学生番長黒崎の日常❷
文化祭当日。
「くーろにゃ〜んッ、準備はおーけーかにょー?」
「あ、はい、OKですよ」
フワッと長い黒髪を靡かせて、黒崎は微笑んだ。
「か、可愛いじゃないかッ……!」
そうして周りの男子どものハートを、無意識のうちに撃ち抜いてゆく黒崎の微笑み、恐るべし……。
マイクに向かって、成瀬は叫ぶ。
「にょっふぅ〜っ! ではでは〜ッ、2年2組の出し物劇、“ロミオとジュリエット” の始まり始まりだにょッ!」
まぁ大して問題なく台本通りに進んで、舞台もようやく終盤となり、台本通りに無事終わるはずだった、のだが。
「あぁジュリエット! どうして君はそんなにも美しいんだ! くっ……俺には眩しすぎるぜっ!」
「知りませんよ、そんな事。というか、もう帰ってください。目障りです」
『ちょっと! なんで台本通りに進んでないにょ?! アドリブばっかりだにょ!』
『アッシたちにも訳がわからないっス、親分ッ!』
『親分って呼ぶなって、さっき言ったにょよっ!』
主演俳優達の身勝手な言動に慌て出す裏方達。
「嗚呼いっそ、貴女を一思いに殺してしまえたら!」
「はぁ? 僕が殺されるわけないでしょう、貴方なんかに。てか貴方こそ目障りで耳障りですから、僕が刺し殺して差し上げましょうか」
「えっちょっ、ちょちょっ待っ、ななナイフは危ないって! てか、どっから出てきたそのナイフ?!」
だんだんロミオとジュリエットの立場が変わってきている事に、まだ気づかない観客。
『黒崎君がナイフ持ってるよ、アブナイよ、ドS感ハンパなくて鼻血出そうだよ、可愛過ぎだよ破壊力ヤバイよどうしよう!?』
『貴様は黒にゃんに殺されとけにょ!』
「ええい、面倒臭い! もう寝ちゃおっかジュリエット! ─pi──とか、─pi──とかしちゃう?! そしたら俺、お前を気持ちよくイかs」
「黙りなさいっ! なに放送禁止用語を連発してんですか、規制音まで入ってますよ!?」
「ああ! 俺の左腕の薬指が疼きだした! このままだと、薬指からラーメンが出てしまう!!」
「指からラーメン出るんですか?!」
「……んッ……あっ……ふぁッ、で、出ちゃうッッ、薬指ッ、からっ、らぁめん出ちゃう、からぁ……」
「そこで色っぽく言う必要性が、全く感じられないのですが!」
「はぁぁぁぁッッ! 出でよ、俺のラーメン!!」
「ラーメン召喚儀式みたいな雰囲気、出さなくて良いですよ?!」
「あっはぁーんッ、オニーサン、薬指から出たラーメン食べるぅー?」
「今度は銀座のママですか!?」
『なんか、話が変な方へ行ってる気がするにょよ?!』
『ダイジョーブ! 気のせいサネ!!』
『全ッ然、信用出来ないお答え、ありがとにょ!』
「ねーねージュリエットぉー、俺、ヒマだよーっ」
「知りませんよ」
「あぁん、ジュリエットってば冷たいんだからぁー♪ あったかくしてぇ♪」
「うるさいです」
「あ、まさかコレって放置プレイ? きゃー、ジュリエットってば、ツ・ン・デ・レ〜っっ!」
「黙れクズ」
「やっだぁ、まさかコレは愛の鞭? しかも急なタメ口っ! きゃーん、不覚にもこのロミオ、ずっきゅぅぅんっとなってしまいましたぞ陛下!」
「黙れ」
「やだぁ、殿下ったら、つぅーめぇーたぁ、ーい〜ッ♡」
『黒にゃんの機嫌が悪くなっていってるにょ!』
『可愛いよねぇ……さすが、ボクの嫁だね!』
『あ、ごっめぇん。お前そういえば、勘違い変態野郎だったにょぉ! 超ウケるにょ〜ッッ!』
『うっさい、普通にしてたら可愛いはずの、残念な脳内お花畑腐女子めッッ!!』
『……テメ、社会的に死にたいのかにょ?』
『すんませんごめんなさい、ふざけましたッ!!』
黒崎は、何故か舞台ど真ん中に置いてあったソファに座って、肘をついていた。
「というか、僕はこんなことに余計な時間を割いている場合じゃないんですよ。闇暁族の仕事もあるし。帰っていいですか?」
黒崎は一応、この辺では凄く有名な闇暁族という暴走族の番長なのである。
「だめぇぇぇっっ、俺が寂しいからだめぇぇ!!」
「知るかバカ」
観客は、まだ気づかない。
これが全てアドリブだということに。
「あ、迎えが来たので帰らせてもらいます」
いつの間にか窓の外に赤いバイクが一台。
ドッドッドッ、と音が聞こえる。
「では、皆さんさようなら」
ひゃぁあああっと上がるのは、観客達からの悲鳴。
それの原因は間違いなく、黒崎がヒョイッと軽く窓の外へ飛んだことであろう。
ここは5階だから、ハタから見れば、もはや飛び降り自殺である。
が、そこは黒崎、頭も顔も運動神経も何もかもが良い、全世界の女神様から溺愛されているような男である。
何事も無かったかのようにスカートをふわっとさせて着地し、迎えのバイクの後ろに飛び乗り、そのまま消えてしまった。
ヒロインは消えたが、劇は無事終了……、
「てかさ、黒崎は俺の嫁だよ?! 勘違いしないでくんないっ?」
「は? 貴様こそ何を言っているのだね? 黒崎くんは、ボクの嫁に決まっているではないか!!」
……しなかった。
こうして黒崎の文化祭は終わったのだった。
作者の緋和皐月です。こんにちは。
はい、では問題です!
【タナヒコ】とは誰でしょう!
チッチッチッチッチッチッ……
答えは……、
CMの後で!(←嘘だぉ)
答えは、小日向充、でした☆
何故そうなったのかというと、
「小日向」
↓
「こひなた」
↓
ひっくり返す
↓
「たなひこ」
……というわけです!(´▽`;)
気づいて頂けてましたか?
なんでひっくり返したのか? それは作者の永遠の謎だよ!