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幽霊がいる世界  作者: 蟹納豆
不死身編・終

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不死身編・終その26

 こうして始まったクレーンゲーム。富士見、同志先生の2人とオタクトリオで交互に挑戦する。

 富士見やオタクトリオが欲しがるギルティン。それぞれの想いをかけて挑戦が始まろうとしていた。


「最初は私だな」


 まずは丸メガネから。アームがギルティンの体を掴むが、途中で落ちてしまう。


「くっ……やはり一筋縄ではいかんか」


「それじゃあ次私ね」


 続けて同志先生。先生のシューティングゲームはかなりの実力だった。しかしクレーンゲームはというと……。


「あっちゃー、ダメだぁ!」


 そもそもギルティンを掴むことすら出来ていなかった。どうやらクレーンゲームは苦手の部類に入りそうだ。


「はい、次君たちの番だよ」


 同志先生がオタクトリオに台を譲ろうとする。しかし次の順番である萌え絵が中々動こうとしない。と、いうより。3人とも固まってしまっている。


「あれ? どうかしたの?」


「い、いや……なんというか……」


「お、お前もわかるか? 今の声……」


「ああ。めっちゃよかったよな……」


 3人は同志先生に見惚れている。これは……先ほどの同志先生の発言。どうやら無意識にドラコっぽくなってしまっていたのだろう。


「え!? あっ、ああー! オホン! ちょっと喉の調子が悪いなぁ」


 同志先生はわざとらしく咳払いをする。こりゃあバレたらとんでもないことになるぞ。


「って見惚れてる場合じゃなかった! 次俺か!」


 萌え絵はやっと気づいたのか、駆け足で台へと向かった。


「しかし先生。発言には気をつけないとですよ……」


 俺は小声で同志先生に告げる。


「そ、そうだね。君たちといる時は平気なんだけど……彼らを見てると無意識にドラコが出てきちゃう……」


 まあそりゃそうだろう。何せいつも最前列で見にきている熱心なファンなんだから。奴らを見たら自然とドラコになってしまうのも無理はない。


「ぐあー!! これアーム弱すぎんぞ!」


 どうやら萌え絵も失敗したらしい。


「ふっ。あなたたちの実力はその程度? この超絶美少女である私の実力を見せてあげる」


 そしていよいよ回ってきた富士見のターン。今までどのゲームも無双していた富士見だったが、果たして今回はどうなる?


「……」


 富士見はギルティンを掴むことなく、100円を無駄にした。


「えっとー」


 俺は思わず富士見の表情を伺った。その表情こそ無表情だが、その瞳は怒りの炎で燃え上がっていた。


「イテッ!!」


 なぜか無言で脛を蹴られる。おい、これ何度目だ?


「チッ……イチャイチャしやがって」


 こちらを睨みながらロン毛が挑戦する。しかし彼も失敗に終わってしまう。


「くっ……あんなところにどうして着物の美人がいるんだ!?」


 どうやら他のものに気を取られて集中できなかったようだ。


「これは……長い戦いになりそうだね……」


 同志先生の言う通り、ここから先は長い戦いとなった。アームがギルティンを掴む者もいれば、掴みすらしない者もいれば、他のものに気を取られる者もいた。

 こうして次から次へと100円玉が消えていく。一体いくら注ぎ込んだのだろうか?

 近くでゲーセンのスタッフもこちらのことをチラチラ見ていた。コツを教えようかと迷っているのだろう。しかし彼が突き入る隙はなかった。もはや皆は意地でもギルティンを取ろうと必死だった。

 それを俺はただ見ているだけ。果たしてこれでよかったのだろうか?


「あっ!!」


 何回目かわからない挑戦。回ってきたのは同志先生。


「どうかされたのですか?」


「ひゃ……100円玉が……最後に……」


「な、なんだってー!!」


「そ、そんな……ってことは……この回が終わったら……あなたの戦いは……」


「そう、だね。私はここでリタイヤすることになっちゃう」


 明らかに落ち込む同志先生。俺は財布の中身を確認する。俺に出来ることといえばこれぐらいしかないだろう。


「そんなら俺の100円……」


「でも……でも大丈夫だよ! 私は負けない!」


「そうですとも! あなたのような逸材が、ここで終わるはずがないのです!」


「そうだね……ここに来るまで、色んなことがあったね。でも、私はなんとしても勝ってみせる!」


「ほんとです! 色んなことがありました!」


「だから、私のこと応援してくれる?」


「します! しますとも!!」


「よーし、それじゃあ……!」


 まずいまずい! 流れが完全にドラコになってるぞ! なんとしても止めないと!!


「うおおおおおおおおお!! 俺はヘッドホンだ!! お前ら!! ドラコ以外の人に浮気するのか!? ええ!?」


「!?」


 突然俺が叫び出したから、思わず隣で富士見が驚愕している。彼女のこんな表情は珍しい。それと同時に悲しくなる。やめてくれ、そんな目で俺を見ないでくれ。


「ハッ……!! そ、そうだった。あ、危ないところだった……今回ばかりは礼を言わせてもらうぞ、コードネームヘッドホンよ」


「た、確かに……あと一歩で引き込まれるところだった。助かったぜヘッドホン。今日は付けてないようだけど」


「そ、その通りだな。しかしなんというか……今のやりとりすごいしっくりきてたような……」


「オッホン!! さて、最後の100円入れちゃいましょうかー!!!!」


 無理やり雄叫びをあげる同志先生。全く……自らドラコになりかかっていたくせに。

 しかし100円玉を使い切るなんて……ほんと何回目の挑戦なんだろうか。


「あ」


 あまりにもあっけない声がした。それと同時にガコンという音が響く。全員が注目する。台の出口には、ギルティンのぬいぐるみが……!!


「おめでとうございます!!」


 カランカランと鐘の音が鳴り響く。それと同時にゲーセンスタッフが大きな袋を持ってきた。それを同志先生へと手渡す。


「あっ……どうもです」


 静かにクレーンゲームへの挑戦は幕を閉じた。

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