学生番長黒崎の日常❶
「俺と愉快な仲間たち!」でキャラが濃い登場人物 No.1、かもしれない黒崎さん。
一体、その過去とは……?
だって黒崎さんだよ? 気にならないわけないでしょ!
というわけで、当時17歳だった黒崎さんの文化祭の思い出を、チラ〜ッとご紹介☆
10年前の黒崎は、果たして、どんなメンツに囲まれていたのか?
黒崎夕都。17歳にそ東ヶ丘高校生徒会長であり、地元では有名な闇暁族という暴走族の番長。
別名、『東の凍瀧』。
その切れ長の黒い瞳は、ナイフを研ぎ澄ませたかのように鋭く、漆黒とも言える黒髪は少し長めで、首筋を半分くらい隠している。
時折ちらりと見える白い首筋が、なんと色っぽいことか。
しかも超美形だし。
どんな生徒だとしても、いや、教師ですら、やがては黒崎の虜になるのである。
よく晴れた、秋のある日の昼休み。
黒崎はいつものように、1番後ろの自分の席で、静かに、読書をしていた。
……のだが。
「黒にゃん! 文化祭どぉするにょー? 未優、ロミジュリ劇したいにょん〜。黒にゃんも、ロミジュリが良いと思うにょね? ね?」
「……他人の読書の邪魔をしないでください、成瀬さん」
黒崎は冷やかに言葉を返す。
「にょあん、黒にゃんったら冷たいにょ〜♪」
黒崎に冷たくされても平気でヘニャリと笑う、このバカっぽい女子は、成瀬未優。
口調、主に語尾からバカっぽい印象を受ける成瀬だが、実は常に学年成績 No.2の学級委員長(ちなみに常に No. 1は黒崎)。
成瀬に何か相談すると、大体のことはどうにかなる(何故なら成瀬が、毎回、黒崎を巻き込んでいるからである)。
が、その実は、かなりのド変態な腐女子である。
「黒にゃんはぁ、Sでも良いけどぉ、Mでも良いと思うにょん」
「男女逆転劇ですか?」
「いや、性別不問劇にょ」
どういう劇だヨ。
「にょははははーっ♪ つーまーりーっ、♂のロミオと ♂のジュリエットでも良いってことだにょ♪」
「……はい?」
「♀ロミオと♀ジュリエット女子でも良いし、普通に ♂× ♀ってゆ〜定番でも良いんだけどにょ〜、やっぱBのLが1番萌えるしぃ?」
「は?」
「だ・か・らぁ〜」
成瀬はニヤ〜ン、とする。
「黒にゃんは 女役ってわけだにょ♪」
「……」
一瞬の沈黙。
「はいっ?!」
「にょふふふふ♡」
文化祭へ向けての夏の演劇練習。
「あぁジュリエット!」
「ん? あ、え〜っと……アァ、ロミオ。アナタハドウシテ、ロミオナノ」
「だからっ、なんで棒読みになるにょ?!」
キッラーンッ!
「あぁ、黒崎くんは今、ボクを試しているんだねッ? ふははははは、その愛の試験にきっと合格してみせるさッ!」
「出たにょ、勘違いキランキモ男子!!」
またもや、強烈なキャラ登場。
名を、伊集院充彦という。
えー、コイツは成瀬に並ぶ、かなりのド変態な腐男子である。
ちなみに、分厚い牛乳瓶底みたいなレンズのメガネを掛けている。これぞ定番、なウンチク大好き、メガネくんである。
数多くある彼の問題点で、特に挙げられることは、間違いなく『勘違い&思い込みが激しい』という点であろう。
「思い込みが激しいなんて、失礼な。だってボクは、黒崎くんの旦那だよ?」
うん、こういうところである。
一応言っておく。
黒崎は、誰のモノでもない。
また、伊集院がマトモなことを言ったりしていれば、それは間違いなく天地がひっくり返る時または人類が消滅する時だ、と断言される。
そしてちなみに、伊集院の役は、ロミオではない。
伊集院は、完全なる脇役である。
が、ロミオ役がまだ決まらないので、本人の強い希望から、ロミオ役が正式に決まるまでは伊集院が代役をすることになったのであった。
「黒にゃん、真面目に演技してくれにょ〜ぅ」
成瀬が泣きそうになりながら言う。
「……だって、こんな服着て演技とか……やる気失せるますし」
無意識に黒崎が艶っぽく目を伏せると、ほぉぉぉ、と周りの男子達がざわめく。
なぜなら?
黒崎の格好がメチャクチャ可愛くて、その上その格好がメチャクチャ似合っているからである!
青をほんの少しだけ混ぜたような澄んだ緑色のドレスには、黒い刺繍がされ、アクセントに1つの黒いガラス石がつけられている。
さらさらとして、窓から差し込む日の光を滑らすのは、背中まである長い黒髪……これは地毛のように見えるカツラだ。
そして、その黒髪につけている、黒いヘアバンド(ホントは黒髪ズレ防止用につけている)。
一般の男子がこんな格好をしたら、気持ちが悪いだけの変態となりうる。
が、黒崎の場合は超がつく美男子なため、女装しても違和感なんて全く無いのである。
そのため、クラスの男子、いや男性教諭でさえも、思わず鼻の下を伸ばすレベルの、絶世の美少女になっていた。
そんな黒崎が、はぁ、と溜息つく様子がなんと色っぽいかことなのかは、無理なくご理解頂けるだろう。
「……やべぇ、なんかムラムラする……」
「女装した黒崎の破壊力ハンパねぇな」
「溜息だけなのに、超えろい……」
健全な男子たちは、揃って悩ましげに溜息ついた。
と、その時。
ドガッシャ──ンッッッ!!
何かを壊した盛大な音がした直後、
「痛っぁああああああっっっっ!?」
眠気も色気も何もかもが、吹っ飛ぶような叫び声が響いた。
「だ、大丈夫ですか?」
黒崎は、恐る恐る声の主に近づく。
と、そこには、栗色髪の男子生徒が1人、うずくまっていた。
「ぅううう〜……痛いぃぃぃ……」
「……どこが痛いんですか?」
「頭が痛いんだよぉぉぉ……」
「……なんで?」
「……ッ、それ! それが悪いッ! そこに、そんな硬くて重いの、い〜っぱい置いてるからいけないんだぁあああッッ!」
ビシィィィッ! 栗色髪の男子は、壊れた大道具を指さした。
大道具は、凄〜くわかりやすく置いてあったはずだ。『危ない』とでかでかと書かれた、目立ち過ぎて逆に迷惑な、デカすぎる看板も側にある。
なのに、それに気づかず、ぶつかって負傷するなんて……
「……貴方、バカなんですか?」
「バカじゃぬぁいっ!」
「じゃあ何なんですか」
「え? え〜っと……俺は……俺はッ!」
「はい」
「俺は……タナヒコだッ!」
「……」
黒崎は、一瞬、絶句した。
「手当てしてくれて、ありがとぉ」
「どういたしましてにょ♪」
タナヒコの傷を手当てして、可愛く笑む成瀬。
普段からこんな風に普通にしてたら、超可愛い女の子なのに……ということを本人の前で言うと、無理やり束縛された全裸姿を撮られまくった写真がネット上に拡散されるため、誰もそんな余計なことは言わない。
良い子の皆さん。それは犯罪ですからね、絶対してはダメですよ?
「しっかしまー、黒にゃん、もうチョイ可愛く演技できないかにょ〜?」
「無理ですね」
そっかぁ、と成瀬が頷いた。
「てなわけで、タナヒコにゃんロミオ決定」
「……は?」
変態腐女子監督の話についていけないのは、いつもの事である。
文化祭へ向けての演劇練習、最終日。
「おぉジュリエットぉ〜!」
「あ、蚊が止まってますよ」
「え゛ッッッ?! どこドコ何処なの?! 取って! 俺、蚊とGだけはマジで嫌いなんだよッッッ!」
「あ、目が合いました」
「蚊と?! エッ蚊と目が合ったのッ?!」
「あ、貴方の血を吸ってますね」
「だからどこなの! 取ってってばーッッッ!!」
バシィィィッッ!!!
「痛ぁあああああっっっっ?!」
「潰れました」
「俺の腕も潰れるかと思ったっ!」
「貴方も蚊だったんですか」
「いや違うよ?! 俺、どっからどう見ても生身の人間だよ? 天然なのかなジュリエット?!」
こうして文化祭の劇の練習の日々は無事、終わったのであった……
「えっちょっ何すr……ジュリエットぉおおおッッッ?!」
……訂正。
無事じゃなかった。
*放課後の帰りの会*
きりーつ、れーい、着席〜!
伊集院「さぁー、今日から始まりました新コーナー、『帰りの会』! 司会はわたくし、伊集院でごぜぇやす! キッラーン!」
成瀬「ちょっと! 帰りの会は、いつも通り美優がするにょよ。メガネは黙っとけにょ!!」
日野下「呼ばれてないけど、ジャジャジャジャーン! 出番無くて作者に文句言ったら、帰りの会には出て良いよって言われた、飛び入り参加の日野下だよッ!」
(いや言ってませんよ?! by. 作者)
伊集院「今回の主役はなんと、黒崎夕都! 名前からしてカッコイイ、皆のアイドル。そしてボクの嫁でもある黒崎くんだよねッ!」
小日向「は? イヤイヤ何言ってんの? 黒崎の旦那はこの俺、小日向サマよ?」
伊集院「思い込みは困りますなぁーッ、小日向さんッ!」
小日向「客じゃないから! 本編の主役だから一応!! てかお前こそ新参者じゃねーかッ!」
日野下「エッ伊集院っち? 違うよ黒崎っちは、わたしの嫁なのよ? ねー、黒崎っち♪」
ドスドガズゴッッッ!
黒崎「帰りの会、ですよね〜ぇ?」
「「「「ごめんなさいでした」」」」
クラスメート「では学級委員長、今日の反省をどうぞ」
成瀬「えっとぉ〜、今日の反省は、理科の先生がハゲていたことだにょ!」
黒崎「反省なんですか、それっ?!」
成瀬「えー? 理科の先生のツルツルピッカな頭にそよぐ数本の髪の毛のせいで、美優、全〜然、授業に集中できなかったんだにょ〜」
黒崎「いやどうしてですか?!」
成瀬「スルメイカだにょ!」
日野下「えっ何が何が? 日野下さんも食べる☆」
成瀬「お前はアタリメ食べるかにょ?」
小日向「いや、要るかぁ!?」
伊集院「仕方あるまい、ボクがもらってあげるよう」
成瀬「キモメガネに、美優があげるとでも思ったかにょ? うわー、自意識過剰だにょ」
伊集院「うっさいぞ、脳内お花畑腐女子!」
成瀬「そんなことほざいてると社会的に抹殺するにょ、前回テスト平均62点の低学力勘違いキモメガネ! そのメガネの分厚さは、ふざけてんのかにょ?」
……こーゆーわけで帰りの会が終わらなかったので、皆、帰れませんでした。
クラスメート「ぼく、今日、塾の日なんだけど……」
黒崎「ご愁傷様です。僕で良ければ、解説してあげますので、怒らないでください」
クラスメート「え、ほんと? いいの? ありがとう、黒崎くん」
黒崎「こうなった原因に、僕が関わっていないわけでも無いので、せめてものお詫びです……」