第七話 アカレ子うりん?からの
男性陣と自己紹介をしつつ談笑していると、少しずつ女性陣が戻ってきた。
女性陣が戻ってきたので、二人が暮らすのに十分程度の家を作るという事に成り、皆でどんな感じの家を建てるかやどこに建てるかを相談していた。
皆簡易な膝下まであるワンピース姿になっていたが、必ずどこかしらにリボンのワンポイントが付いていたところを見るに詩歌の趣味が混じったのだろう。
村の隅がいいと思って提案してみたが、それだと何かあった時に相談しにくいのでと里の中央付近、里長の家の隣に建てる事に成った。
「冬夜お待たせ、皆素材が良いからいい仕事できたよー」
久々に簡易とはいえ趣味の服作りができて満足したようだ。
「お帰り詩歌、一寸提案があるんだけどいいかな」
なになにー面白い事と言いながら近寄ってきたので、耳打ちでアカレ子さんの事と、結界の事と維持についてアカレ子さんを顕現させたいので力を貸してほしい事を伝えた。
「いいよー、これってある意味あたしたちの子供みたいだよねー」
言われてみればそうかもしれない、童貞と処女との間から生まれる子供か、何ともはや面白い事に成りそうだ。
話がまとまったところで皆がそろったようなので、既に仮結界を発生させこれから本結界を構築すること、それを維持する為にもう一人ここに呼び出すことなどを説明した。
ざわめきが起こったが、しばらくすると落ち着き、もう一人はどこから来るのか安全なのかなど質問された。
特に問題はない事と、見た目は子供だが心配はしないでほしいと伝え、ここで召喚するというと、今度は皆好奇の目で伺うようになった。
「じゃあ詩歌やろうか、アカレ子さんの声は聞こえてる?」
『聞こえてると思われます、手順をお伝えしたときに理解してもらえたようですから』
「うん、大丈夫。でもこれ一寸みんなの前でやるには恥ずかしいよね」
「確かになあ、でも人払いをしてやったり隠れてやるよりは、判りやすくて良いんじゃないだろうか」
『ご迷惑をおかけして申し訳ありません』
「仕方ないか、じゃあちゃっちゃとやろう」
二人は息吹で体内に魔素を集め神力へと変換していく、だんだんと後光がさすようになり、限界まで溜まり切ると、かなり眩しくなっているらしく周囲を見ると皆目を腕で隠していた。
今の内とばかりに二人は抱き合い熱い接吻をかわし神力を混ぜ合わせる。暫くした後口づけをやめ顔を離すと、後光が治まる代わりに空間に光の玉が生まれた。
それを二人は手で覆い徐々に力を籠め編成していく。
力を込められると徐々に玉は人型を形成していき、それが大きくなり子供位のサイズになったところで二人の力が切れかけたのか、光が治まり可愛らしいフリルのワンピースを着た黒髪の少女が現れる。
『神子アカレ子降臨いたしました』
途中から皆見ていたのか周囲からは、感嘆の声が聞こえてきた。
「神が巫女を御産みなさったぞ」
そういえば、産んだことになるよね。という事は子供という事で、もしかして称号とか増えたりしてるんだろうか。
『父上、母上気になるようでしたら、ご自分で確認なさればいいかと、少々失礼いたします』
そう言うと、アカレ子は二人の手の甲に口づけをした。何かがいろいろ流れ込んできて、自分の称号のみなら確認できるようになった気がしたので称号確認と頭の中で念じてみた。
賢神、拳神、剣神、夫婦神、神造神、三柱神…何やら三つほど増えてしまったようだ。
『ちなみに私には神子、三柱神というのが付きました。元々あるものでは全知がありますので三つですね』
「全知って時点で神とか超越して居そうだけどどうなんだその辺」
『称号が増えると、それに対応した部分の限界容量が伸びますからそうでもありません、今回なら神力の上限が伸びていますね。お父さんとお母さんは前の倍ぐらいまで限界が伸びているはずです』
「倍とか言われてもさっぱりだねぇ。アカレ子ちゃんでいいのかな、お父さんとお母さんって私たちの事かな」
『そうですよお母さん。何せ二人の力によって生まれたわけですし、そもそも私を発生させたのはお父さんですし』
「そういえば、アカレ子ちゃんって一体何なの」
『この世界のすべての情報の根源です。アカシックレコードと言われる代物ですね』
「情報の根源ってそれがどう成ったらアカレ子ちゃんになったのかな」
アカレ子が発生した過程を長々と説明し始めた、詩歌は満足するまで聞くつもりらしいので放置しておいてもよさそうだ。
詩歌との話が一段落すると、里長たちが恐る恐るやって来て、こちらの方はどなたかと聞いてきた。
「この子は、この里の結界を保全したり改善したりするために生み出した僕たちの子供(?)で、アカレ子って言うんでこれから宜しく」
『はい、娘のアカレ子です。たぶん皆さんが亡くなる頃でも見た目はこのままだと思うので、アカレ子ちゃんって呼んでください』
そう言って皆の方に頭を下げて挨拶をした。そのあと結界構築を開始したが、何かあった時のための操作権限を誰に与えるかが問題になった。
最初私達に加え里長という話をしたら里長だけでは、お三方がいない場合に怪しいので誰かもう一人という話になり、里の中でもう一人一番賢いという者にもつけるという事に成った。
誰が一番賢いかという話で進んでいたが、アカレ子はここにずっといるので問題ないと話したところ、それならそもそも里長が要らないという意見が出てきたが、里の長らしくせめて権限位は持たせないと立場がないという、長老たちの意見により里長への権限は残ることになった。
『では、ちゃっちゃとやりますよ。結界構築付与は詳細設定及び権限設定と認証とええと後は、何付けましょう』
「あるかわからんが、滅菌や抗菌機能とか指定浄化機能とかあると便利じゃないか、疫病とかあると大変だからな」
『ではその辺も入れるとしてあとは』
「はいはーい、香り付けと脱臭機能欲しい」
『付けられますが、付ける香りとか、どうするんですかこれ』
「香り付けはアロマポットとか作ってそれを結界に取り込ませて選択してつけられたらいいかなーって」
『となると、操作盤と台座は必要そうですね。むむむ、小さな祠みたいなものが出来てしまってもいいですかねこれ。あと権限の継承時に知識が流れ込んでものすごく頭痛くなるかもしれないんですけど』
「アカレ子ちゃんそれは新しい里長になる試練ってことにしておけば問題ないじゃろ」
里長がそう言ってきたので、気にしない事にした。継承は祠の入り口に里長と共に手を当ててやるか、里長が死んだ際に次の相応しい者に自動的に移る方式とした。
後者の継承の際は一気に流れ込まず徐々に流し込んで、痛みを緩和する方式が取られることとなった。
『結界構築システムプログラミング完了、周囲の魔素量調節設定完了、コンソールルーム構築設定完了、付加機能詳細設定完了、クリーンルーム構築設定完了』
何やらカタカタと空間に透明なキーボードらしき物を出しカタカタと打ち続けていた。
暫くすると急にキーボードが消えたかと思えば大きなボタンらしき物が現れる。
『プログラムスタート!』
ダンッと勢いよくそのボタンを叩くと、里の中央に地面から土がせり上がり二つの祠が立ち並んだ。
片方は徐々に色が変わり岩になり四角い物へと形成され、もう片方は天井は岩のまま周囲のみガラスルームの様に変質していった。
アカレ子はいい仕事をしたとばかりに、額に汗もしていないのに額を腕で拭った。
『お父さんお母さん結界構築完了しました』
「アカレ子やこの世界ってそんな感じなのかね」
『いえお父様の記憶にあったろぼっとあにめなるもの情報で一番気に入っていたもののようなのでそれっぽくしてみました』
「あ、はいそうですか。うん、次からは自重して普通にやろうね」
『普通ですか、そうなりますといきなりぱっと出現して終わりなのですが』
「いやほら、詠唱とか、下準備の儀式とかあるんじゃないの普通」
『いえ不要ですから。私の場合はそのあたりは構築術式の中に組み込んで無詠唱発動してますから』
「判ったならあきらめる」
『ではお父さんお母さん里長さん此方を』
そういったアカレ子の手から光の玉がそれぞれ飛んでいき、冬夜、詩歌、里長の中へと入っていった。
里長は入ってくると、頭を抱えていきなり苦しみだし倒れこむとのたうち回った。冬夜と詩歌は特に影響がなかったようで、早速祠へと向かって行った。
他の人たちは、苦しむ里長のところへと集まって、心配そうにしていたが数分ほどのたうち回った後は、息を切らせながらも皆大丈夫だ心配をかけてすまないと言って立ち上がった。
『あ、大丈夫だった?知識が一気に流れ込んだはずだから、脳が処理限界迎えて物凄く痛かったかもしれないけど』
「だ、大丈夫…ゼエゼエ…継承の度にこんな事に成るのか」
それを聞いた周囲の者たちは、里長には絶対なりたくないから、里長長生きしてくれと言い出した。
『今回だけだよ、次からはもうちょっと楽な筈、一気にじゃなく時間をかければいいだけなんで』
「確かに祠の機能で継承すれば半日かけてやれば軽い痛み程度で継承できそうじゃ」
半日かけても少し痛いのか、それをいっぺんに受けたのならそれはああなるな。などと周囲から聞こえてくる。
手に入れた知識を披露したいのか、里長は皆を連れ立って施設の開設を行った。
病気になった場合は、この透明な部屋に入れて祠を弄れば、だいたいは治りそうじゃ。とか、それでも治らない病もあるのでその場合は覚悟が必要じゃ。とか、言いながら周囲に尊敬されたおかげか楽しそうにしていた。
うまく区切れなくて長くなりました。
書き溜めという概念がないため上がり次第アップになります。