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幽霊がいる世界  作者: 蟹納豆
怨霊編

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怨霊編その9

 俺は急いで今朝の喫茶店へと向かった。店内に慌てて入ると店員が少し驚いて目を見開いた。


「あ、あのすいません! 少し聞きたいことがあるんですけど!」


「は、はい。なんでしょうか?」


 店員は女性だった。なぜか真っ黒なドラゴンをイメージしたような怪獣の服を着ていた。マッチョ店員と着る服間違えてるだろう。


「今朝、変な怪しい女の人がこの店に来ませんでしたか? 多分3人組のオタクと絡んでいたと思うんですけど!」


「あ、怪しい女の人に……3人組のオタク……」


 店員は思い出そうと考える。そしてハッとしたような顔をしてこっちを見た。


「あっ! いましたいました! 随分と怪しい格好をしていた人ですよね。確かにいましたよ。あ、あの席でした」


 店員は女がいたと思われる席を指差した。その席は数時間前、俺と富士見が座った席ではないか。


「最初は1人だったんですよ。でも気づいたら3人組の人たちと話してて……3人組の人たちは正直迷惑そうにしてましたね……」


 丸メガネたちが言ったことは本当のようだった。となればやはりその女が犯人か?


「その女がどこに行ったとかわかりますか?」


「さすがにそこまでは……それに、一応お客様ですし……あんまり個人情報を話すわけには……」


 それはごもっともだ。とはいえ聞き出さないわけにはいかない。


「それじゃあ……その人に何か変わったことは? その人の周りでもいいです」


 店員は正直答えにくそうにしていた。しかし渋々答えてくれた。


「えっと……あなたが誰なのかもわからないですし、何を知りたいのかはわからないですけど……もしかしたらその女の人と知り合いかもしれない人なら知っていますよ」


 なんだって? 知り合いかもしれない人だって?


「それは一体……」


「うちの従業員の松下さんがその女の人と親しげに話しているのを見たんです。明らかに初見という感じではなかったですし……おそらく松下さんならその女の人のことを知ってるんじゃないですかね?」


「その松下って人は今は?」


「もう上がっちゃいましたね……確かこのあたりに住んでるって言ってましたよ。探してみたらどうですか?」


 その松下って人物に会えれば女の情報が得られるかもしれない。


「わかりました。ありがとうございます」


「あ、でも気をつけてくださいね。松下さんすっごく強いですから。下手なことしたらボコボコにされちゃうかもしれません……あ、さすがにこれは悪口かなぁ」


 ボコボコって……まさかとは思うが……1人の人物が思い浮かぶ。


「そ、その松下って人は……マッチョで可愛らしい服を着てましたか?」


「え? ええ。その方が面白いからって店長が採用したんですよ。私も最初に見たときはほんと笑っちゃいましたよー」


 間違いない。松下とは例のマッチョ店員だ。何もかもが関わった人物だ。ほんとに怖くなってくる。


「ありがとう!」


 俺は店を出るとあたりを散策する。このあたりに住んでるとはいえ他に情報がなさすぎる。家の名前を見てはいるがこれではキリがない。


「アンタ、こんなんじゃキリがないぞ」


「わかってるって。と言っても情報がなさすぎるんだよ。このあたりに詳しい奴がいれば……」


 ぼやいた時だった。俺の目に複数の男たちが見えた。見るからに不良集団だった。明らかにガラが悪かった。


「あ! お前は今朝の!!」


 そのうちの1人。どこかで見た男と目があった。


「なんだよ完二。そこのガキと知り合いか?」


「へぇ……結構可愛い顔してんじゃん」


「ホモは黙っとれ」


 奴の名は神速の完二。神速とは逃げ足の速さのことを指している。


「お前。今なんか勘違いしてなかったか?」


 神速の完二は俺に詰め寄る。今はこんな奴と絡んでいる場合ではないのに。


「いや、待てよ」


 確かこいつはこのあたりをテリトリーにしているって言っていた気がする。もしかするとこいつなら知っているかもしれない。


「なああんた! 今朝は悪かった! 実はあの時な、俺たちあんたのかっこよさにビビってたんだ! それでうまく話せなくて……ほんとに悪かった!」


 そんな全く思ってないことをベラベラと喋る。


「そ、そうかぁ? 俺、やっぱかっこいいよなぁ」


 こいつ……こんなにあっさりと。周りの連中は呆れている。


「どう考えてもバカにされてるよな?」


「ああ。さすが『低脳の完二』だ」


「もう行こうぜ」


 とにかく神速の完二に察される前に話をつけなければ。


「そこで神速の完二の偉大さに免じて協力してほしいことがあるんだ!」


「おう! なんでもいえ! なんたって俺は『神速の完二』だからなぁ!」


「このあたりに住んでる松下って男を知っているか? 今朝、あんたに襲いかかったマッチョ店員だよ」


「今朝……あっ、あのガチムチ野郎か! くっ……思い出しただけでイライラしてきた」


 まあそれはそうだろう。マッチョ店員に問答無用で追い出されたわけだし。


「あの野郎このへんに住んでんのか……よし! 今朝の復讐だ! おいお前ら! 『ダークネスチーターズ』を集めろ! 松下って野郎を見つけ出してぶっ飛ばすぞ!!」


 他の連中はあまり乗り気ではないようだ。その『ダークネスチーターズ』とかいうふざけた名前の連中はこいつらの仲間なのだろうか? よくはわからないが少し不安になってきた。


「安心しろ。俺が絶対見つけ出してやるよ! なんたってお前は信者2号だからな!」


 なんなんだこの手のひら返しは。


「えっと、なぜ2号?」


「あ? 決まってんだろ。1号はお前の彼女だ。あいつも俺のかっこよさにしびれてんだろ?」


 そういうことか。富士見をこの男に2度と会わせるわけにはいかないな。そう心の中で誓った。

 とはいえ、神速の完二はマッチョ店員を探してくれるようだった。だからここは素直に協力してもらおう。マッチョ店員を見つけたら俺に連絡するように頼んだ。


「凶と出るか吉と出るか……」


 でも今はこれに賭けるしかない。俺は期待を込めてこの場を後にした。

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