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幽霊がいる世界  作者: 蟹納豆
神隠し編

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神隠し編その2

 授業も終わり、放課後となった。俺は富士見の約束通りに将棋部へと向かった。


「そもそもなんで将棋部なんだろうな?」


「さあね。実は将棋部の正体は全く別のもので、世界を救うために活躍してる正義の部活、『正義部』として活動しているのかもしれないぞ」


「お前の頭の中楽しそうだな」


 と、将棋部の部室へとたどり着いた。なにやら話し声が聞こえる。2人……2人分の声だ。1人は聞き覚えがある。富士見だ。となるともう1人は?

 ま、考えるよりまず動く。俺はノックをした。


「あらいらっしゃい。ようこそ将棋部へ。そしてここがこれからあなたの拠点となるのよ」


「は?」


「まあとりあえず入りなさい。ココア入れてあげるから」


 お茶じゃないのね。あ、そうか相手は富士見だった。


「お邪魔します」


 部室は教室の半分ぐらいの大きさで、ぱっと見狭く感じるがそうは思わなかった。人数が2人だけだったというのもあるのだろうか(俺含めて3人と1機だが)


「……こんにちは」


「……ども」


 俺と富士見以外にもう1人の人物。ちょこんとそこに少女はいた。

 実際にはそんなに小さくはないのだが、その佇まいというか……雰囲気が小さく感じた。黒髪でショートヘア。あまりこちらに目を合わせてくれない。人見知りなのだろうか?


「さぁ、そこに座って。ああ、聞き忘れた。怪奇谷君? ホットとアイスどっちがいい?」


「アイスで。このやりとり前もやったよな」


「いいじゃない? 私とあなたの仲でしょ?」


 まだ会って4日しか経っていないのだけどな。


「で? さっきのはどういうことだよ。ここが俺の拠点? どういう意味なんだよ」


「前に話したじゃない。私はあなたを手伝うって。それにはちゃんとした組織が必要だと思うの」


 はあ、組織。俺はあまりそういうのに組するのが好きではないんだがな。


「それにあなたは以前から相談を受けていた。この際それを正式にやろうという魂胆よ!」


「富士見、いつになく燃えてるな」


「ええ。将棋部もたった2人。活動もただ部室にこもってひたすらに対局するだけ。こんなことになんの意味があるというの?」


 それは全国の将棋部に謝るべきだと思う。


「え? それより富士見って将棋部なのか?」


「そうよ、言ってなかったっけ? ちなみに部長よ」


 部長、というところだけ少しボリュームが大きかった気がするが気にしない。


「となると、その」


 俺は富士見の隣に座っている少女に顔を向ける。俺の視線を感じたのか、少女は表情を変えずに下を向きながら。


生田智奈(いくたちな)と申します……よろしくお願いします……」


 生田智奈と名乗った少女は俺に自己紹介をした。あまり人と接するのが得意ではないのだろうか?


「あ、ああ。俺は怪奇谷魁斗。そ、そのよろしくな!」


「……」


「……」


 ん? 俺はなにか選択をミスったのか??


「申し訳ないけど、智奈をそういういやらしい目で見るのはやめてもらってもいい? あなたこういう弱々しい子が好みなの? 軽蔑するわね」


「してないし、富士見も富士見で相当ひどいこと言ってないか?」


「……そうね。訂正しましょう。こんなか弱い子をいやらしい目で見て! この変態!」


「はぁ⁉︎ さっきよりひどくね⁉︎」


 こんなやりとりをしているというのに当の本人は全く表情を変えずにそこにいた。なんか、怖い。


「ということで、ここは今から将棋部兼、幽霊相談所! あなたはそのリーダーよ!」


 なんだかすごいことになったな。とうとう幽霊相談所という名前まで付いたのか。もはや将棋は関係ないな。


「と、唐突すぎる! なんだよ幽霊相談所って! っていうか……その、生田ちゃんに迷惑かかるだろ」


「は? 生田ちゃんとかなに? 人の後輩をそんな風に呼ぶのは許せないわね」


 俺も勢いで言ってしまったが、いきなりちゃん付けはまずかっただろうか。


「た、確かにそうだな。じゃあなんて呼べばいい?」


 俺は少女に向かって問いかける。


「大いなる神、智奈様」


「富士見は少し黙っててくれ」


 俺は富士見を黙らせ、もう一度少女に問いかける。


「……」


「……」


「……」


「……奈」


 おや? かすかに聞こえたぞ。


「え?」


「智奈……そう呼んでください」


 最初に見た時から俺はこう思っていたのかもしれない。なんだこの生き物、可愛すぎるぞ。


「ちちちちちな! おおおおおおっけい! マカセロン!」


「ちょ、智奈! 早まってはダメよ! この男は変態だというのにいきなりそんな呼び捨てなんて、しかも名前で!」


 富士見がうるさかったがまあ放っておこう。なんだろう。この、守ってあげたい感は。


「ち、智奈がそうだな。智奈がいいって言うなら……そうそう智奈がね。智奈がいいなら幽霊相談所やってもいいよ? 智奈がね?」


「怪奇谷君、必要以上に名前を呼ぶ意味はあるのかしらね?」


「……大丈夫です。将棋部がなくなるわけではないし……それに」


 うん、やっぱりこの子可愛いな。


「それに……姫蓮先輩に笑って欲しいから……」


「智奈……」


 この子も、富士見のことちゃんと考えていたんだな。ちょっとふざけていた思考が正常に戻る。


「姫蓮先輩の体、治してあげてください……えっと……」


「怪奇谷でいいよ。あ、魁斗でもいいよ?」


 智奈はゆっくり頷くとゆっくり口を開いた。


「か、魁斗……先輩……」


 おお、やっぱり可愛い。


「智奈。あなた魔性なのかしら?」


「おい、アンタ。いい加減そのニヤケ顔やめろよな」


「っておい! お前喋るなよ!」


 突然ヘッドホンが喋るので俺は慌てて誤魔化す。


「ははは! 今のは、なんだ?? 心霊現象だよ! あ、ポルターガイストってやつだ! なんだろうなぁ〜」


「いや待てって。そこの地味子言ってただろ? ふじみーの体を治してあげてくださいって。つまりだ。幽霊関係のことはもう知ってるんだろ」


 そう言われて俺は気づく。確かに知らなければ体を治してくれなんて言うはずはない。


「えっと、富士見。話したのか?」


「ええ。これからここを使うというのに隠し通すわけにはいかないでしょ?」


 まあそれはそうなのだが、ここを勝手に使うと言ったのは富士見なのに。


「富士見。一応言っておくが、そういう話はベラベラ人に話すもんじゃない。前にも親にあっさりと言ったって言ってたけど、今後は出来るだけ控えるんだ。いいな?」


 富士見は不思議そうに俺を見たが納得したようだ。それにそんな話を聞いてよく智奈は納得したな。


「それよりヘッドホンさん。ふじみーとは私のことかしらね?」


「お、そうだ。言っとくが変えるつもりはないぞ。アタシはこれと決めたら変えない主義なんだ」


 よく言うぜ。最初はあの女だったのに。


「と言うことで怪奇谷君。あなたはリーダーよ。そしてヘッドホンさんがメンバー1。私がメンバー2。最後に智奈がメンバー3よ」


 完全に巻き込んでしまっている。とても申し訳ないな。


「いい? じゃあとりあえず点呼とるわよ」


 どうでもいいのだが。なぜ富士見はこんなにも生き生きとしているのだろうか。


「私が役職を言うから返事をしなさい。いいわね?」


「拒否権ないだろ」


「リーダー!」


「はい」


「声が小さいわね? お仕置きが必要ね」


「……はい!」


「よろしい」


「はい、次! メンバー1」


「は〜い」


「次、メンバー2……あ、私か。ゴホン……はぁい!!」


「……」


「次、メンバー3!」


「はい……」


「よろしい。今日から幽霊相談所、始まるわよ」


 このくだりはいるのだろうか……っていうかそもそもリーダーってなんだっけ?

 とまあ……今日この日から将棋部は


『将棋部兼幽霊相談所』


 となったのだった。

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