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火の精霊トール

        第一章



「森の心の糧となっておくれ……」

 彼の最後の言葉。

 私を信じているからと、

 彼は言って、もう、

 姿を見せることはない。


 私の運命を変えてくれたーーーーー






     1  火の精霊トール



「あ〜〜〜っもう、イライラするわね !! 」

 からっと晴れた午後。

 その声は、驚いた鳥達が八方に逃げ行くほどの地響きと共に廃墟の森に轟いた。

「なんであたしがこんな肩身の狭い思いをしなきゃなんないのよ!みんなロイアスのせいよ、お前なんてこしてやる!こうしてこうして、こうしてやるー !! 」

 ごうごうと一掃するがごとく燃やし尽くす木切れの炎。それは、火の精霊トールの激しい憤りの炎。

 彼女の、もとい、彼の容姿は見目美しく、黄土がかったストレートのブロンドの前髪は、分けて両耳をつたって肩まで垂れ下がり、後ろ髪は首あたりで束ねている。

 腕や首や腰にはきらびやかな装飾品を身につけ、美しい花鳥柄の血のような真っ赤な衣装を身にまとっていた。

 たれ目がちな目の上の細い眉は、常に憎しみの色を備えてつり上がっている。

 ぜーはーぜーはー

 彼は慎ましやかに傍らに控えている一人の妖精の方を振り返った。

 その妖精の全身はちょうどトールの顔程の大きさで、朽ちた木の幹に膝間づいている。

「どお!?アプレイナ、このあたしが、あんな唐変木より劣っていると思う!?」

 ピクッとアプレイナの頬が引きつった。

「とんでもないですわ、トール様。この世界はトール様あってこその世界。あなたのその優れた猛火を持ってすれば、ロイアスはもとより、神の力とてかないませんわ」

 彼女の両手を使ったオーバーなジェスチャーは、端から見れば本心から出た言葉かそうではないか容易に読み取れる。

 しかし、トールは当然のように額面通りに受け取った。

「そうでしょ!?お前もそう思うでしょ!?なのにどうしてあたしがこんな荒れ果てた地に追いやられなきゃならないのよ!!」

 そう言って、じだんだを踏むトールににっこり微笑んでアプレイナは言った。

「どうかご安心を、トール様。わたくしにお任せくださいませ。今日中に、あの憎きロイアスの森を手に入れる策をすでに企てております」

「なに?本当なの、アプレイナっ。見直したよお前、いつの間にそんな策をたてたのさ。まぁいいわ。まかせる、お前にまかせるよ。だから一刻も早く何とかしてちょうだいっ!」

「はい、もう事は動いております。後は待つだけ…」

 アプレイナは虹色に光る背中の羽を広げると空高く舞い上がり、細く枯れたにれの木に着地して一点を凝視した。

 その先には人間の住む町が地に広がっていた。








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