不死身編その10
私は死ななければなりません。このノートを見ているということはあなたは怪奇谷君、でいいのかしら? もう私は会っているだろうけど初めまして。富士見姫蓮と言います。
突然ですが、私を、私の両親を助けて欲しいのです。私の両親はある男に拉致され、監禁されています。その男は私に酷い恨みを持っているようです。その男は私に言いました。
『両親を助けたければ、お前は今日自殺しろ』
私は考える余裕もなく、すぐに自殺することにしました。これを読んで私のことが異常と思うかもしれませんが、私にとって両親とはそれぐらい大切な人たちなのです。
私はその日に、ビルの屋上から飛び降りました。しかし、なぜか私は死ななかったのです。私はもう人間では無くなったのかとも思いました。私はそのことを男に伝えました。すると男はこう言ったのです。
『お前は幽霊に取り憑かれたんだよ』
幽霊。その時は全くピンとこなかったですが、信じざるを得ませんでした。
その男曰く、幽霊を祓うことが出来る人がいると聞きました。その中でも身近だったのが怪奇谷君、あなたでした。
私は怪奇谷君にこの幽霊をなんとかしてもらうからそれまで待って欲しいと男に言いました。男は私に盗聴器を付けて、妙なことをしなければいいと言って私を自由にしました。
私は両親を助けたいのです。だから私は死ななければなりません。
けれど、もし。もし許されるのであれば、私も本当は死にたくはありません。もし私を助けれるような方法があるというのなら、私のことも助けてください。
おそらく、このノートを見るまでは私はわけのわからないようなことを喋っているかもしれません。
それは許してください。私は生きたいや、助けてという言葉を発することが許されていません。少しでも妙なことをしてしまったら、両親はその場で殺されてしまうからです。だから失礼なことを言っていたら謝ります。ごめんなさい。
ここまで読んでくださってありがとうございます。口では絶対に言えないことなので、もしこの後私と会ってもノートのことは口にしないでください。最後に、もう一度だけ
私と両親を、助けてください。
あ、ちなみに盗聴器は胸の谷間に隠してありますので
「だってよ。クソ! 俺はなにをしていたんだ」
「まあそう自分を責めるな。こんなの気づくわけがないんだ」
富士見は両親を殺していなかった。むしろ、その両親を助けるために必死になっていたのだ。
「これで全部辻褄がほんとにあったな」
最初に、自分の家を提案したのもこのノートにたどり着かせるためだろう。さっきの電話もきっとその男とやらだ。今はきっとその男に会いに行っているのだ。そうすれば俺の行動は男にはバレることがない。
「さて、展開がころころ変わるね〜」
「ああ、でもこれはいい展開だ。助けるぞ、富士見を」
俺の提案はこうだ。富士見には幽霊の解決方法が見つかったと伝える。そうすれば男とやらも俺の行動の一部は見逃すはずだ。そう、例えば意味のない行為もそれは意味のある行為だと思わせることが出来る。
そこで俺はその方法の1つとしている服を全部脱がせる。そん時に隙を見て盗聴器を壊す。これが俺の作戦だ。
「いやいや、待て待て。なんだ脱がすって! そんなの黙って見てろって⁉︎」
「しょうがないだろ! 盗聴器がよりにもよって胸なんかにあるからいけないんだ。それから、ヘッドホン。お前は出来るだけ喋るな。わかったか?」
あくまで俺以外に余計なことはしてほしくなかったというのが正直なところだった。
「チッ……。わかったけどさ。その後は? 盗聴器を壊したあとどうするんだよ?」
「どうって、壊せればもうこっちのもんだろ」
「いや、なにがだ。盗聴器が壊れたらその男ってやつもさすがに気づくはずだろ? そしたら両親は殺されてしまうんじゃないのか?」
確かにそれはまずい。ノートを改めて見てみると監禁されている場所は示されていた。(先ほどのは全文ではなく、重要なところだけを抜き取ったものだ)場所はわかるがここからでは若干遠い。壊してから向かうのでは手遅れになるだろう。
「警察……もダメだよな。そもそもなんて説明すればいいのかわからないしな」
「大体その男ってナニモンだ? 幽霊のこと知ってるみたいだったし」
それも気になるが今はそれどころではない。こういう時に頼るべきは……
『なんだ、魁斗! 今仕事中だぞ!』
父親である怪奇谷東吾に連絡をした。俺は父親がなんの仕事をしているのか実はよく知らない。『何でも屋』とか言って具体的には教えてくれない。
しかしその分、俺は父親に遠慮なく無謀な頼みをすることが出来るのだ。俺は細かい説明は省き、それとなく説明をする。
『魁斗。それについては任せろ。ただしだ! お前は用事が済んだらとっとと帰れよ。いいな? それが父さんからの条件だ』
俺は了承して電話を切る。こういう時は本当に役に立つ。
「しっかしまあ、アンタの父さんも変わってるよな〜。あんな頼みごと普通は信じないって」
ある場所に富士見の両親が監禁されている。タイミングのいい時間になったらそこから助け出してやってくれないか?
というのが俺の頼みだった。まあ確かに普通はなんだそれ、となるのが当たり前である。しかし俺の父さんはそれをあっさりと「わかった!」で受け入れてしまうのだ。
「でももしその監禁してる男がヤバいやつだったらどうするんだ? アンタの父さんヤバいかもよ?」
「だからことが済んだら俺も向かうさ。さすがに丸投げするつもりはないしな」
さて、後は富士見の帰宅を待つだけだ。俺は再び天井を見上げる。
「待ってろ。必ず助けてやる」
これで、全てが終わるのだ。俺はその時が来るのを待ち続けた。




