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幽霊がいる世界  作者: 蟹納豆
ティーチャー編

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ティーチャー編その3

 8月6日。またまた世間一般での夏休み。俺は繁華街へと来ていた。来遊市の中心部にあり、近くには大型ショッピングモールがある。この辺りは人通りが多く、1番賑わっている地区と言えるだろう。

 俺は今日ここに現れるはずの同志先生を待っていた。風香先輩曰く、1度見かけてから何度か見かけたらしい。月曜、水曜、土曜に現れる頻度が高いようだ。


「しっかしアンタもあれよね。あんな話鵜呑みにするなんて」


「ただ幽霊が見えるだけならいいんだけどな。見えたとして、その幽霊とどう付き合っているかが問題だろ」


 もしその幽霊が怨霊などの悪霊だったら最悪だ。いっそのこと浮遊霊であればいいのだが。


「それにしても……」


 自分の格好を見てため息をつく。我ながらふざけた格好だ。

 普段の私服からかけ離れた服を着ていた。服の真ん中にでっかく『アイドルは神!!』と書いてある。これは父親から貰ったのだが、恥ずかしくて着ることができずに放置していた。そんなものを着る日が来るとは思いもしなかった。

 ではなぜこんな恥ずかしい服を着ているのか? 別にこの服でなければいけない理由はないのだが、いつもと違う格好をするにはこれしかなかったのだ。

 肝心なのはいつもと違う格好というところだ。俺は同志先生の授業を受けてはいないが、万が一俺の顔が覚えられていた場合を想定するとこうせざるを得ないのだ。


「いくらバレないためとはいえこんな格好しかできないなんてな……」


 他の服がどれも普段通りすぎたのだ。そしてやっとの思いで見つけたのがこの服だった。服だけではバレる可能性もあるので一応帽子もかぶっている。


「側から見ればただのオタクだぞ。アンタ」


「わ、わかってる! 俺だってしたくてこんな格好してるんじゃない!」


 ちなみにいつもと違う格好をした方がいいと提案したのは風香先輩だ。クソ、自分は来ないからといって気楽にいってくれるものだ。


「そういや智奈遅いな」


 時刻を確認したところ、集合時間の8時をとっくに過ぎている。智奈が遅刻なんて珍しいな。


「ね、ねぇアンタ。アタシ思うんだけどさ」


 ヘッドホンがなんだか笑いを堪えているような気がする。何か面白いものでも見つけたのだろうか?


「なんだ? どうした?」


 ヘッドホンは震えた声で言う。


「その、隣にいる子。アンタの知り合い、じゃない……?」


 今にも吹き出しそうな声だ。何がそんなに面白いのか? とにかく俺は言われた通りに隣に立つ人物を見る。

 考えてみればこの隣にいる人はさっきからずっと隣にいる気がする。ホットパンツにTシャツ。そしてサングラスをかけている。誰かと待ち合わせをしているんだと思っていた。


「あれ……?」


 なんだ? この妙な既視感は。


「……」


「……」


 俺はまじまじとその隣にいる人を見る。なんだかすっごい恥ずかしそうにモジモジしている。

 この反応。まさか? いや、さすがにないだろう。まさかまさか。


「……」


「あ、か、魁斗先輩……」


 マジか。マジだった。隣にいるサングラスをかけている人は、まさかの智奈だった。


「ち、ちちちち智奈⁉︎ そ、その格好……!!」


 やばい。イメージと違いすぎる。そして、このギャップ! やばいぞ。俺の中の何かが騒いでいる。お、落ち着け。落ち着け俺!


「その、へ、変……ですか……?」


 そんな恥ずかしそうな声色で俺の様子を伺わないでくれ。っていうかサングラスが面白すぎるぞ!


「へへへへへ変じゃないですよぉ! 素晴らしい! これなら智奈ってバレないですねぇ!!」


「プククククククク」


 ヘッドホンが笑いを堪えていたのがよくわかった。確かに可愛いんだけれど、さすがにサングラスは面白すぎるのだ。


「プッ……あ、ああ。落ち着け。そ、その、智奈。サングラス……似合うな」


 しまった、余計なことを言った。無駄にサングラスが気になってしまう。


「こ、これですか……? その、私っぽくないものを探していたらこれしか無くて……」


 くそう。可愛いのに面白いとか卑怯だぞ智奈よ。


「なんで声かけてくれなかったんだよ」


「えっと……魁斗先輩がなかなか気づいてくれないから……」


 それは気づくわけない。誰もこの姿を見て智奈だとは思わないだろうからな。とは言え隣にいたことに気づかない俺も悪い。


「ああ、それはごめんな」


 智奈は小さく大丈夫ですと言った。すると、携帯が鳴った。


「ん?」


 開くとメールが届いていた。風香先輩からだ。


『魁斗君へ

こんばんわー! 魁斗君と智奈ちゃんは今一体どんな格好をしているのかなっ??

とても気になってしまうのでぜひツーショットを撮って送ってね☆

それから、助っ人を送っておいたからなんとか真相をつかんでね! 頑張れー!

可愛い風香より』


「誰がツーショットなんか取るかボケ!!」


 自分は現場にいないくせにふざけたこと言いやがってー。


「え? つ、ツーショットって……」


「ああ、気にしなくていいよ……ってそれより助っ人って誰だ?」


 そもそも助っ人が必要な状況なんて訪れるのか? などと考えていたその時だった。


「魁斗お兄さーん!! 智奈お姉ちゃーん!!」


 なんだかとっても大きくて元気な声が聞こえた気がする。そしてその元気な声には聞き覚えがある。


「いやー、お待たせいたしましたー。すみません! 遅れちゃって」


 浮遊霊の少女、冬峰紅羽がパタパタと駆け寄ってきたのだ。


「冬峰⁉︎ なんでお前がこんなところに??」


「あれ? 聞いてないんですか? あのカッコいい人に頼まれたんですよー。魁斗お兄さんと智奈お姉ちゃんを手伝ってあげてって」


 どういうことだ? なんで同志先生の謎を解くだけなのに冬峰の協力がいるんだ? でも風香先輩が何も考えずに呼び出したとは思えない。


「っていうかお前、風香先輩といつからそんな仲になったんだよ」


「あれからたびたび顔を合わせることが増えたんですよねー。そしたらいつのまにか仲良くなってー」


 冬峰は嬉しそうに言う。そこで俺はふと思い出したことがあり、聞いてみた。


「なあ冬峰。お前最初に風香先輩と出会った時、あの人どんな風に話しかけてきたんだ?」


「えっとですね……」


 ここからは冬峰と風香先輩の会話だ。


風「おや、どうしたんだい? お嬢さん」


冬「え? あ、あのっ! 実は私弟を探していて……」


風「ふむ。弟さんが突然いなくなってしまった、と。ふむ。おそらくそれは『神隠し』だろう」


冬「神隠し……」


風「大丈夫だよ。そういった相談を受けてくれる相談所があるんだ。これこれこうこうで……」


冬「わかりました! ありがとうございます! 親切丁寧に教えてくださって!」


風「なに、どうってことないさ。困ってる人を見かけたら助けるのは当然だろう? 特にこんなに可愛い子ならね」


冬「なっ……! 可愛いだなんてそんなっ!! う、嬉しいです! 私、貴方のようなカッコいい大人の女性に憧れているんです!」


風「ははは、そうか。ならまたいつでも困ったことがあったらよんでおくれ。いつでも駆けつけるよ。それじゃあ」(爽快に去っていく)


冬「あぁ……」


 回想終わり


「バカだ」


「え?」


 風香先輩には本当に呆れた。それに騙される冬峰も冬峰だが。


「か、変わってますね……風香先輩って……」


「智奈。別にフォローする必要はないんだぞ」


「な、なぜだか知りませんけどなんだかバカにされてる気分です!」


 それはともかくだ。この後の行動について説明をしようとしたのだが……


「そーゆーお二人もなんですかその格好は! ダサいにもほどがあります!」


 触れるべきでない痛いところをついてきやがった!


「俺だってしたくてこんな格好してるんじゃねぇよ! 智奈もそうだろ⁉︎」


 俺は智奈に同意を求めた。


「え、その、はい……でも、ダサい、のですか……?」


 同意はしてくれたようだが、智奈はどうやら自分の格好をダサいとは思っていないようだった。


「智奈お姉ちゃんのためにもはっきりと言いますけど!」


「まてまて! 智奈はこれでいいんだよっ!」


 俺は冬峰の口を抑える。それに反応して暴れだす冬峰。


「〜!! 〜〜〜っ!!」


「おっと、すまないな」


「はぁ……はぁ……こ、殺す気ですか! 今のは訴えたら私が勝ちますよ!」


 殺す気もなにも冬峰はもう……と思ったがそれ以上は考えるのはやめた。


「……! 魁斗先輩!」


 智奈がいつもより少し大きな声で俺を呼んだ。俺は智奈の目線を追った。

 そこにはサングラスをかけたミニスカートの女性が現れた。特徴は一致している。そして言われればどことなく彼女に似ている。


「同志……先生……!」

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