春の岬に行こう
青い自転車で、岬に行く。
ずいぶん久しぶりにむかうので、
なんども足をついて、迷うだろう。
変わってしまった町並みに、
ちょっと寂しさおぼえたり、とか、
さえ、するだろう。
晴れわたる大空にうかぶ
ペンシルのような薄っすら白い雲が、
鮮明に飛行機をえがこうとして
なんどもなんども、失敗している。
それは羽根がないんだよね、
まるで、新幹線のひかり号みたいな
懐かしい丸みをおびた浮き雲。
どこにも行けずに、
風に吹かれてぺしゃんこになる。
ハハーン、
昔を美化してはいけないという、
正義のヒーローのマントだね?
え?
それはマントじゃなくて、
世紀をひとまたぎした人の「ヒント」、だね?
そ、そういえば、地球上には、
この美しくも愛に満ちあふれた惑星には、
自動車という無粋な乗り物があったね。
でも、そんなの今日は使っちゃダメだ。
岬まで走るなら、
昔から乗っている
ピッカピカに洗った
青い自転車でなくっちゃ。
迷いながら、
探しながら、
昔のちっちゃなころの記憶
その記憶の細い紐を両手で
慎重にたぐり寄せながら、
ゆっくりでいいので、ゆかなくっちゃ。
口笛、吹きながら。
もう、春はそこまで来てるから。
僕も、陽気に走るんだ、
春の訪れ、その、切ってる風にかんじて。