その夜の月の色は、だれも知らなかったんだ。
あたたかくて、美味しい
ホットミルクを飲む。
私は、猫舌じゃないからね。
あなたは、冷たいので、いいよね?
正真正銘、ホンモノの、猫だもんね?
猫のくせに、猫舌じゃないなんて、
人のくせに、人でなし、みたいな話じゃん。
あの人みたいな、話じゃん。
ねぇ、あなた、アリガト。
居てくれて、ありがとうございます。
あなたが、居てくれなかったら、
私、もう2度と
笑顔に戻れなかったと思うの。
あんな目に遭って、
でも、私にも悪いところもあるから、とか
振り返って反省していたバカ女だから。
悪くないのに、
悪いのは、みんなあの人なのに、
私が頑張れなかったから、とか、
自分を責めてしまう今でも気を抜くと。
そんな、バカげた思考は、
断ち切って、しまいたいの。
あの人のせいに、しておけばいいさって。
にゃ〜にゃ、にゃ〜にゃ〜にゃ、にゃ〜?
って、猫よ、あなたこのバカ女、
慰めてくれたでしょ?
駄目だよ、
振られたばっかりの女は、
優しくされると、
優しくしてくれた猫のこと、
好きになっちゃうゃうんだから。
いいのよ、ホントは、あなたに、惚れても。
でもね、あなた、
バカみたいな話だけど、
あの人が遺していってくれた、
猫だもんね?
最期の、
贈り物だもんね?
こんな、バカな私、
この世界で一番バカな私だから、
あの世界に行ったあの人を
追わない約束させられちゃった、
バカで、バカで、バカで、
大バカだから、
自分の意志を
最後の最後に相手に伝えられなかった
『あなた、いっしょに、行きたい』
って。
どおなのかな?
ちゃんと言えば、良かったのかな?
でも、
言ったらあの人、泣き出しそうだし、
それなら、ものわかりよく、
猫のために生きることにして。
だから、
涙を拭いて、笑ったわ。
ねぇ、
ちゃんと笑えて、いたかしら?
駄目ね、猫。
私やっぱり、あなたに惚れられないや。
まだ、もうちょっとだけだと思うの。
あの人のこと、忘れられないや。
でもね、猫。
私ホントは、今でもあの人、追いたいの。
追わない理由がある。
猫。
ねぇ、あなた、だよ?
ねぇ、猫?
ねぇ、猫?
私、いつになったらしあわせに
戻れるのかしら、ねぇ?
ねぇ、ねぇ…こ………?