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幽霊がいる世界  作者: 蟹納豆
ポルターガイスト編

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ポルターガイスト編その2

 昼休み。ある話題が俺の耳に入ってきた。


「ポルターガイストって知ってるか?」


 金髪チャラ男の土津具剛にそう切り出された。


「今朝も知らない美人さんと同じ話をしたばかりだな」


「なんだと? 美人だって? おっぱいは?」


「さあね。そこまで見てない」


 実際はかなりのボリュームだったが言うのはやめておこう。


「んだよ〜ケチだな。お前最近女と絡みすぎなんじゃないか? この前も女2人と一緒にいたよな?」


 富士見と智奈のことだろう。まさか冬峰のことではないだろうし。


「いいだろ、俺が誰といようが」


「よくないな! それにあんだけ否定してた『幽霊相談所』までほんとにやりだしちゃってよ」


 それに関してはぐうの音もでない。勝手にやられたこととはいえ、俺も許可してしまったからだ。

 さらにいえば結構な頻度で知名度が広まっているらしい。たびたび噂話をしているのが聞こえる。もちろんあまりいい気分にはならないようなことだが。


「……で? なんでまたポルターガイストなんだ? さっき近くであったって聞いたけど……」


「ああ! 今度さ、新競技場が建てられるだろ? その建設予定地の近くで夜中に音がしたり、物が動いたりするらしいんだ!」


 確かにその話を聞く限りではポルターガイスト現象の内容に一致する。しかしそれだけでは決定は出来ない。


「そんで、調べてみたらそれはポルターガイストっていう現象らしいんだ。それも幽霊絡みの! となればお前に聞くしかないだろ?」


「誰かのイタズラとかじゃないのか? それにあくまで噂なんだろ?」


「いや、実際建設予定地に近くの森とか廃墟も含まれてるらしくてよ。幽霊が出た! って噂もあるらしいんだぜ?」


 また霊感の強い人か、あるいは適当なことを抜かしている輩か。それとも……


「また別の噂じゃ新競技場の建設反対派の仕業ってのもあるらしいぜ」


 新競技場の建設を反対している人もいる。その人たちが生霊を生み出したとでも? だとしたら生霊は建設を実際に行う人間に取り憑くだろう。わざわざ音を鳴らすなど遠回しなことはしない。


「反対派のイタズラだろうな」


「なんだよ、随分と信用してないな」


「そりゃ……詳しくなれば逆におかしいって思うんだよ。そういうお前こそなんでそんなことに興味持ったんだよ?」


「新競技場のニュース見てたら出てきたからな。俺としてはちゃんと建設して欲しいんだけどな! 早くサッカーが観たいゼェ!」


 ニュースになるほど話題にはなっているらしい。しかし今朝のニュースではそんなこと言ってなかったような。


「それ、いつ知ったんだ?」


「ん? 今だ。授業終わってニュース調べてみたらトップにそう出てたんだよ。だからビックリしてお前に聞きにきたんじゃないか」


 そういうことか。しかし待てよ。そうなると今朝の美人さんはニュースになる前からそのことについて知っていたのか……?


「そうか。ま、一応調べておくよ。イタズラだといいんだけどな」


 仮にイタズラじゃないにしてもポルターガイスト……騒霊なら大したことない。俺はそのまま次の授業の準備を始めた。


 授業が終わり俺は下校しようとした。しかし電話がかかってきた。


『あ、もしもし? 超絶美少女の富士見姫蓮ですけど。そちらはシスコン疑惑のある怪奇谷君の携帯であってるかしら?』


「シスコンではないが怪奇谷なのはあってる。それから俺の番号にかけてるんだから間違うわけないだろ?」


『そうね、では怪奇谷君。本題に入るわ。さっそく2人目の相談者よ。部室に来てちょうだい』


 なんだと。それは困る。今日は早く帰らなければならないのだが。


「悪い、富士見。それ今日じゃないとまずいか? 俺今日は用事があるんだけど」


『用事? 一体どんな?』


「えっとだな。簡単に説明すれば今日俺の姉ちゃんと妹がうちに来るんだ。父親がいないから俺が家を空けないといけないから早く帰らないといけないわけで……」


『ふぅん。やっぱり怪奇谷君はシスコンなのね。……ちょっと智奈ー! 怪奇谷君シスコンだってー!』


「なっ……! なにバカなこと言ってんだ! 取り消せっ!」


『まあそれなら大丈夫だからとにかく来なさい。あんまり女性を待たせるものじゃないわよ?』


「一体なにが大丈夫なのかは知らんが、せめてどう言った相談なのか聞かせてくれ」


 これでもしまたどうでもいいような相談事なら引き返してしまおう。


『……え? ……なるほど……わかったわ。……大丈夫、あの人は変態だから。……あーごめんなさい。聞こえてる? 怪奇谷君』


「……ええ。ばっちし聞こえてるぞ」


 どんな会話してたんだこやつらは。


『内容より、この言葉一言で伝えた方が怪奇谷君なら食いつくんじゃないかしら?』


 意味ありげに言う富士見。そして続けて言った。


「ポルターガイスト現象……ってね」


 本日3度目だ。だがここまで話が出ればもう行くしかないだろう。


「いいのか? 帰らなくて」


 将棋部の部室へと向かう途中、ヘッドホンが心配したのか声をかける。


「ああ。よくないだろうな。でもこっちも放っておけないだろ」


 まさかたった1日でポルターガイストについて3度も聞くことになるとは思わなかった。となれば事実の可能性も高くなる。俺としても気になることではあった。


「ふ〜ん。シスコンかと思いきやただの幽霊オタクだったわけね」


「貴様までもがシスコンと言うのか……!」


 心外だ。これほどまでシスコンと言われなければならないなんて。それにしても富士見はなにを根拠に俺のことシスコンって言ったのか。

 考えていると部室に辿り着いた。俺はドアを開ける。そこには3人の女がいた。

 1人は富士見姫蓮。メンバー2の不死身の幽霊に取り憑かれた少女だ。

 そしてもう1人は生田智奈。メンバー3の将棋部部員の大人しくてちっちゃくて可愛い女の子だ。

 そして最後の1人。俺の知らない子なのでこの子が相談者なのだろう。身長はぱっと見低い。おそらく中学生だろうか? 制服がうちの高校のものではない。髪型がポニーテールの少女、そんなおとなしそうな子が座っていた。


「来たわね。それじゃ、一旦私たちは出るわ」


 そういい富士見と智奈は外へと出て行く。


「お、おい。なんでだよ」


「いいから。しっかりしなさい? あんまりふざけてると私、あなたのこと一生軽蔑するから」


 と、なぜかとんでもない捨て台詞を吐かれドアが閉められる。

 ポニーテールの少女と2人っきりだ。少女はなんだかそわそわしている。落ち着きがない。俺としては早く話を済ませておきたかったので、手っ取り早く要件を聞き出すことに。


「えっと、俺は怪奇谷魁斗だ。さっそくで申し訳ないんだけど、ポルターガイストについて話を聞かせてくれないか?」


 少女は俺の顔を見てゆっくりと口を開ける。


「あ、あの! そ、その……お、お姉ちゃんとか……好き、なんですか?」


 なんだ、それは。さっきの富士見のシスコン発言のせいか?


「は、ははは! 違うよ。まあ俺は姉いるけどさ、今は一緒に住んでないんだ。両親が離婚しちゃったからさ。別々に暮らしてるんだよ」


 少女はさらにそわそわしだした。うーむ、やりづらい。


「ほ、他には……なにか家族について思うことは?」


「そんなこと言われてもな……確かに昔俺は姉ちゃんが好きだったんだよな。恋愛対象とかじゃないぞ? ちょっと恥ずかしいけどな。まあ昔の話だし今だからこうして笑って話せるけど……他には特にはないかな……」


 少女は黙って聞いていた。質問の意図はわからないが、こんなこと言われても困るだろう。俺は話を元に戻す。


「そんでさ、その姉ちゃんが今日うちに来るんだ。だから早く帰らないといけないんだ。そんなわけで要件を言ってくれると助かるんだ」


「……コン」


 少女は静かに言った。


「ん?」


そして今度は先ほどより大きく言った。


「このシスコン!!」


「なっ……!」


 突然少女に怒鳴られた。先程のおとなしそうな雰囲気は一転し、顔を真っ赤にし睨んできている。なんでだ⁉︎ なんでいきなり怒鳴られる??


「な、なななにを言うのかね君は⁉︎ 初対面だと言うのに失礼ではないかな??」


「姉ちゃんなら今日は来れないってさ」


「はい?」


「だから姉ちゃんは今日は()()()()には来れないって言ってんの」


「え? なんでそんなこと君が……」


「はぁー! もういいよ! そういや自己紹介してなかったよね? よーく聞いておきなっ!」


 なんだこの子。急にキャラが変わったぞ。


「いい? あたしの名前は奏軸恵子(そうじくけいこ)。2度も言う必要はないよね?」


 待て。なんだと? 今この子はなんて言った? 奏軸。奏軸は俺の母親の旧姓だ。そして恵子。恵子は俺の妹と同じ名前だ。


 つまりだ。


「は?」


 今目の前にいる少女こそ、俺の妹だった。

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