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幽霊がいる世界  作者: 蟹納豆
不死身編・終

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不死身編・終その17

 というわけで俺たちと剛、根井九チームでクレープを賭けた戦いが始まった。


「へぇ、おもしれぇ! それなら俺たちも混ぜろ!」


「ん? 誰だお前? 魁斗の知り合いか?」


「え? いやまあ……知り合いっていうか……」


 と、なるはずだったのだが。突如乱入してきた男、その名は神速の完二。どうやら奴も戦いに参加するようだ。


「まあなんでもいいや。そこのお前! 負けたらクレープ奢りだからな? わかったな?」


「ああ、構わないぜ! やるぞ松下! 俺たちの優秀さを見せつけてやろう!」


「はいはい。ほどほどに」


 テンションの高い完二を軽く扱う松下。ほんと、どういう経緯でこいつらはこんな仲になったんだ。


「姫蓮。あれほんとに知り合いなの? なんだか不釣り合いな2人に見えるけど……」


「そうね。けれど見た目が全てということではないってことね」


 根井九はこっそりと富士見に問いかけていた。まあ誰がどう見ても不思議に感じるだろう。


「というわけで! ゲームスタートォ!!」


 剛の掛け声と共にゲームが始まる。

 第一レーンに完二松下ペア。

 第二レーンに俺と富士見ペア。

 第三レーンに剛根井九ペア。

 他のレーンには人はいなく、たまたま俺たちだけで貸切状態だった。


「っと、最初は俺か」


 早速俺の出番だ。といっても2人チームなんだから、順番はどのみちすぐ回ってくることになる。


「っし! 魁斗! 負けねぇぞ!」


 どうやら剛根井九ペアは、剛が先手らしい。


「ふっふっふ。信者とはいえ手加減はしないからな」


 そして完二松下ペアは、完二が先手らしい。まあこいつに関してはぶっちゃけどうでもいい。適当に流しておこう。


「怪奇谷君」


「ん?」


 俺は立ち上がり、今まさに投げる準備をしようとしていたところだった。


「頑張ってね。応援してるから」


「……お、おおう」


 これは……意外な反応だ。まさか富士見自らが応援してくれるなんて。しかしそれは完全に予想していなかったこと。だからか妙に照れくさいし、気が動転しそうだ。


「剛ー! 負けたら承知しないよ!」


「完二君。ほどほどに頼みますよー」


 それぞれのチームにも応援が入る。剛は気合いを入れたのか、自ら頬をパチンと叩いた。

 完二は腕をブンブン振り回している。


「俺も、負けられないな」


 ダーツとビリヤードではボコボコにされたが、ボウリングならやれる。それをまさに今証明してみせる!


「それっ!!」


 俺たち3人はほぼ同時に玉を投げた。そしてその結果は――。


「なぁー!! たったの3本だけかよっ!!」


 どうやら剛の方は、ピンが3本倒れただけだったようだ。


「ふっ……」


 完二の方は……ピンが1本。なのになぜあいつはあんな誇らしげな表情を……?

 そして肝心の俺はというと……。

 倒れたピンは5本。3人の中では1番多く倒していた。


「っし!!」


 俺は思わずガッツポーズをした。今までの俺とは違うということを見せてやらねばならない!


「やるじゃない。その調子で次も決めちゃって」


「ああ、任せろ!」


 そして2回目の投球。これで全てが決まる。

 ピンの数は残り5本。それらを全て倒せばスペアとなる。剛はともかく、完二にとっては圧倒的有利となるだろう。


「剛! しっかりして! 全部倒したら良いことしてあげるから!」


「なんだって!? それはやる気を出せねば!」


 しかし剛は剛で燃えている。


「ふっふっふ」


 完二はただ小さく笑い続けている。もしや、壊れちまったのか?


「何はともあれ、これで勝者は決まる」


「何言ってんの。まだ1セット目でしょ」


 確かにそれはそうなのだが、精神的有利に立てるのは間違いない。


「見てろよ富士見。俺だってやれるとこ、見せてやる」


 狙うは残された5本全て。俺はそれらに目掛けて勢いよくボールを投げた。結果は――。

 ボールの軌道は外れ、ガターとなった。


「え?」


 後ろで小さく呟く声がした。やめてくれ。その、何をしてるんだコイツ感を出すのは。


「ば、バカな……俺の投球は完璧だったはず……なのに、どうして……」


 未だに信じられない。俺が……この俺がガターになってしまうなんて。


「く〜! 惜しい! あと1本だったのに!」


 剛はなんと6本ピンを倒していた。残されたピンはたったの1本。それを倒してさえいれば、スペアだったというのに。


「わー、惜しい! でもよくやったよ! 偉い!」


 根井九は剛の頭を撫でている。バカな……なぜ剛があんな力を……!


「ふっふっふ。お前たち、もっとこっちに注目したらどうだ?」


 隣から何やらやかましい声がする。


「えぇ? まあどうせ見なくたってわかるさ。お前もガター…………はぁ!? す、スペア!!??」


 俺は完二のスコアボードを見て驚愕した。奴は残された9本全てを倒していたのだ。


「ま、これぐらい当然ってことさ」


 完二はかつてないほどに勝ち誇った表情で座り込んだ。


「な、なんて奴だ……こればっかりは、強者と認めざるを得ないかもしれないな……」


「怪奇谷君。あなたボウリングに対してだけはやけに熱量が高いわね」


 こうして俺の初陣は、たったの5本だけという屈辱的結果となった。

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