第四話 初めての信者(?)
私は驚いていた、いきなり現れた人と里長が話し合っていたのこっそりと見守っていたら、里長が掲げられ、光に包まれたら話に聞く初代様そのものとなっていたからだ。
その後も暫く話し合いが続くあいだに里長は何度も驚き、慌てて此方へ来ると皆を集めるように言った。
私たちが使っていた言葉と違うが、全てが理解できたし何故か自分たちの言葉もそれになっていた。
そしてしばらくすると皆が集まりそこで里長が語りだした事に対し皆が驚き、怪しすぎるや信じられないだのといった騒ぎが起きた。
「みな落ち着いて聞いてほしい、これは神が遣わして下さった、唯一の機会かもしれない」
周囲からはそんなこと信じられるか等といった言葉が飛び交った。私はどうしても我慢できなくなり、皆に秘密にしていた事を伝え実行してみたい旨も伝えようとした。
「里長一つだけお願いがあるのですがよろしいですか」
私が明かしてない秘密は、人を見極める力があることだ。
かなり集中してその人をじっと見ていると、頭の中にその人の情報が流れ込んでくる。
名前、年齢、称号、状態など様々なものだ、見続けるとものすごい頭痛がするので大体が名前、種族、性別、称号、状態、年齢ぐらいまでで留めている。
それが出来ることを里長に伝え、それをもって見極めたいと伝えた。
「流石にやってよいかの確認をしてからになるがそれでもいいか」
確かに、この能力は相手に気付かれるかもしれない、なので基本他人に使ったことは無いのだが、試しで里長を見てみた、名前グレコ・モース、種族森の守り人、称号里長。
これ以上やると頭が痛くなりそうなので、ここまでで止めた。今更だが里長の名前を初めて知った、私たちの種族は成人したら皆森の守り人(変異種)だったはずなので、変異が溶けるとああなるのだろうと理解した。
「里長今何か感じましたか?調べさせてもらったのですが、不快になったりして刺激はしたくないのです」
「うむ、何かしたのか気づかなかったが、これなら不快にはならなそうだし聞いてみるとしよう」
里長は二人のところへ向かうと事情を説明し許可が取れたのか手招きされた。
「初めまして、僕らは冬夜と詩歌。あなたのお名前は」
「レグア・ニーアです、不快にさせるようなお願いをして申し訳ありません」
二人は、良いよ見ず知らずの人からいきなりとんでもない事を言われれば信用も置けないし、調べられそうな力があるなら使って確認したいよね。と言うと笑顔で此方を向いた。
念のため確認をとった上で、早速力を行使してみると、冬夜という方をまず確かめた普段より頭痛の具合が激しい、名前:笹山冬夜、年齢:四十六歳、種族:人間(?)、称号:剣神、賢神、拳神…そこで慌てて能力を止める、頭痛が酷すぎるからと神という称号を三つも持っていたことに驚いてだ。
すぐさま二人の前に平伏した。私は何という方々に対して不敬な考えを抱いてしまったのだろうと。
「すいません、ごめんなさい、ゆるしてください、すいませ…「いや何でいきなり気にしないでいいから落ち着いて」」
そういって、平伏した私を立ち上がらせてくれ、土で汚れた裾をそっと払ってくれた。
この方たちは、神々の世界からいらしたのだろうか、なぜこの地に来たのか、それすらもわからなくなり混乱した。
「レグアよ、お前は何を見たんだ、いきなり平伏したりして」
わからないからこそのその態度なのだろう、普通に考えれば変異種を取り除いたこと自体が神の御業ではないだろうか、なぜそのような些細な事すら気づけなかったのだろう。
「里長いえ、グレコ。貴方はこの方たちが、何者か気づいていないからそう言えるのです。この方の称号には、三つの神の称号がありました。きっとそちらの女性にもあると思われますが、確かめるのすら恐れ多く、さらに私が耐えられないと思われるので、確かめはしません」
神だってと、グレコは驚き慌て始める。そして慌てて先ほどの私と同じようにして、そのまま私と同じ扱いをされる。
「いやまあ落ち着いて、神って言っても称号でしょ。種族は人間だしその辺に沢山いる中の一寸特殊な一人と思ってくれればいいよ」
一緒にいた女性もそうだそうだと言い張っている。
この方たちは、何を言っているのだろう。
称号はそれに就くべきして成った結果であり、その称号に神となったものこそがこの世界での神の一柱となることを知らないのだろうか。
今のうちに伝えた方がいいのかもしれない。
「もしかしてとは思いますが、お二方はこの世界のことをお知りにならないのですか」
二人は顔を見合わせると、ちょっと照れくさそうにしながらその事実を認めた。いろいろと話を聞いていると、ありえない事ばかり出てくる。
ここに来る直前に居た場所で会ったというのが、どう考えても創造の女神今は名前すらも残っていない世界の始まりを作った女神だという事だ。
そして、他の神々がいなかったことから、その神々の世界よりも更に高位な世界にいたという事。
そこから何の説明もなしに称号だけ付けられて、お試しで使わせたら使いこなせるようだしと送り込まれたという事。女神がすごく適当でフランクだという事。
「この世界、本当に大丈夫なんでしょうか」
思わずそうこぼしてしまった私は悪くないと思いたい。
「で、試しにレグアさん戻ってみないー?」
詩歌様が、一寸お試ししてみない的なノリで聞いてきた。それに対して思わず首を縦に振り続けてしまった私も私だったかもしれない。
お一人様ご案なーいと言われたかと思えば、光に包まれて暫くすると詩歌様より身長が高く、細身に白い髪の長い緑の肌の女性になっていた。
おお、美人さんだねーと言われたが良く判らないので、許可を取り慌てて近くの水辺に向かって体を映してみた。
今まで来ていたすっぽりとかぶるタイプの服がぎりぎり股下まで届く程度できわどく下着が見えてしまいそうだった。そして、以前見かけた綺麗な金色の髪をしたエルフの冒険者並みの顔がそこにあった。胸は…うん足元見えた時点でそうだよね。
大慌てで自分の家に戻り腰から更に布を巻いて下を隠すようにしてからその場に戻った。
「す、凄いです。初めて自分が変異種じゃなくなったらこんな事に成るなんて知りました。感動ですありがとうございます、女神詩歌様」
そういうと、やーめーてーよー詩歌でいいよーと気軽に言われてしまった。
皆の説得は私と里長の肩にかかっている。何をするのかを聞いた方がよさそうだと思い聞いてみた。
「まずは、この里全体を周囲の魔素を使って魔素の無い状態になるように結界を張ります」
そのまま長々と説明されたが、要は里を結界で覆って、次に里の皆を浄化して正常種に戻す、農地と水源を確保して、食物を浄化して種を生成し農業を始める、家畜をどこからか入手して自給自足の態勢を整えた上で、料理を教えるのでそれを覚えてもらう。
それらが済んだら、この里の特色ある生産物を用意しておき、他の種族との交流があった場合に売り込めるようにしたい。
との事だった、最後のは私たちのみができる事を売りにして、攻め滅ぼすのは得策じゃないと思わせるための布石との事だったが、何なのか良く判らなかった。
「それでこういった感じなんだけど、どう思う?やって良いかどうかを聞いたところなんだ」
これは、実行して貰えたら此方への良い事しかないように思える。だが何か裏があるかもしれないと思いきいてみると。
のんびり暮らせる家と気が向いたら旅立ってまた戻って来られる拠点が欲しいと言われた。
これだけの偉業をなそうというのに、求めるのは静かな自由な暮らしのみというのだ。
「里長と二人で、皆を説得して見せます」
思わずそう答えてしまった私は悪くないと思いたい。
時間が取れたのでこっそりと、次からは不定期になるかもしれません。