肝試し
あたしーー荒木 六重ーーは勝ち誇っていた。
ここーー京王子霊園ーーに伝わる、黒百合の墓の伝説にはこうある。
汝。一生を添い遂げたい者あれば、その者と共に、汝が真名を刻みし供物を黒百合の墓に供えよ。
さすれば、汝の願いは叶うであろう。なお、その対価は番の命への呪詛である。
よく前半だけが独り歩きしたような噂があるけれど、この伝説によって叶う恋は幸せな恋ではない。
結ばれれば、黒百合の墓に命を持っていかれるのだから。
でも、あたしはこれを利用することで、復讐を果たすことができる。
※※※
私は勝奈とペアになった。
まあ、すぐに終わらせてしまいましょ。
【怖い怖い怖い】
意外と怖がりなのね。この子。
「怖いのなら、無理しなくてもいいのよ」
「べ、別に怖くなんて……」
【怖い怖い怖い】
「そう。なら、いいのだけど」
もう視なくていいわね。
「は、はやく終わらせちゃいましょ」
奥の墓につくと、私たちは石を置いた。
「あれ? あんたなんで名前書いてないの?」
「いいじゃない。別に」
「ま、まあ」
「それより、はやく戻りましょう」
※※※
最初のペアが戻ってきた。
「さ、行くぞ。津田」
「はい」
墓地とはいっても、暗いだけで怖くないな。
「なあ、津田。1ついいか?」
「なんでしょう」
「さっき言ってた、林って誰だ?」
その話か。この人も覚えてないのか。
「俺の勘違いですよ。気にしないでください」
「そうか。なら、いいが」
そんな話をしているうちに、目的の墓についた。
「足利先生。なんで石に、先生って書いてるんですか」
「女は軽々しく名前を書かないいんだ」
だから、この人結婚できないのか。
「そんなことより、さっさと戻るぞ」
「はい」
※※※
あたしーー荒木 六重ーーの順番が回ってきた。
「さあ、行こう。黒木さん」
この人は苦手なタイプだな。
何事もなく、あたしたちの順番は終了。
別に怖くもないし、何かあるわけでもないし。
※※※
僕様と勝姫さんの距離は縮まった。ふっ。
あと、一息。彼女から聞いた、この墓の伝説の力を借りて。
いや。
「勝姫さん。話があるんだ」
俺は石を投げ捨て、そう問いかけた。
「なに? 伊達くん」
「好きです。付き合ってください」
「……えっ」
……ふられてもかまわない。僕様は僕様の力で。
「えーと、……あの、友達からで」
「あ、はい! 友達からお願いします!」
やった! 僕様は勝った!
「じゃあ、早く行きましょ。伊達くん」
あ、石どこ行ったっけ?
「伊達くん?」
「なんでもない。早く行こう、勝姫さん」
「勝姫でいいわ。藤次」
「行こう。勝姫」
※※※