第十四話 秘境への第一歩
「プルメリア、朝ご飯だよ」
餌入れにグリフィンベビー用の飼料を入れると、すごい勢いで食べ始めるプルメリア。
ガツガツと餌入れに顔を突っ込んで食べているプルメリアの背中を撫でていると、ジェラルドさんが目を覚ましたのかむくりと静かに起き上がった。
少しぼーっとした後に、餌を食べてるプルメリアと私に気付いたジェラルドさんは、立ち上がると微笑んで挨拶をしてくれる。
「おはようございますチエさん」
「ジェラルドさんおはようございます」
まだ眠っているバージルさんとグレンさんを一瞥したジェラルドさんは、私の横に屈んでプルメリアの羽を指でなぞり始めた。
「プルメリアもおはようございます」
「ピィ」
「チエさんはこれから朝食の準備ですか?」
「はい! ジェラルドさんは何か食べたい物はありますか?」
「食べたい物ですか? チエさんのご飯は何でも美味しいので迷いますね」
「ありがとうございます!」
自分の作った物を褒められるのは、やっぱりとても嬉しいのでついにやけてしまう。
ニヤニヤしながらプルメリアを撫でていると、ジェラルドさんが立ち上がりながら話を続ける。
「前にチエさんが言っていたハンバーガーと言うのが食べてみたいですね」
「ハンバーガーですね! いいですよ、作ります」
「僕も調理を手伝っても良いですか? あまりお役には立てませんけど」
「いいんですか? なら一緒に作りましょう!」
調理を手伝いたいと言ってくれたジェラルドさんと一緒にキッチンに入っていく。
ここの部屋には魔導コンロが設置されていたので、遠慮なく使わせてもらおう。
ハンバーガーの具材になるものをサイバーモールで買って、調味料や調理器具を出していく。
プルメリアも、キッチンの入り口で座りこむと興味深そうにこちらを見ていた。
「最初にハンバーグを仕込んでいきましょうか」
「僕は何をしたらいいです? 包丁は皮むきや切るくらいなら問題なく使えると思いますが」
「じゃあ、タマネギの皮を剥いてみじん切りにしてもらってもいいですか?」
「わかりました」
今回は次にハンバーグがいつでも食べられるように、多めに作ろうと材料を多く用意したので、包丁、まな板、タマネギを5個とボウルを渡す。
特に何も説明しないでも、ジェラルドさんは慣れた手付きでタマネギを刻んでいたのに少し驚いたけれど、お母さんが病気だったと言っていたのを思い出して、ジェラルドさんが全部の家事をしていたのかな、と考えた。
ジェラルドさんがタマネギを切り刻んでる間に、私はカボチャスープを作る事にして準備を行う。
電子レンジが無いので、適度な大きさでぶつ切りにしたカボチャをフライパンに入れて少量の水と一緒に蓋をして煮込んでおく。
その間にスープ用の鍋に牛乳、生クリームをいれて弱火で温めながらカボチャを見る。
お箸で崩れるくらいになったところで、フライパンから取り出すとマッシャーを使ってカボチャを潰しておいた。
「チエさん終わりました」
「はい! じゃあタネをこねていきましょう」
ジェラルドさんにビニール手袋をつけてもらって、大きなボウルに合挽き肉を1.5kg、みじん切りにしたタマネギ、パン粉、卵5個、塩胡椒、ナツメグをいれて、しっかりとよく捏ねてもらう。
マッシャーで潰したカボチャを温めた牛乳と生クリームに混ぜ合わせて、そこの顆粒コンソメの素を入れながら塩胡椒で味を整えれば、あとはお皿に持ったあとに乾燥パセリを散らすだけで完成する。
程よいトロミを出すために、弱火のまま火にかけて適度に混ぜていく。
混ぜた合挽き肉に粘り気が出てきたところで、伸びるスライスチーズを二人で小さく折りたたんだ。
「これがチーズなんですか? 変わった形ですね」
「温めたらよく伸びるんですよ」
「へぇ、楽しみですね」
ハンバーグのタネを10等分すると、チーズを包んで形成していく。
ペチペチと空気を抜くために両手に叩きつけていると、音で目が覚めたのかバージルさんも起きだしてキッチンの近くまで歩いてきた。
「おはよう、チエ、ジェラルド」
「おはようございますバージル」
「バージルさんごめんなさい、うるさかったですか?」
「大丈夫、腹が減って起きただけだからな」
そう言うとバージルさんはイスを引きずってきてキッチンの傍で腰掛けた。
このまま見ていくつもりらしい。
形成したハンバーグを5個ずつフライパンに乗せて焼いていく。
ジュウッと肉が焼ける音と匂いがし始めると、グレンさんも起きてキッチンに歩いてきた。
「チエ、腹減った……」
「はい、もうちょっと待ってて下さいね!」
両面に焼き色が着いたら、余分な油をふき取って水を入れて蓋をして5分程、弱火で蒸し焼きにする。
ジェラルドさんにフライパンの水分が飛ぶまで監視をお願いした私は、ボウルにケチャップ、ソース、塩胡椒と砂糖を混ぜてバーガーソースを作ると、レタスとトマトを洗って、適度な大きさに切り分けておく。
市販のバンズにレタスとトマトを乗せて、焼きあがったハンバーグをジェラルドさんに乗せてもらうと、上からバーガーソースとマヨネーズをかけてバンズで挟んだ。
木製のプレート皿にワックスペーパーを置いてバーガーを包むと、スープカップにカボチャスープを入れて乾燥パセリを散らした後、バーガーの横に置いた。
私とジェラルドさんは1個、バージルさんとグレンさんは2個のバーガーが乗ったプレートを机に置いたら出来上がり。
残りのハンバーグはトレーに入れて、ラップをしてからアイテムボックスに入れておく。
これで何かあればすぐに食べられる食料のストックが出来た。
「美味そうだな。これは何て料理だ?」
「ハンバーガーです! ジェラルドさんのリクエストですよ」
「美味しそうですね、頂きます」
「はい、包み紙を剥がしながら食べて下さいね」
「美味ぇなこれ」
バーガーにかぶりついたグレンさんが、嬉しそうにそう言ってくれる。
バージルさんもジェラルドさんもバーガーにかぶりつくのを見てから、私もかぶりついた。
久しぶりのハンバーガーに、幸せな気持ちになる。
皆の足元でプルメリアが、美味しいの! 何食べてるの! と言いたげにウロウロしていた。
「そう言えばグリフォンって、普通は何を食べるんですかね?」
「人間の食いモン乗せた馬車を襲って中身食ってっから何でも食うんじゃねぇか?」
「テイムされた個体は、肉と少量の野菜や果物などを与える事が多いそうですけど、どうなんですかね」
「魔物は子供でも自分に害のある物は食べないから、本人が食べたがる物で大丈夫だと思うぞ?」
足元をウロウロしているプルメリアに、ちぎったバーガーを近づけてみる。
スンスンと匂いを嗅いだ後、パクリと口に銜えて飲み込んだ。
「ピィ!」
嬉しそうに鳴いてバタバタ走り回るプルメリアに、皆が笑っている。
「美味かったみたいだな」
「ですね、良かった」
「でもご飯を食べた後なので、まだ欲しいとは言わないんですね」
「ちゃんと理解してんだな」
食べ終わったお皿はグレンさんが洗ってくれるとの事で、私はキッチンの片付けをその間に行う。
洗ってもらったお皿やお鍋をアイテムボックスに戻してからテーブルに向かうと、床に座り込んだバージルさんとプルメリアが布を縛ったロープのような物で綱引きをして遊んでいた。
ジェラルドさんは面白そうに座りながらそれを見ている。
「プルメリア遊んでもらって良かったね」
「ピィピィ!」
私とグレンさんがイスに座ると、バージルさんも立ち上がってイスに座る。
プルメリアはロープを一人で振り回しながら遊び始めた。
ちゃんと遊びの時間が終わりだという事を理解してるみたいだ。
「よし、ルートの確認をするか」
机の上に地図を広げたバージルさんは、プレミリューの街を指差す。
バージルさん以外のメンバーは、地図を覗き込んだ。
「今はプレミリューに居るから、ここから南南西に歩いて1日くらいで秘境に着く」
「結構険しい道のりですか?」
「秘境の手前にある森だけは少し険しいな。3時間くらいで抜けられるが岩場が多くて少し歩きにくい。それ以外は平地を歩いて行くだけだからそこまで険しくはない」
秘境の少し手前で指を止めたバージルさんがそう言うと、グレンさんとジェラルドさんは難しい顔をする。
何か問題があるのかと疑問に思ったけれど、最後まで話を聞こうとそのまま黙って聞いている事にした。
「何が居んだ?」
「俺が秘境を見つけた時には平地には害のないハニービーや弱いゴブリンくらいしか見かけなかったが2年くらい前の話だからな、警戒はした方がいい」
「一応国境なので、この辺りまでは兵士が巡回していると思いますから比較的安全だと思います」
ジェラルドさんはプレミリューを中心にして指で円を描く。
ちょうどプレミリューと秘境の真ん中くらいまでは兵士の巡回があるらしい。
そこまでは安全だと聞いて、少し安心した。
足元にプルメリアがじゃれついてきたため、抱っこをして膝に乗せると満足したのかプルメリアもテーブルに前足を掛けてじっと地図を見つめている。
「野営は平地で行いますか?」
「そうだな、どれくらい進めるか分からないがそうなると思う」
「少し急げば森までは行けそうですかね」
「平地の野営は身を隠す場所がねぇからな……。ただチエに無理させたくねぇな」
「ピィ!」
グレンさんのその言葉に同意するようにプルメリアが鳴く。
そこで初めてプルメリアが会議に参加しているのに気付いた3人は微笑ましいものを見るかの様に笑った。
「進めるところまでは進もうと思うが、病み上がりのチエにあまり無理はさせたくない。平地での野営だと思っておいて欲しい」
「そうですね、分かりました。見張りはどうしますか?」
「3時間ずつで交代をしよう、チエは無しだ」
「ああ、問題ねぇ」
「本当、お役に立てずに申し訳ないです……」
戦闘や見張りなどでは一切役に立てないため、しょんぼりしながら頭を下げる。
プルメリアがそんな事ないよ! とでも言いたげに、一生懸命慰めてくれるのがまた辛い。
「気にすんな。俺は飯は作れねぇ」
「でも」
「でもじゃねぇ。分かって一緒に居んだ。自分で自分の事蔑むんじゃねぇ」
グレンさんにそう言われてはっとした。
皆が本当に気にしてない事に私が勝手に不安になって卑屈になったら、一緒に居てくれてる人達に失礼だ。
私に出来ない事をどうやって一緒に乗り越えるか考えてくれてるのに、私が卑屈な事を言っていたら皆の一生懸命な気持ちを蔑ろにしているのと同じ事。
「ごめんなさい」
「ああ」
「私には私にしか出来ない事もありますもんね! 出来る事を頑張ります」
「ああ、それでいい。俺も俺に出来る事しかやってねぇ」
「4人も居ればお互いに出来ない事があっても、皆でフォローし合えますからね」
ジェラルドさんもそう声をかけてくれると、プルメリアが不満そうな声で鳴く。
私も居るよ! と訴えているようだった。
「そうだな、プルメリアも入れて5人だな」
「ピィ!」
満足そうに鳴いたプルメリアは、私の膝から降りるとまたロープを振り回して遊び始める。
その後ろ姿を見送って、バージルさんが皆に声をかけた。
「ルートは今話した通りで行こう。少し早めのペースで歩くがチエの体調に合わせる。無理はせずに平地で野営を行う前提で動く。何か質問は?」
「ねぇな」
「ありません」
「はい、大丈夫です」
「よし、なら準備をして30分後にはここを出よう」
全員で確認を行い、出発の準備をする。
忘れ物がないか全員で確認したら宿を出て、大通りを歩いて街の外に向かう。
プルメリアはまだ子供だけど、一応グリフォンのため街を出るまでは私が抱えて歩くことになった。
外を珍しそうにキョロキョロを見渡して、その度にご機嫌に鳴いているプルメリア。
少し重たいけれど持てない程ではないため、遅れる事なく皆と歩いている。
街の外は一面の花畑で、思わずため息が出る光景だった。
上から見るのとはまた違う美しさがある。
街の外に出たためプルメリアを降ろすと、すぐに花の中へと駆けて行く。
風で舞う花びらを一生懸命追いかけて飛び跳ねるプルメリアに、皆笑ってしまう。
「プルメリア、あまり離れるなよ」
「ピィ!」
「これって、花を踏んで歩いても大丈夫なんですか?」
「ええ。踏まれてもすぐに元に戻るので移動の痕跡も隠せます。踏んでも大丈夫ですよ」
「まぁその分敵の位置もわかりにくいんだけどな。行こうか」
皆で花の絨毯の上を歩きだす。
プルメリアもご機嫌にバタバタしながらちゃんとついてきている。
草花は背丈もなく短いため歩きやすく、ジェラルドさんの言った通り踏まれてもすぐに起き上がっていた。
強い生命力があるんだな、と一人で感心していたら、体長10㎝くらいの蜂がたくさん飛んでいる事に気付く。
思い切りびくついてしまったけれど、私達を気にする事もないその蜂は、花から花へと移動しながら蜜を集めている。
「ハニービーだ。家畜になる魔物だからこちらから攻撃しなければ襲ってくる事はない。安心していいぞ」
「見てました?」
「少しだけ見えたな」
思い切りびくついてるのをバージルさんに見られていたらしい。
怖い魔物じゃないと説明して、安心させようとしてくれる。
グレンさんは気にせずハニービーを捕まえて、自分の手のひらに乗せていた。
一瞬刺されるのではと心配したけれど、ハニービーも抵抗することなくグレンさんの手のひらで休んでいる。
「こいつらの作るハチミツ美味いんだよな……」
「女王をテイムしたらどうですか?」
「巣まで近付いたら流石に刺されんだろ」
家畜になるならサイバーモールで売ってる気がするな、と思いながらも確信がないので黙っておく。
グレンさんの手のひらで休んでいた蜂は、そのまま蜜を集めに飛んで行ってしまった。
「まぁ、秘境についたら色々やってみるといいさ。時間はあるんだからな」
「はい! 養蜂もやってみたいです!」
「蜂蜜が出来たら分けてくれ。俺も好きなんだ」
そんな話をしながら皆で平和に歩いている。
平地のため歩きやすく、周りを見渡しやすいため魔物にも気付きやすい。
綺麗な花の絨毯の上を散歩してるかのようなペースだ。
安心して歩けるせいか思ったよりも早く、兵士の巡回ルートを越える事が出来た。
「このままのペースなら、森の入り口までは行けそうだな」
「僕もいいペースだと思います。まだ昼にもなっていませんし。森へはあとどれくらいですか?」
「このペースならあと2時間ってところだな」
ジェラルドさんの言葉にそう返したバージルさんは、太陽の位置を見ながらそう答えた。
この世界は西から陽が昇って東に沈んでいくせいで、地球と反対なのは理解できていてもで私はいまだに慣れていない。
足を止めないまま会話を続けていると、蝶を追いかけるのに飽きたプルメリアがバージルさんの足にじゃれついたので、バージルさんがプルメリアを抱っこしながら歩く事になる。
「森に着いたら一旦そこで野営すんのか?」
「着く時間にもよるが、森は暗くなると危険だからな。洞窟が作れるなら森の中の方が安全だが」
「因みに前回作れそうな場所は見当たりましたか?」
「洞窟がどういう形状で作れるかにもよるが、この間みたいな急な斜面はなかったな」
「ある程度の斜面があれば下にも多少広げられるので大丈夫ですよ」
「ならやっぱり森に入って洞窟を作った方がいいな」
「そういえば、どうして洞窟の方が安全なんですか?」
私が疑問を口にすると、プルメリアが羽ばたいて私の腕に飛んできたので受け止めた。
ここに私も居るよ! みたいな自信満々の顔をしている。
プルメリアに頬ずりをしていると、バージルさんが私の疑問に答えてくれた。
「温度が一定に保てる事、雨風がしのげる事、姿が隠せる事が主な理由だな」
「でも、洞窟は一か所しか入り口がありませんよね?」
「ああ、だから洞窟で寝泊まりをするなら出入口は死守する必要がある。けど平地で全方位を警戒するよりも一点を集中して守る方が楽だからな」
「そうなんですね、ずっと疑問だったので納得出来ました」
確かに、全方位をぐるぐる見渡すよりかは、一点を集中して守った方が効率が良い気がする。
皆自分の身を護るための方法をちゃんと知っているんだな、と感心して、すぐには無理でも私もしっかりと覚えて行こうと決意した。
昼食も問題なく終えて、綺麗な景色の中をただ歩き続ける。
この間の森での失敗を踏まえて、何も無いけど気は抜かないようと心に決めて歩いていた。
苦しい目に遭いたくないし、同じ失敗を何度も繰り返したくない。何かあればまた皆に心配をかけてしまう。
他愛もない会話を続けながら歩いていると、鮮やかな花に彩られた森が見えてきた。
「まだ時間に余裕があるな」
「森の中で一泊しますか?」
「そうだな……」
バージルさんは顎に手を当てて数秒考えると、一人ずつ指示を出していく。
「グレンとチエ、プルメリアはここで待機してくれ。俺とジェラルドは森に入って30分洞窟が作れそうな場所を探そう」
「いいぜ、待機してる」
「分かりました、では僕は西に行きます」
「なら俺は東に行こう。もし魔物と出会ったら気付かれない様にやり過ごしてくれ」
そう言い残して、ジェラルドさんとバージルさんは別々に森へと入っていった。
心配になり後ろ姿を見送るけれど、戦えないため信じて待つしかない。
グレンさんは周りを警戒しているけれど、二人を心配した様子はなく地面に腰を下ろした。
私もグレンさんの横に腰を下ろすと、プルメリアも駆けて来てグレンさんに体当たりをしながら横になる。
「グレンさん、開花の手ってどうやって魔力を種や苗に込めるんですか?」
「あん? こう、手に持つだろ?」
「はい」
「そんで開花の手って頭ん中で念じれば使えるぞ」
ジェスチャー多めでそう説明してくれるグレンさん。
試してみようとキャベツの種をサイバーモールで買って、教えてもらったように頭の中で念じると、手が少し光った後ゆっくりと種に光が集束されていく。
その種を不思議な気持ちで見ていると、グレンさんは更に話を続けてくれた。
「開花の手を使った種や苗は、元の生育期間によっけど大体1月ありゃ育つ」
「え、ものすごい短縮されますね!?」
「ああ、だから開花の手が使われた種や苗は高く売れんだ」
「苗もですか?」
「苗もだ。時期になると収穫しても2~3日ぐらいでまた実がなんだよ。だから調子乗って植えすぎねぇ方がいいぞ」
グレンさんはそういうとちょっと遠い目をしたので、それを見た私は、ああ調子に乗って植えて大変な目に遭ったんだな、と察した。
プルメリアはグレンさんの膝を枕にして眠っている。
開花の手の事を聞きながら二人が戻ってくるのを待っていると、同じくらいのタイミングで二人が森から戻ってきたので、立ち上がって傍に寄って行くと、後ろからグレンさんもプルメリアを抱えて歩いてきた。
「どうでしたか?」
「俺の方は外れだったな。食用に向く果実しかなかった」
「僕の方は川の側に窪地を見つけました。そこなら洞窟が作れます」
「よし、ならそこで一晩明かしてから森を抜けよう。出発できるか?」
「はい、大丈夫です」
「問題ねぇ」
返事を聞くと、ジェラルドさんを先頭に皆で歩き出す。
プルメリアは疲れたのか、グレンさんの腕から降りようとしなかったため、そのまま抱えてもらっている。
岩の多い森の中をプルメリアを抱えて歩く自信が私にはないせいで……。
転ばないようにとバージルさんに手を繋がれながら、私達は森へと入っていった。




