運命の日曜日
運命の日曜日。
俺は朝4時に起こされた。あの女からの電話によって。
「おはよう。七兵衛」
「……何の用ですか」
「インカムを使って指示を出すから、忘れないでね。七兵衛」
「わかってますよ」
「それだけよ。……頑張りなさいよ。七兵衛」
それだけ言うと電話は切れた。
「…………」
それだけのために朝早くから電話してくるなよ。
だから、女は嫌いだ。
※※※
日曜日。普段なら昼まで寝ているけれど、今日は違う。
学校へ行く時と同じように、起きて、準備して、いってきま
「おい、今日は日曜日だぞ。勝姫」
「わかってるわよ! 友達と肝試しにいくのよ!」
「き、肝試しだと……」
あー、そういえば兄貴は怖がりだったっけ。
「いいか、勝姫。肝試しはやめておけ、今からでも変えるべきだ」
「兄貴は別に行かないからいいでしょ」
「そ、そうじゃねぇよ。肝試しはな……危険なんだよ」
「兄貴が怖がりなだけでしょ」
「べ、別に怖がりなんかじゃねぇし! 俺は平気だし!」
「はいはい。まあ、いってくるね」
「だ、ダメだと言ってるだろ! なにがあるかわからねぇし」
しつこい……。
「大丈夫だよ。ただの墓地だし」
「ぼ、墓地だと……!! まさか、お前それ」
「黒百合墓地だけど?」
「……!! ダメだ!! 絶対に行くな!!」
「……兄貴、しつこいよ」
「あそこは、ダメなんだ……」
「なんかあったの?」
「…………」
「なんか言ってよ、兄貴」
「…………」
「兄貴?」
よく見ると、兄貴は立ったまま気絶していた。
「はぁ……」
情けない兄貴だ。イケメンで勉強も運動もできる。でも、ヘタレすぎるのよね。
「行ってきます」
私は気絶した兄貴を置いて、家を出た。
※※※
日曜日。普段なら昼まで寝ている勝姫様だが、今日は違う。
学校へ行く時と同じように、朝から動いておられる。
玄関で義兄様と何か話していたようだが、今出てきた。
あとは、いつもの交差点で合流するだけ……。
「おはよう。勝姫」
「ええ、おはよう。勝奈」
いつも通り。うまく合流することができた。
「あなたも今から向かうの?」
「はい。そうです。奇遇ですね」
「そうね。こんな時までタイミングが一緒なんて、赤い糸でつながってるのかしらね?」
運命の赤い糸だなんて……///
「かもしれないね」
私は平静を装いつつそう返事をした。
「ところで勝奈、あなた怖いのは苦手じゃなかった?」
苦手です。でも、勝姫様と一緒なら
「全然平気です」
「そう。ならよいのだけど。私のせいで無理させてるんじゃないかと思ってね」
勝姫様が優しい。いつも天使な勝姫様が、今日は女神のごとくお優しい。
これは、夢? それとも、勝姫様……いや、女神勝姫様がついに
「勝奈…………好きなの」
……っっっ///!!! す、好き!? まさか、私のことを!?
「勝奈? 聞いてるの?」
はっ。私としたことが。
「もう。ちゃんと聞いててよね」
「ご、ごめん、勝姫。嫌いにならないで」
「それぐらいで嫌いになったりしないわよ」
嫌いにならない=ずっと好き。両想い!!
「それでさ、勝奈」
「は、はい! なんでしょうか!」
やばい。ドキドキしすぎてやばい。胸が張り裂けそうだよ。
「勝奈って肝試し好きなの?」
「え?」
あれ? 肝試し?
「すごい幸せそうな顔してから、そうなのかなって」
あれ? もしかして、私の早とちり?
「肝試し、好きなの?」
「あ、う、うん」
で、でも、脈なしと決まったわけじゃないわよね。
そうよ。これから頑張っていけばいいのよ。
「頼りにしてるわ。勝奈」
「はい! 勝姫様!」
「だから、様は付けないでよ」
※※※
ワタシたちは勝姫のためのグループ。
勝姫がいないとき、ワタシと柴田はただの他人。
勝姫のためなら何でもできる。今回の肝試しでも。
勝姫のために。ワタシ自身のために。
もう、1人にはなりたくないから。
もう、弱者にはなりたくないから。
ワタシは貞子。肝試しでこそ、勝姫の役に立てる。
※※※
日曜日。普段なら趣味につぎ込む休日。だがしかし!
今日は特別だ。僕様の恋の成就のため。ふっ。
「ふははははは……」
彼らの協力を得て、僕様はリア充へ。愛しき彼女と。
「なに笑ってるんだい? 伊達君」
「ああ、すまない。ついな」
あれ? こいつって眼鏡かけてたっけ?
「そんなに楽しみかい?」
「ああ、もちろん。ふっ」
まあいいか。
「僕らもサポートするけど、お前も頑張れよ」
「無論だ」
※※※




