった可能性があるんだ。
でも、どんどん強くなっていく雨が、状況を分からなくしてしまう。
「ジェラルドは斥候だから、形跡は急いで居なければ残す事はないしな。どうしたもんか……」
しゃがみ込んで膝を付き、濡れるのも構わずに痕跡を探すバージル。
手伝おうと私もしゃがみ込もうとすると、西からドンドンドン!と3回破裂音と、赤い火の玉が3つ空に浮かんでいるのが見えた。
「ケイタの炸裂魔法だな。しかも救援要請だ」
「何か見つかったのかな!? 行かないと……!」
「ああ。絶対離れるんじゃないぞ!」
駆けだすバージルの後ろを必死で付いて行く。
私を置いて行かないように気を付けて走ってくれてはいるけど、正直足手纏いにしかなっていないのではないか。
先にバージルだけ行ってもらった方がいいんじゃないのかな。
もし迷っても、崖まで出られれば1人でも家に戻れる。
そう考えて口を開こうとすると、バージルが大きな声で叫んだ。
「チエもうすぐだ! 頑張れ! 置いていかないから走ってくれ!」
すぐにでもケイタさんのところに行きたい筈なのに、バージルはそう言って私を気遣ってくれる。
情けない事を考えていた自分がみっともなくて、格好悪くて、私も大きな声で返事をした。
「ありがとう! 絶対、離れないから!!」
20分以上必死に走り続けて、足が縺れそうになる頃に、森の中に開けた場所が見えてくる。
運動場程ありそうなぐらい広いそこには、掘っ立て小屋のような建物が立ち並んでいて、その中央でケイタさんは1人でゴブリン相手に戦っていた。
既に倒れている分よりも、まだ立っている数の方が多い。
それに、戦っているゴブリンの後ろには、二足歩行の豚が更に集まってきていた。
「チエ止まれ!! 木の上に登って隠れてくれ!!」
「え、なん、どうしたの?」
「オークだ! ゴブリンはオークに働かされていたんだ!」
バージルは木の陰に私を隠すと、剣を抜きながら説明してくれる。
「オークはCランクの魔物なんだ。人や獣人、エルフの女に子供を産ませて繁殖する。頼む、隠れててくれ」
「う、うん……!」
その言葉に、背筋が冷えて鳥肌が立った。絶対嫌だ。
慌ててサイバーモールで脚立を購入して、木に立て掛けて上に登る。
脚立はアイテムボックスに回収してしまえば、オークが登ってくる事は出来ないからだ。
私が木に登ったのを見届けると、バージルも盾を構えて突進していく。
ゴブリンに囲まれてたケイタさんは、少しほっとしたのか顔を綻ばせた。
「バージルありがとな! この辺一帯消し炭にしていいなら余裕なんだけどさ! ジェラルドさんとやらが居るといけないと思って!」
「そうだろうな! ドラゴンブレス、吐けるのに救難信号なんて、撃ってくるから、なっ!」
ケイタさんの目の前に居たゴブリン数匹を、バージルは盾で殴って薙ぎ倒す。
その隙にケイタさんは、槍でバージルの後ろを狙っていたゴブリンを突き刺した。
ドラゴンブレスって、ドラゴンが吐くからドラゴンブレスなのでは無いかと疑問に思ったけど、そう言えばケイタさんは食べた魔物のスキルを使えるようになるんだったな、と思い出して納得する。
私が1人で納得している間にも、バージルが敵を引き付けて、ケイタさんが魔法や槍を使ってゴブリンを倒していく。
少しずつゴブリンの数が減っていくと、劣勢なのが気に入らないのかオークが叫びながら地団駄を踏み出した。
結構な数のオークによる地団駄で、地面が少し揺れているような気がする。
何も出来ずに木の上からそれを眺めていると、血まみれでボロボロになったゴブリンの横に座っていたゴブリンが立ち上がったのに気付いた。
なんであのゴブリンは血まみれになっているんだろう。他のゴブリンに比べると、すごく大きいのに。
嫌な予感がしたので、枝の上に腹ばいになって銃を構える。
立ち上がったゴブリンは、木の棒を頭上に掲げて何かを唱え始めた。
それに気付いたバージルが、ゴブリンの首を剣で跳ね飛ばしながら声を上げる。
「ケイタ! メイジが居るぞ!」
「うお! 死んでんのはゴブリンキングか! オークに殺されたんだな!」
メイジ! 魔法を撃つ気なんだ!
そう思ったので、立ってるゴブリンの眼に狙いを定めて、迷いなく引き金を引く。
プシュン! と音がして、狙い通りの軌道で飛んだ弾はメイジの眼を貫通した後、木に着弾した。
少しの間ぐらついた後、メイジはひっくり返って動かなくなる。
良かった、バージルを守れたんだ!
そう思って安心すると、ケイタさんが私に気付いたのか感謝の言葉を大声で叫んだ。
「チエさんありがとう!! さすがバージルのブヘッ!!」
「余計なお喋りは良いから目の前に集中しろ!」
「戦闘中に仲間を剣の柄でどつくとかある? ねぇ、そんな事ある?」
文句を言いながらも、ケイタさんが何かを呟くと氷の刃が空中に10本現れる。
投げるような動作に合わせて動き出したそれは、ゴブリンの胴体を突き抜けて、地面に突き刺さると破裂して砕けていく。
その砕けた氷で、他のゴブリンも裂傷を負って悲鳴をあげてのたうち回っている。
何十匹というゴブリンが地面に伏せた頃、地団駄を踏んでいたオークの一部が動き出した。
「プギィィィィィィ!!!!!!!!」
「ああ!? 何でオークが居んだよ!?」
下から聞こえた声に地面を見ると、泥だらけのグレンとプルメリアが居た。
合羽がボロボロになっているけど、怪我は無さそうだ。
「グ、グレン! プルメリア!」
「あん? チエ何でそんなとこ居んだよ」
「バージルが上に居ろって……」
「ああ、そうか。オークだしな……」
「ピィ!」
「ジェラルド見つかった?」
「いや、見付からねぇけど、魔法が救援要請なんだろ?」
埋めたいと言っていた割に、しっかりと助けに来たらしいグレンは、武器を構えると走り出した。
プルメリアもその後ろから駆けて行き、大きな声で鳴き声を上げる。
「ピュロロロロロ!!!」
「ピギィィ!!!!!」
「プルメリアにびびってんのか、よっ!!」
プルメリアの声に、走り出したオークの中の数匹が怯えた様子で足が止まる。
そのせいで、隊列が乱れぶつかり合って転んだオークにグレンがナイフを突き立てていく。
「グレン! プルメリア!」
「オークやってっから終わったらこっちも頼む!」
「分かった、すぐに行く!!」
オークの群れをグレンとプルメリアが足止めしている間に、バージルとケイタさんがゴブリンを殲滅していく。
乱戦になってしまうと、命中率が高くない私は誤射の可能性がある為に何も手出しが出来ず、木の上で皆を見守っている事しか出来ない。
最後のゴブリンをケイタさんが突き刺した後、バージルとケイタさんは走ってグレンとプルメリアの援護に向かう。2人共息が乱れているようで、大きく肩で呼吸をしているけど、まだ足取りはしっかりしていた。
一部の先走ったオークは殲滅出来たけど、森を背後に100匹近いオークがまだ生きている。
その数にげんなりしたのか、溜息を吐いたケイタさんが口を開いた。
「ちょっとばかり森が燃えるけど構わないかな?」
「雨が降ってるし大丈夫じゃないのか」
「投げやりだなぁ。まぁいいけど」
槍を地面に突き刺したケイタさんは口を大きく開く。
え、何するんだろう?
「グレン、プルメリア! ケイタの後ろに!」
バージルのその言葉に2人が飛び退くと、ケイタさんの口から炎が噴射された。
青い炎は一瞬でオークを焼き殺していく。
と、言うよりかはもう消し炭になっていて何か判別出来ない物になっている。
え、あれがドラゴンブレス……?呆然とそれを見る、私とグレンとプルメリア。
ケイタさんは顔を振って炎を吐き切ると、何度か咳込んでいた。
時間にしてわずか数十秒で、オークの群れと森の木の一部が消し炭になるなんて。
「よし、ジェラルドさんとやらを探そう」
「チエ、もう少しそこに居てくれ! まだオークが居ると困るからな」
「う、うん……」
「やばいモン見せたくないから降りてくんなって言わないバージルの優しさよ……」
「うるさいな、早くジェラルドを探せ」
最後ケイタさんと何を喋ってるのかまでは聞き取れなかったけど、バージルの指示通り木の上で待つ。
探し終えた掘っ立て小屋は、ケイタさんが一つずつドラゴンブレスで焼き払っていた。
残しておくと、またゴブリンやオークが住み着いてしまうらしい。
「女の死体と食い散らかされた男の死体しか無いな。ジェラルドさんとやらは大丈夫か?」
「腹に矢傷があるんだが、見当たらないな」
「って事は、ここには居ねぇって事か?」
「昨日攫われたならここまで腐敗はしないだろうし……外れだな」
「ピィ!」
「ああ、良かったなプルメリア」
全ての小屋を焼き払った後、木から降りても良いとの事で脚立を使って木から降りる。
周りを見渡してもオークの姿は無かったので、一息付く。
だけど、ジェラルドはどこに行ってしまったんだろう……。そう思いながら皆に近付くと、バージルにそっと頭を撫でられた。
「ここにジェラルドは居ないみたいだな。他を探そう」
「うん、早く見付けないと……」
「一旦、家に戻った方がいいと思うべ。雨が強くなってきた。二重遭難の可能性がある」
「……でもよ」
「一度家に戻って作戦会議をしよう。体調が万全で無ければ俺達も危ないからな」
渋るグレンを連れて、全員で魔導昇降機に向かう。
皆、歩きながらジェラルドは居ないかと周りを見渡しているが、姿は見えない。
どこに行っちゃったんだろう。
そう思いながら魔導昇降機が見えるところまで歩いていると、魔導昇降機の前に座り込んで肩で息をしている人が居た。
ジェラルドだ!!
気付いた瞬間、全員で走り出した。
ジェラルドは両手で、10歳くらいの子供を2人抱えたまま、魔導昇降機の前で膝をついている。
子供の意識はなく、顔が真っ赤になっていた。
「ジェラルド!!」
「チエさん……ごめんなさい、この子達を……」
そう呟いて倒れ込んだジェラルドを、グレンが抱き留めた。子供も、ジェラルドもすごい熱だ。すぐに家で休ませないと。
ゆっくりと動く魔導昇降機に全員もどかしさを感じているのか落ち着きがない。
グレンがジェラルドを抱えて、バージルとケイタさんが子供を1人ずつ抱えている。
早く、お願い早く下に着いて。
下に着いた途端、全員で家まで走り出す。
何があったか分からないけど、絶対に助けなければ。そう思って、暖炉に火を起こした。




