第1話
その日、宇喜多家隆は、祝山高校の入学式に参加していた。
家隆は、これからの高校生活をあれやこれやと妄想し、心を弾ませながら、祝山高校に来た。
しかし…現実は非常であった。
高校の入学式であるというのに、新入生の席は自分を含めて全部で5席しか存在しない。
そのうち一つは幼馴染のものであるから、新しい出会いは3人しかいない。
いったいなぜこのようなことになってしまったのか。
心当たりはあった。
中学校の進路指導の佐々先生に
「高校では密接な人間関係が欲しいです。親友というやつがほしいです。」
「今はいないの?」
「はい…。なので、できるだけ人の少ない学校がいいです!」
「ほんとうに?」
「本当です!」
という志望を伝えていた。
しかし、しかしである。
入試の時は確かにもっと人が居たはずだ。
密接な人間関係を望んだとはいえ、この数は想定外だ。
むしろ、この人数では、仲良くなれなかったり、喧嘩したときの気まずさが半端ではないではないか。
家隆は高校生活初日から絶望の色を隠せない。
その時
「新入生、起立!」
司会の先生の号令に家隆は少し遅れて反応する。
「礼、着席!只今より祝山高校の入学式を挙行いたします。まずは、校長先生からのお話です。」
家隆は、校長先生の祝辞になど耳を傾けることなく、今の状況について考えることを再開しようとした。
「本年度の入学生を最後として、本校は廃校となります。」
聞く気もなかった校長先生の言葉が突如脳内にねじ込まれる。
「な、なんだってーーーーー!」
家隆は思わず立ち上がってしまった。
「そこの新入生、座りなさい。」
司会の先生に怒られてしまった。
他の新入生のクスクスという笑い声のなか、家隆は黙って着席した。
校長先生は、家隆が着席したのを確認すると、話を続ける。
「本校はほどよい難易度の高校として、多くの受験生によって滑り止めとして受験されてきた歴史があります。しかしながら、本学の受験生の多くは本校に来ることなく志望校に進学するため、本学の生徒は年々減少してしまい、本年度は5人になってしまいました。」
「本年度の入学者が2けたに満たない場合には廃校となることが昨年に決定していました。そのため、本校は皆さんを最後に廃校となります。最後の生徒として本校で最高の思い出を作られることを願っています。」
家隆はそれ以後の校長先生の話を覚えてはいなかった。
ただ、自分にはかわいい後輩ができることもなければ、皆が滑り止めとして受験する高校を大本命として受験し、入学式初日に大声で叫びながら立ち上がったという現実と向き合っていた。
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「入学式初日から、家隆は元気ね。」
隣の席から声をかけられる。
家隆にとって幼いころから聞きなれた、明石泉の声であった。
「今はもう、元気のかけらもないよ。」
家隆はそう答えるしかなかった。
教室には机が横一列に並べられている。
この学級では全員が列の先頭である。
「席替えのしがいがあるなあ。」
今の家隆にはこの程度の皮肉をつぶやく気力しかなかった。
明石が一番廊下側の席を指定されており、順番に家隆、女子、男子、一番外側の席にも男子が座っていた。
座席表を見る限り、岡、吉川、後藤というようだ。
ガラガラガラ
教室のドアが開けられ、担任の先生が入室する。
「皆さん、入学おめでとうございます。では早速、自己紹介をしましょう。」
若い女性の教師はそう言って自分の自己紹介を始めた。




