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幽霊がいる世界  作者: 蟹納豆
不死身編・終

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不死身編・終その25

 いつぞやのクレーンゲーム。そこで俺はプリティンのぬいぐるみを取ることに成功した。しかしアレは単純なものではなかった。何せ、同時に狙っていた者がいたからだ。

 そして運命の糸が再び絡み合おうとしていたのだ。

 現れたのはいつぞやのオタクトリオ。通称丸メガネ、萌え絵、ロン毛の3人組だ。


「ま、また貴様か!? しかも今度は以前の彼女を連れているだと!?」


「お前もしかして……浮気性?」


「いや、だとしたら俺たちの発言で修羅場になる可能性が……」


 また余計なことを口走る。面倒なことにならなければいいけど……。


「そうね。怪奇谷君は私の知らないところで他の子たちにナニかをしてることがよくあるから。そうならないようにちゃんと見張らないと」


 とりあえず、富士見の方は見ないでおこう。


「あっ、あららー……まさかこんなところで出会っちゃうなんてねぇ」


 同志先生は小声で呟く。俺はオタクトリオと同志先生を交互に見て、とんでもないことに気づく。

 これはある意味……アイドルドラコとファンが直接関わっているとんでもない現場なのではないか!?


「む。失礼。あなたもこちらのぬいぐるみを狙っているのですか?」


 いつも口調が荒々しい丸メガネが珍しく丁寧に接している。


「あっ、そ、そうなの。私もこのぬいぐるみが欲しくて……あなたも?」


「おお……奇遇ですな! 私もこちらのぬいぐるみを希望しておりまして……どうやらあなたとは趣味が合うようですな!」


「おい! ナチュラルにナンパするなよ! ま、まあ確かに気持ちはわかるけどよ。この人美人だし」


「あ、ああ! なんていうか着飾ってない服装が逆にそそられるよな!」


 どうやら3人は同志先生の正体に気づいていないようだ。


「えっと……どうする? どうやらこのぬいぐるみ自体は最後の一つっぽいけど」


「むむ。そういうことなら譲るべきなのでしょうけど……しかし……」


「うーむ。こんな美人に頼まれちゃ譲りたくもなるが」


「でもよ、また一から考えるのもなぁ」


 なんだ? オタクたちにしては珍しく神妙な面持ちだ。


「なんだお前ら? 珍しく悩み事か?」


「珍しくなどあるか! 我々はいつも悩みに悩んで生きている!」


「そうだそうだ!」


「はは……まあでもそう思われても不思議じゃないよなー」


「あっ……もしかして……」


 同志先生は何か心あたりがあるのか、思わず表情を固めてしまう。


「まあいい。貴様もドラコ仲間として教えておいてやろう。実はな……今度ドラコが卒業してしまうのだよ!!」


「は!? な、なんだと!?」


 今のは素で驚いてしまった。冗談抜きに。

 思わず同志先生の方に目を向ける。どこか申し訳なさそうに、俺たちから目を逸らす。そんな話、聞いていないぞ。


「まだその理由は俺たちも聞けてないんだよな。卒業ライブで話してくれるらしいんだけど」


「だからさ、最後に何かプレゼントを渡そうと思ってさ」


 なるほど……それでこのギルティンを……。


「お、お前たちがプレゼントを渡そうとしていることはわかった。けどなんでギルティンなんだ?」


「き、貴様ホッパーマンを見ていないのか!? ギルティンでなくてはならない役割があるだろう!?」


「い、いや。多分こいつはホッパーマンを見ていない……見てるのは彼女の方で……」


「そうか。だったら……それを言うのは野暮ってもんだな。クソー羨ましいぜ!」


 なんだ? こいつらは一体何を言っているんだ?


「そ、そうなんだ。で、でも……」


 同志先生は困惑しているのだろう。まさかこれを自分のために取ろうとしてくれているなんて。


「いいわ。そういうことなら今回はあなたたちに譲る」


 意外なことに、富士見がオタクトリオに譲ったのだ。あれだけ欲しがっていたギルティンを。あっさりと。


「……」


 しかしオタクたちは首を縦に振らない。いつもの様子だったら大騒ぎして、急いでクレーンゲームを始めそうだが……。


「待て。少し話し合いがしたい」


 丸メガネは萌え絵とロン毛を連れ、少し離れたところで話を始めた。


「珍しいな……こっちが譲っているというのに……」


「……」


 富士見もなんだか複雑そうな表情だ。


「ってそれより、先生! あいつらの言ってたこと本当なんですか?」


 オタクトリオが離れた今なら話が聞ける。ドラコが卒業するという事実を。


「……うん。本当だよ」


「どうして……」


 俺はなんとなく、嫌な想像をしてしまった。

 それは彼女の当たり前だった日常が変わってしまったから。だから、彼女は以前のようにはいかない。それで辞めざるを得なくなってしまったのではないかと。


「それは……ボクやオジサンがいなくなってしまったからなんですか?」


 聞かずにはいられない。もしもそうなのだとしたら、どうしようもなかったこととはいえ、何か俺にも出来たことはあったはずだ。


「それは――」


「待たせたな!」


 するとタイミングがいいのか悪いのか、オタクトリオたちが戻ってきた。


「我々で話し合った結果だが……やはりここは公平にいくべきだと思うのでな。以前と同じように交互に挑戦するというのはどうだろうか?」


 以前。俺がプリティンを取った時のことだろう。あの時と同じく交互に挑戦し、先に取った者勝ちということになる。


「そりゃ……俺は構わないけど……お前たちはいいのかよ?」


「ふん。もちろん我々が取るさ。しかし万が一取れなかった時のことも考えてある。何もプレゼントはギルティン一択というわけではないのだからな」


 丸メガネはその丸いメガネをクイっと上げた。


「だってさ。どうする? 富士見」


 俺は富士見に問いかけた。元はと言えば、これを欲しがっているのは富士見だ。富士見が不要だというなら別に無理してやる必要はない。


「……そう。そこまで言うならやりましょう」


 富士見も覚悟を決めたのか、同志先生の隣に並び立つ。


「富士見さん?」


「先生、私にもやらせてください」


 どうやら富士見もクレーンゲームに挑戦するようだ。


「なら俺も……」


「怪奇谷君、あなたは見てなさい」


 向こうは3人。だとすればこちらも3人で挑めばいいのに。そう思って俺も参戦しようとしたんだけどな。


「そうだぞ。貴様はそこで見ていろ」


「そうだそうだ」


「黙って彼女の言う通りにしてな」


 オタクトリオもここぞとばかりに詰めかける。なんなんだ一体!?

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