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第十八話 秘境に畑を作る後編

「こんな感じでいいかな! 皆お疲れ様!」



 畑へ苗木を植え終わったタイミングで皆に声を掛けた。

 そこまで疲れた様子のない3人は、その言葉に道具を置くと伸びをしたりしている。

 まだお昼まで時間に余裕があるけど、一回休憩を入れた方がいいかなと思い、3人に近づいて行く。



「休憩入れてから次の作業にする?」

「そうですね、一回休んでもいいと思います」

「そうだな。あー、農作業って結構腰に来るな……」

「屈んだり中腰が多いしかんな。休憩すっか」



 あれ、そういえばプルメリアはどこに行ったんだろう。

 そう思って後ろを振り返ると、川の浅瀬で仁王立ちになったプルメリアを見つけた。

 何で川の中で直立不動になってるんだろう? 疑問に思って近づこうとすると、見えないくらいの速さで右前足を使い何かを川の外に跳ね飛ばしたので、驚いて飛ばされた物に近づいて行く。

 少し近づくと、ビチビチと音を立てて跳ねまわる魚が落ちていたため、びっくりしてプルメリアを見る。

 既に5匹同じ魚も居て、陸の上で力なく動いているので驚いた。

 しかも50cmくらいはありそうな大きな魚だ。この6匹全部プルメリアが獲ったんだ! すごい!

 びしょ濡れのまま自信満々で私を見ているプルメリアに、狩る側の片鱗を見た気がする。



「お、レインボートラウトか。普通のより大きいな」

「海が近いせいですかね? 外敵が居ないのかもしれませんけど」

「どっちもじゃねぇのか。相当でかいぞ」

「プルメリアが獲ったの? すごいね!」

「ピィ!!」



 バシャバシャを音を立てて川岸に上がってくるプルメリアは、ブルルッと身震いをして水を飛ばす。

 近くにいたため、水しぶきが直撃した私は驚いて尻もちをついてしまった。



「ピィ!?」

「大丈夫、びっくりしただけだよ」



 ごめんね! と言いたげなプルメリアが寄って来たため、大丈夫だと頭を撫でる。

 プルメリアのご飯にするのかな、もう一人で食べる物を取れるなんですごいなぁ。そう思いながら撫でていると、プルメリアはせっせと私の側に魚を運んできてくれた。

 不思議に思ってプルメリアを見つめていると、6匹の魚を運び終わったプルメリアは自信満々でお座りをする。

 私達の分も獲ってくれたんだろうか。



「釣りとかジジくせぇ趣味いらねぇんじゃね?」

「うるさいですよ筋肉バカ。プルメリアすごいですね。僕達にも分けてくれるんですか?」

「ピィィ!」



 そうだよ! すごいでしょ! と言わんばかりに鳴いているプルメリア。

 バタバタと皆の足元を走り回って、すごいでしょ! 撫でて! と言わんばかりに身体をこすり付ける。水で濡れているせいで皆の足元も濡れてしまうけど、気にせずに皆プルメリアを撫でてくれた。

 グレンはしゃがみながらプルメリアを撫でている。



「すごいぞプルメリア。お前が居れば皆安心だな」

「すげぇな、えらいぞ」



 喜んで走り回るプルメリアにほっこりとした気持ちになりながら、アイテムボックスに魚をしまっていると、ジェラルドが思い出したように呟く。



「プルメリアの巣は外に作るとしても、どれくらいで成体になるんですかね」

「グリフィンを子供の時から育ててる資料なんて見た事無いしな」

「そうだね。あんまり早くても可哀想だけど、そのうち家には入らなくなるし……」

「飯食ってりゃデカくなんだろ」

「だから、それがどれくらいかって話をしてるんですよ脳筋」

「あん? だから飯食ってりゃデカくなるっつってんだろ」

「はいはい、そこまで。まぁ、外で飼うのは家の中での生活に支障が出来たらでいいんじゃないか?」



 こんだけ懐いてるしな、と呟いたバージルの言葉通り、皆が大好きな様子のプルメリアは楽しそにウロウロしている。甘やかしすぎは良くないかな、と思いながらも、可愛さにデレデレしてしまう。

 いつかプルメリアにお婿さんを……と、心の中で思い描いていると、グレンが立ち上がってみんなに声を掛けた。



「先に獣舎にすっか? 畑作んのか?」

「獣舎は橋を架けないといけないし、先に畑の方がいいかな?」

「チエ、サイバーモールがあれば橋が架けれるのか?」

「うん、アーチ状の道みたいなのがあったから架けれると思う」

「作らなくてもいいのはすごいですね。橋を架けるなんて大変な作業ですし」

「じゃ、畑作っか」



 疲れたのか草の上に横になって眠り始めたプルメリアをその場に残して、グレンはそういうと歩き出す。

 出来立ての果樹園を通りすぎて20m程で立ち止まると、周りを見渡しながら立ち止まった。

 崖と川の間を何度も往復しているので、どうしたのかと眺めていると、手招きをされたので傍による。



「日当たりもいいし、この辺でいいと思うんだけどよ、どんな畑にしてぇんだ?」

「どう、っていうと?」

「んー、とな。例えばよ、一遍に全部畑にしちまいてぇのか、区切って色々作りてぇのか」

「いきなりたくさんは厳しいよね……。グレンはどうしてたの?」

「一人で住んでたかんな、区切った畑で少量ずつ育てて、一回出来たら別のモン植えてたな」



 いまいち、それの意味が分からずに首を傾げた。

 私の頭の中にある畑は、お米とか一面同じ作物がいっぱい並んでるものしか思い浮かばないせいだ。

 自分が農業をやるつもりも無かったし、消費者としてしか分からない為、グレンに素直に伝える。



「想像がいまいち出来ない……」

「あーなんつうんだ。俺は一人だけだったからよ。2m×2mの畑を10個作ってよ、んでそこに1種類ずつ作物植えんだろ? 病気や虫の心配はスキルのお陰で無かったし」

「うん」

「んで、1月で作物が出来上がったらその畑に今度は別の10種類を植えんだ。出来たのは全部貯蔵庫で冬に備る。それを繰り返してた」

「連作障害を回避するってこと?」



 私が首を捻りながらそう尋ねると、グレンは頷いて話を続けた。

 ジェラルドとバージルも興味深そうに聞いている。



「ああ、そうだ。で、貯蔵庫に入れたモンをちょっとずつ食う」

「うん」

「けど他の奴は広い土地で小麦だけ、とかジャガイモだけ、とか作ってよ。まぁ、多少自分用に他のモン植えてたりすっけど。んで、出来上がった作物を少し残して売り払って、その金で他のモン買って貯蔵すんだ」

「なるほど……」



 作物の育て方が分からないので、何と言うのかは分からないけれど、そういうやり方もあるのか、と思った。グレンが一人暮らしで開花の手があったから出来るだけの方法なのかもしれないけど。

 きっと、同じ物をたくさん作って売ってる人達の方が圧倒的に多いんだろうなと思う。

 ただ、私もグレンを開花の手が使えるし、自分達だけで食べる分がどれくらいになるか分からないので、最初の年はグレンと同じ作戦でもいい気がする。

 3人でどれだけ世話が出来るのか不明だし、広すぎて枯らしてしまったら作物に申し訳ない。



「グレンはそのくらい作って、冬は問題なく越せたの?」

「おう。飢える事はねぇ。春に結構余るくらいだったな」

「さすが開花の手ですね。まぁ若干ボッチ向けですけど」



 ジェラルドがそう呟いていたので、少人数かつ開花の手持ち向けの方法なのかもしれない。

 普段は3人しか居ないし、グレンのやり方でいいんじゃないかな。

 そう思ったので、それで1年やってみて、何かあれば変更したいと伝える事にした。



「じゃあ、グレンのやり方で1年やってみて、途中で何かあったり、冬の間持たなかったらサイバーモール頼みで冬を越して、次の年に畑を増やしたり、別の方法に変えたりでもいいかな?」

「おう、構わねぇぞ」

「僕も異論ありません。微力ながらお手伝いしますよ」

「3人だから3倍の9m×9mぐらいでいいのかな?」

「結構余ったかんな……。減らしてもいいかもしんねぇ」



 開花の手でどれくらいの量が採れるか分からないし、初めは少なくても良いのかもしれない。

 一人だったらずっと悩んで決められなかったかもしれないな。グレンが居てくれて良かった。

 どれくらいの広さがあればいいんだろう。でも1月で野菜が作れるなら結構な収穫が見込めそうだけど。

 いつまでも悩んでいても先に進めないので、思い切って少なめからやってみよう。そう思ってグレンとジェラルドに提案する。



「じゃあ今年は5m×5mでやってみて、駄目だったら大きくしよっか」

「はい、いいですよ」

「んだな。余り過ぎても困るし」



 取り敢えず1年の畑の運用方法が決まったので、グレンの後ろに土地を購入していく。

 サイバーモールから土地を購入して、5m×5mで畑パネルを1mずつ離して設置したあと、空いた隙間に道パネルを詰めていく。最後は外周を木の柵で覆えば畑の完成だ。

 出来上がった畑を見て、私は満足気に頷く。ここから私の農民生活が始まるんだ。楽しみだなぁ。

 ニコニコしながらそれを見ていると、私の横に立ったバージルが頭を撫でてくれる。



「上手くいくといいな」

「うん!」



 種を植えるのは明日という事になったので、時間もちょうどいいしお昼ご飯にする事にした。

 その頃には濡れていたプルメリアも殆ど乾いていたので、抱き上げて家に戻る。魚を獲るので疲れたのか、抱き上げても起きる事はなく夢の世界のままだった。

 大きくなったら抱っこも出来なくなっちゃうんだろうな、と考えて、今の内にいっぱいしておこうと心に誓う。さすがに6m600kgは抱っこ出来ないし。

 小さいのも今だけなんだろうな。そう思って、これが親心か……と一人納得する。



「お昼はお魚でもいいかな?」

「そうだな、せっかく獲ってくれたしな」



 プルメリアに感謝しながら魚を食べよう。

 そう思いながらプルメリアをソファに乗せてキッチンに向かった。


 簡単な物で十分だと言われたので、虹マスのムニエルとサラダ、パンで昼食を済ませて一息つく。

 プルメリアが獲ってくれた虹マスは大きすぎてグリルに入らなかったので、1匹を4等分にして使ってあるのであと3匹残ってる。

 もちろん、魚を獲ってきたプルメリアには、捌いた1匹をそのまま渡した。

 嬉しそうに食べていたので、魚も好きなんだなぁと微笑ましい気持ちで見てしまう。



「午後からは獣舎を作るのか?」



 リビングでまったりしていたところ、バージルがそう尋ねてくる。



「そうですね、今日済ませておけば明日からすぐに使用できますし」

「ああ。明日植え付けと家畜の世話の開始でいいんじゃねぇか? チエ、紙と書くモン貸してくれ」

「はい、どうぞ」



 書くものが欲しいと言ったグレンに紙と鉛筆を渡すと、グレンは何かの見取り図を描き始める。

 慣れた手付きで何を描いているのかと見ていると、細かく指定された獣舎の見取り図だと気付く。グレンの隠れた才能に驚いていると、グレンはそれをジェラルドに手渡してから話し始めた。

 入口から窓まで設計された長方形の獣舎。そんなに大きくないけれど、横長で結構な頭数の家畜が入りそうだ。



「こんな感じで作って欲しいんだけどよ」

「……ええ、分かりました」

「あんだよ、その間は」

「いえ、バカだと思ってましたけど賢いところもあるんだなと感心していました」

「だから喧嘩売ってんのか?」



 ジェラルドの肩をグーで殴るバージル。

 お互いの事悪く言わないと生きていけないのか、じゃれあってるのか……。

 仲は悪くないと思うんだけどなぁと眺めていると、グレンが私の方を向く。何か用かと思って見つめていると、グレンが午後からの行動を説明してくれた。



「チエが橋掛けて、ジェラルドが洞窟に獣舎作ってる間によ、木伐り倒してぇから斧とノコギリが欲しい。あと金槌と釘とノミと鉋と蝶番とネジ」

「うん、いいよ。獣舎で使うの?」

「入口と窓に木枠と扉つけようかと思ってよ。夜中になんかあるといけねぇから。あと飼い葉桶と仕切りも作りてぇから伐って来るわ」

「なら俺もそっちに手伝いに入るかな。護衛もいるだろうし」



 グレンの言葉にバージルが自分もついて行くと声を掛けたので、2人ずつで分かれることになる。

 木を伐るなんて大仕事だし、飲み物もついでに渡しておこうかな。タオルはもう乾いたかな。色々考えながらサイバーモールを開く。



「分かった、じゃあ用意するね。他に欲しい物ある?」

「今んところねぇ。あ、獣舎作ったら、中全部土に変えといてくれ」

「うん、変えとくね」

「おう、頼むわ」



 頼まれた物道具と500mlのスポーツドリンクを4本を購入する。

 ビニール袋に入って届いたので、1つずつ取り出してグレンに手渡した。

 その後、外に出てタオルを確認すると乾いていたので、フェイスタオル4枚も渡しておく。

 これだけあれば流石に足りるかな? けれど心配だったため、足りない物があったらすぐ戻って欲しいと伝えると、グレンとバージルは頷いてすぐに昇降機まで向かった。

 出掛けようかと思ってプルメリアを見ると、眠そうにしていたためそのまま寝てもらう事にした。寂しくなったら外に出られるように、サンルームの窓を開けておく。



「じゃあ行きましょうか」

「うん、まずは橋からだね!」



 川にジェラルドと向かうと、サイバーモールで家の前から向こうの川岸まで土地を購入して、道を敷き詰めて橋をかける。川の上も土地を購入する事が出来た。

 生活カテゴリー内に道と同じ外観の橋があったので、川の上にそれを設置していく。

 タッチしながら上下にスライドすると、橋のアーチの高さが変えられたのでなるべく低くしておいた。

 設置するとすぐに橋が現れたので、恐る恐る橋に乗るけど、強度も問題無さそうだ。良かった。


 そのまま橋を渡ると、対岸と同じように崖まで直線に土地を購入したあと道を敷き詰めて行く。



「これで崖まではばっちり! 後はジェラルドお願いね」

「ええ、任せて下さい」



 にっこりと微笑んだジェラルドは、崖に手で触れると何かを唱える。

 触れた場所のすぐ横から崖の形が変わり始めて、どんどん奥へと広がっていく。崖の表面も歪み始めて私の腰から顔辺りまでの大きな長方形の窓枠が何個も出来ると、そのままどんどん横へと広がっていった。

 こんな風に自分で考えながら魔法が使えたら楽しいんだろうな、と思いながらそれを眺める。


 20分程掛けて微調整が終わったのかジェラルドが崖から手を離す。しっかりと作られた中は、綺麗な箱型になっていた。



「あとは崖の土地を買って、地面を土に変えれば取り敢えず完成かな」

「そうですね。そしたらバージルとグレンが戻ってくるのを待ちましょうか」



 サイバーモールを開いて土地の購入を押すと、崖の中も指定できるようで安心しながら購入する。これでここは家畜にとっても安全な場所になったんだ。

 牧草や柵の広さなんかはグレンが戻ってきたら相談しようと思い、何も触らずにそのままにしておく。

 する事が無くなってしまったため、ジェラルドと川辺に座り込んだ。

 暖かい日差しと、水が流れる音がするだけののどかな雰囲気に、お腹が満たされてることもあってか少し眠気に襲われる。


 春の陽射しだなぁ。ヘレトピアと日本も変わらないな。

 そう思いながら何度か船を漕いでいると、横からジェラルドの笑い声がした。



「疲れてるなら休んでもいいんですよ」

「大丈夫、ちょっと暖かかっただけだ」



 ウトウトされていたのを見られた恥ずかしさで、ちょっと視線を横に逸らす。

 逸らした視線の先には宙に浮かぶ花があって、何度見てもあの花は慣れそうにないなと思いながら、ジェラルドを方を向き直した。



「ねぇ、ジェラルドはフルールブランシュのどの辺りに住んでたの?」

「首都ヴィフタルから南西にあるオロルの森の村で暮らしていましたよ。フルールブランシュの中では珍しい花の咲かない木ばかりが生える森の中ですね。ここからだと徒歩で4日くらいかかります」

「結構遠いね……。お母さんに連絡取らなくて大丈夫?」

「ここでの生活が落ち着いたら連絡してみます。プレミリューまで行けば手紙も出せますしね」



 特に焦った様子もないジェラルドは、のんびりと川を眺めながらそう微笑んだ。

 そんなにのんびりしてれもいいのかな? と疑問に思って、私は話を続ける。



「心配してないかな?」

「してるかもしれませんが、奴隷商に見つかってしまうと家族まで大変な目に遭うかもしれません。僕達エルフは長命で気が長いので大丈夫ですよ」

「そっか。ごめんね変な事聞いちゃって」

「構いませんよ。ここでの生活になれたらチエさんも是非村に来てください」

「うん! 行ってみたいなぁ、どんな所なんだろ」



 ジェラルドとゆっくりした時間を過ごしていると、魔導昇降機の稼働音が響く。

 戻ってきたのかなと思って上を見上げると、大量の丸太を詰んだ魔導昇降機にバージルとグレンが乗っていた。

 私でも持てるかなぁあの丸太……。

 そう思っていると、ジェラルドが立ち上がる。



「流石にあれをチエさんに持たせる訳にはいかないので、ここで待っていて下さい」

「ごめんね、お願いします」

「ええ、では行って来ますね」



 ジェラルドはそのまま橋を渡って昇降機の方まで駆けて行く。

 もっと筋肉つけた方がいいのかな……。自分の二の腕を揉みながらそう考えていると、3人が丸太を抱えて歩いてきた。

 グレンは一人で両脇に丸太を何本も抱えていてるし、線が細い方のジェラルドですら両手で丸太を抱えている。バージルも何本も丸太を持っているし、やっぱ身体を鍛えた方がいいかも知れない。

 畜農は筋力いるらしいしなぁ、と思いながら私も立ち上がった。



「おかえりなさい」

「おう、ただいま。立派な橋じゃねぇか。すげぇな」

「ありがとう! もう丸太ない?」

「いや、まだあるから俺が取りに行ってくる。グレンは作業に入ってくれ」

「わりぃなバージル。頼むわ」



 丸太を一か所に集めたグレンにそう声を掛けると、バージルは走って魔導昇降機に向かう。

 結構な量の木材だなぁと思いながら丸太を眺めていると、グレンに声を掛けられた。



「チエ、木屑飛んだりすっから離れとけ」

「うん、分かった。離れたところで見ててもいい?」

「おう、離れてんならいいぞ」



 そう言って丸太を1本地面に転がすと、グレンはノコギリで木を切り分け始める。

 どんな物が出来るか分からずに期待しながら見ている私の横にジェラルドが並んだ。手にはグレンから渡された設計図を持っている。



「測量もせずに木を切ってますけど大丈夫なんですかね……」

「どうなんだろう? 崖に釘刺さりそうにないのにどうやって枠を作るかの方が疑問だなぁ」



 大体木を切り分け終えたグレンは、今度は木に溝を掘っていく。なんの溝だろうと思って観察していると、今度は崖を削りだす。

 そこに溝を作った木を宛がうと、金槌で叩いたり足で蹴ったりしながら木の溝と削った岩を噛ませて木枠を作っていく。



「あれ、目測でピッタリ出来るもの?」

「普通は無理ですね……。何ですかね、あの隠れた特技は」

「開花の手に道具が使いやすくなるのがあるけど、使い続けるとああいう事出来るのかな……」

「まぁ、村から離れたところに一人で住んでたみたいですし、家や家畜小屋も自分で作ってたのかもしれませんね」

「凄いね」

「ええ、凄いです」



 唖然としながら眺めていると、出入り口と窓の部分に木枠が出来上がっていく。

 粘土でも削るみたいな感じで崖を削ってるのは、開花の手のせいなのかな。道具が使いやすくなるって説明にあったし。私も終わったら邪魔にならないところを削ってみよう。



「あとは木が乾けば勝手に締まっからこれでいいな」



 満足そうにそう呟くグレン。

 一頻り満足した後、扉と窓を作り始めるグレンを、私とジェラルドはただ見つめるしかなかった。

この方法がいけるかはわからないので、ファンタジーという事で見逃して下さい。

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