第11話
「ねえ楓、感動しているところ悪いのだけれど、今一度みんなの役割は何をするのか教えてもらえる?」
「そ、そうね。」
岡さんは泉に言われて呼吸を整える。
「えっとね、まずは宇喜多君の艦長から。艦長は、全体の指示と決断が求められる役割ね。どの海域に行くのか、どの艦と戦闘するのか、いつ撤退するのか、などなど。まさにボスね。」
「その海域っていうのは?私、動画では戦闘ばかり見てて、詳しいルールとかはまだよくわからないの。」
「各陣営にはね、最初に5つの海域と首都の6つのエリアがあるの。それで、5つの海域を失うと、首都が攻撃されて、首都を失うと敗北ね。海域を増やすと艦艇の修理速度が上がったり、装備や艦艇の購入に必要な貢献度ポイントが多く貰えるようになるよ。今は首都の東京に居るね。」
「そうなんだ。」
「具体的にはね。」
日本:九州海域、四国海域、北海道海域、西日本海域、東日本海域、東京
独逸:イタリア海域、キール海域、ミュンヘン海域、ケルン海域、オストプロイセン海域、ベルリン
英国:インド海域、スエズ海域、ジブラルタル海域、マレー海域、フランス海域、ロンドン
ソ連:レニングラード海域、スターリングラード海域、キエフ海域、バクー海域、ウラジオストク海域、モスクワ
米国:ハワイ海域、パナマ海域、ニューヨーク海域、ノーフォーク海域、ロサンゼルス海域、ワシントンDC
「内陸部の名前をした海域があるのは、宇宙だからかしら?」
「そうだよ、歴史的に有名なところを名前にする方が、ゲーム的にいいんだろうね。」
「なるほど。それで、海域は好きに選べるの?」
「自国の領土はね。敵国への侵攻は本部の指示に従うことになるよ。」
「本部?」
「陣営の貢献度トップ5の艦長さんが集まって決める合議体のこと。それから、自国領でも本部から配置命令が来ることもあるから、それにも従うべきだね。」
「従わないとだめなの?」
「従う必要はないけど、従えば貢献度がもらえるから従うべきだよ。」
「ふむふむ。」
泉は真剣な表情で岡さんの説明を聞いていた。
「話が脱線しちゃったね。次は私の役職、操舵手。その名の通り艦の操縦をするよ。ただ、宇宙空間だから上下にも敵が居たりするから、海上の船とはちょっと違うよ。」
「楓、がんばってね!」
美しい友情である。
「次に後藤君の通信手。」
「ここは俺が説明する、いや、説明させて下さいお願いします。」
「うん、後藤君お願い。」
泉は後藤の気持ちを汲み取って後藤に説明を求める。
「通信手ってのは、他の艦との連絡や本部とのやり取りをする役割だ。けど、それだけだと役割がなさすぎるから、このゲームでは、レーダーを見て索敵をする役割も担っているんだ。俺はこのレーダーで敵を見つけて艦の目となる………」
その後、後藤は長々と通信手の素晴らしさについて語っていたが、誰も聞いてはいなかった。
「えっと…、泉ちゃん、吉川君の役割が砲手。この艦の武器を使う役割だよ。」
「そうだ、そもそもこの艦にはどんな武装が載ってるんだ?」
俺は疑問に思い問いかける。
「おっと!吉川君、早速艦長さんからの命令が来たよ、教えてあげて。」
「…12.7センチ単装砲が2基に、ミサイル発射管が4門、ミサイルは最低ランクの弾が16発。」
「吉川、それってつまり…。」
「…弱い。」
「だよな。」
貰いものである以上、仕方ないと割り切ることが艦長最初の仕事であった。