漫才「オタクですよね?」
二人『はい、どうもー』
ツッコミ「僕、最近日本語の素晴らしさに気づきまして。ことわざを勉強してるんですよ」
ボケ「ほう。では、今から俺が問題を出してやるから答えてみるがいい」
ツッコミ「突然の上から目線が少し気に障りますが。でも、いいですよ。その挑戦受けて立ちましょう」
ボケ「では、問題。元々強いものがより一層強くなること」
ツッコミ「何それ、超簡単じゃないですか。答えは"鬼に金棒"!」
ボケ「ブッブー」
ツッコミ「はあっ? いやこれ、どう考えても鬼に金棒でしょ」
ボケ「ノンノン。まったく、この程度の問題が解けないなんて嘆かわしい。今まで君は何を勉強してきたんだ?」
ツッコミ「くそ、あの眼鏡に指紋いっぱい付けてやりたい……っ」
ボケ「嫌がらせのスケールの小ささが顔に出てるな……あ、違った。鼻か」
ツッコミ「鼻のどこにっ? 鼻関係なくないっ? つーか、そこまでいうなら答えを教えてくださいよ」
ボケ「いいだろう、教えてやる。答えは……"推しキャラに眼鏡"」
ツッコミ「なにそれ最強! 奴は無敵アイテム。ただでさえ好きなのに、そのキャラが眼鏡という無限の可能性を秘めたアイテムを身に付けた瞬間の、胸に広がる萌えの嵐ときたら……」
ボケ「人類初の萌え死に事例」
ツッコミ「イエス、ギネス記録! って違う! なんなんですか、今の答え。もしかして俺と同じオタクですか?」
ボケ「そんなわけないだろう。君と一緒にするな。では、第二問」
ツッコミ「水洗トイレ並みにサラリと流した」
ボケ「思い切って大きな決断をすること」
ツッコミ「次こそ当てる。答えは"清水の舞台から飛び降りる"!」
ボケ「ブッブー」
ツッコミ「またかよ……」
ボケ「正解は……"一人で初メイド喫茶"」
ツッコミ「一大決心! わかる、わかるよ、シャイな俺にはわかる。友達は誘いづらいし、でもすっごい興味はあって行きたくて仕方ない。そして、それこそ飛び降りるような心持ちで、周りの目を気にしながらもメイド喫茶の列に並ぶんだ。その覚悟たるや……」
ボケ「討ち入りでござる」
ツッコミ「決死の覚悟! 俺はその決断を応援する。あのメイドさんと一緒に、オムライスに"萌え萌えキュン"した時なんかはもう……」
ボケ「スカイツリーからバンジージャンプ」
ツッコミ「達成感半端ない! 俺はもうどこへでも行ける、何にでもなれる。そう、俺は自由だー!」
ボケ「投稿小説一本書き上げた直後の作者のテンション」
ツッコミ「とりあえず寝たい……て違うよ! つーか、やっぱりオタクですよね? 答えの内容がこっちよりなんですけど」
ボケ「さて、これで最後だ」
ツッコミ「終わりは唐突なんですね。まるで打ち切り漫画のように」
ボケ「愛しさと切なさと心細さと」
ツッコミ「色々ギリギリ! でも、妙に合ってる不思議。心の支えだったのにさ、読者への相談も無しに打ち切るなんてあんまりだよ……」
ボケ「泣くなよ」
ツッコミ「泣いてなんかないよ! だって男の子だもん」
ボケ「では、問題」
ツッコミ「慰めろよ! 容赦ないなっ」
ボケ「周りが敵ばかりで味方がいないこと」
ツッコミ「普通に考えたら四面楚歌ですけど。どうせ違うんでしょ?」
ボケ「違うな。実際の人間の目と、少女漫画に出てくるヒロインの目のデカさくらい違う」
ツッコミ「一ミリも合ってないじゃん……じゃなくて。答えは何なんですか?」
ボケ「"友達全員彼女持ち"」
ツッコミ「リア充爆発しろ! 俺の嫁は二次元だけ、童貞を守り抜くとあれほど固く誓い合ったはずなのに……っ。それなのに、信頼していた仲間からのこの裏切り。その悔しさといったら……っ」
ボケ「本能寺の変の信長」
ツッコミ「信長死なないで! 辛かったよな、信長……俺にはわかる、わかるよ……」
ボケ「安心しろ。お前には俺がいる」
ツッコミ「お前……無駄にBLチックな声で言うのやめろ! そんな目で見るな! 普通にときめくだろ」
ボケ「アラサー腐女子、世に蔓延る」
ツッコミ「主力購買層! 媚び売るんじゃないよ。ってか、なんでお前に胸キュンせなあかんねん!」
ボケ「エセ関西弁撲滅キャンペーン」
ツッコミ「好奇心でやってしまいました、すみません……って違う! べつにそれで逮捕されたりしませんから、東京では。つーか、やっぱりオタクですよね?」
ボケ「おっと、そろそろバイトの時間だ」
ツッコミ「お茶の濁し方が雑。昨日の夕飯の残り詰め込んだなと一瞬でわかる母親の手作り弁当くらい雑。そういえば、何のバイトしてるんですか?」
ボケ「レジ打ちだ」
ツッコミ「へえ、意外に地味なんですね」
ボケ「青いエプロンに赤いサンバイザー」
ツッコミ「ん、ん? サンバイザー?」
ボケ「そして、おもてなしの心を決して忘れない」
ツッコミ「例えばどんな?」
ボケ「透明なブックカバーはご利用ですか?」
ツッコミ「それアニメイトじゃん! やっぱオタクやないかーい!」
二人『どうも、ありがとうございました』
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。