第三話 ゴブリンは呪われていたようです
里長は、警戒を解かずに徐々に近寄っていく。
「ぐげげげぐげっ(ふん、どうせそう言って騙すつもりだろう)」
それを見て詩歌は両手を広げながら徐々に近づいていく。
「大丈夫そんな事はしないから安心して」
ゴブリンはこれ以上寄るなと棍棒を振り回したが、それを気にせずに近寄る、結果棍棒が当たったが負神の力を行使して受けるはずの威力を相殺する。
それを実感した里長は異常事態だと思い慌てて叫ぶ。
「ぐげーげげっげ!(皆の者絶対に外に出るな)」
「けがはしたくないので相殺させてもらいましたよ」
そういってそっと里長を抱きしめる。
先ほどちらりと見えたゴブリンの子供らしき者はかわいらしい顔をしていた、だというのに里長はなぜこんなにもいびつな顔と体型をしているのかを疑問に思ったようだ。
里長は抵抗しても無駄だと悟りなすがままに抱きしめられていた。
「詩歌さんや、なんで旦那である僕を放置してそちらのええと…そうゴブリンさんを抱きしめているんだい」
こっそりと先ほど聞いた種族を忘れかけたためアカレ子さんに問い合わせたようだった。
「いえ何故かですね、この方たち子供は可愛らしいのになぜこのように歪になってしまうのかと、ですがよく考えたら私は調べられないんですよね」
なるほど、成長したときのギャップが気になったようだ。アカレ子さん判るかね。
『答、彼らの生活環境と食生活が原因です。この辺りは魔素が濃いのでそれにより変異した食物をとった影響で、変異してしまったものとなります。基本ゴブリンは人が来られないような魔素の濃い場所でひっそりと暮らし、成人した一部が狩猟に出た先で新たな集落を形成します。新たな集落では魔素が濃くないのですが、その環境で生まれた一度変異してしまった者たちの子孫は変異種になるようです。もともと魔素が濃いこの環境ですと生まれてくる子供は周囲に魔素が吸収されるため正常種で生まれ成長するとともに変異種になるようです。因みに詩歌様の力を使えば正常種の大人へと戻すことも可能です』
ふむ、ここら辺一体の魔素が濃い事と食生活が原因で変異ですか。
「詩歌さんや、魔素と食生活が原因で変異種になっているらしいよ。君の力なら正常種に戻せるらしい。どうやるか知らんけどね」
里長は、冬夜の言ったことを理解したのか驚いていた。
「んー、里長のぐげぐげが耳障りで仕方ないな。何かいいものが有った気が…」
『世界言語の宝珠の力を微量に与えてはどうでしょう、力を一部引き出して与えるだけなら周囲の魔素を使えば簡単です』
おお、それがあった早速取り出してやってみよう。
「里長さんや、普通に話せるようにさせてもらっていいかな、どうもそのぐげぐげ言われてると二重音声みたいになって頭に響いて辛いんだ」
「ぐ、ぐげ?ぐげげげげ(な、何を言っているんだ。私や他のものに影響はないのか)」
「影響は特にはなさそうだが、慣れるまでは喋りにくいかもしれん。それぐらいだがいいか?」
「ぐげ(構わん)」
了承を得たので世界言語の宝珠を取り出し、周囲の魔素を利用して宝珠の力を発動させる。
里長が光に包まれそのまま光が里全域へと拡散される。
「何が変わっだどいうのだ。んん?人の言葉がごれは」
声帯が慣れていないのかやや変な発言になる。時間とともに普通に変わってくれるとありがたい。
「世界言語というものらしい、すべてのものと語らえる言葉であり、すべての者の声が聞けるようになるとかなんとか」
「ぞ、ぞれはいいんだがぞろぞろ下して貰えないか」
実際のところ今までのやり取りの間詩歌は、いつの間にか里長の裏に回り大きなぬいぐるみでも抱えるような体制で抱えていた。
あら御免なさいと言ってそのままそっと下してあげる。
「それで詩歌さんや、何かわかったかね」
「実のところ何も、魔素とやらに汚染される前に戻すだけならできるとは思うけどやって良いものかどうか」
「汚染とはなんだ、我々は成人するとずっとごんな感じだぞ」
それを聞いて冬夜はまずはそこからかと言うと説明を始めた、ゴブリンについて魔素について、魔素を含んだ食物とそれによる変異について、アカレ子さんの補助の元どんどんと話していくうちに、里長はだんだんと顔色が青ざめていく。
「するとなんだ、我々は魔素で変異した食物を食べてそれらの呪いでこうなってしまったというのか」
実際のところ魔素とはこの世界の奇跡の欠片で、それらは生命が死して魂になった時の浄化作用による老廃物だった。
魔素や神力などと言われるが、純粋な力で受け入れたものの中でそれらの思いや願いがやや叶えられる、草木なら成長したい、食べられたときにこの恨みはらさでおくべきか等といった感じのことが起こる。
結果ゴブリンはそれらを大量に摂取した影響で、呪いにより弱体化、異形化などが起こって醜悪なモンスターへと変異した。
「では我々の本来の姿とはどういったものなのだろうか」
詩歌がそれを聞いて、抱え上げるとそのまま天高く抱え上げる。
そして、周囲の魔素が里長に集まっていき光に包まれると、徐々に里長が縮んでいき先ほど見かけた子供のような姿になる。
そのまま、光に包まれているとまた成長をし始める、だんだんと成長していき異形化せず元の年齢まで成長しきると、そこには冬夜よりやや背の高い耳のとがった坊主頭の緑色の肌をした渋い顔をした親父が立っていた。
「ふー。いい仕事したよ冬夜君」
抱えられていた筈のゴブリンは、その状態のまま自分が地面に足を付けて立っていることに驚く。
そのあと自分の体を見回し、少し待っていてくれと言うとどこかへと走っていった。暫く待つと大変慌てて戻って来るなり、詩歌の前で膝をついて祈りはじめる。
「おお神よ!私を我々の初代様と同じに導いてくださりありがとうございます!」
祈られた詩歌の方はといえば、神と呼ばれたり祈られたことに戸惑い慌て、慌てふためいていた。
「祈ったままでも構わないんで質問に答えてくれ、初代とは何だ」
そう問いかけると、徐々にと答えはじめる。初代様とは、この里の初代長で、元は色々な種族の者たちと手を取り合い世界中を回った者達の一人だという事。
人、エルフ、ドワーフ、獣人、妖魔、フェアリー、悪魔、魔人、これらの種族が共に手を取り合い、旅をし世界を平定していった事。
その中で徐々に安住の地を見つけ種族ごとに分かれていき、最後は人とゴブリンのみが残り、ゴブリンはこの地を見つけここで人と別れた事。
あまりにも昔のことなので、これを知るのは長生きなエルフ、フェアリー、悪魔ぐらいで他の種族は忘れてしまったであろうこと、我々は里長のみに伝えられていることだと語った。
「詩歌この里全体を何とかはできるか?できるなら、里次第だがその後も含めて何とかしたいと思う」
そう問いかけると、その位ならお茶の子さいさいだよ。と、左手を腰に当て少し前かがみ気味になり、右手を前に出し人差し指でちょんちょんと触れるような仕草をした後胸を張って答えた。
「さて、里長さんや。この里全体を貴方の様に戻しつつ、いろいろ学んでもらうことは有るが、里自体に今後影響がないようにもできるのだが、どうだやるかい」
里長はそれを聞くと、話し合いたいからしばらく時間をくれないかと言って里中の皆を集め話し合いを始めた。
のんびり待つのも暇なので、イスとテーブルと緑茶セットを召喚し、入れて飲みつつのんびり待つことにした。
折角書き始めてしまったので、ちまちまと書いていき一段落するまでは頑張りたいと思います。