イケブタという新ジャンル
ちまちま
前回のあらすじ
神殿パない。女神様申し訳ねぇ…。
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女神様…どうか俺に、彼女を…彼女が、欲しいです…女神様ぁ…。
あ、あと出来れば、ついでにお金と力と名声も…。英雄的な冒険とかもしたいですぅ…。
切実な想いを女神様祈っていると、十秒もしない内に女神像が光り始めた。
光は神殿の壁や床を亀裂が走るように伝っていく。
女神像を中心に神殿全体が淡い光に包まれて。いつの間にか賛美歌っぽいのも流れ出していて、なんだかよく分からないけどカッコイイ…!!
女神像の光はドンドン強くなり、胸のあたりから青い光が生まれると、こちらへとふわふわと漂ってきた。青い光は俺の目の前で止まり、浮かんだまま何かを待っているようだ。
…え?何、俺が何かしないといけないの?手で受け取ればいいの?それとももうちょい待ってた方がいい?
何をしたらいいか分からないので、試しに手を伸ばしてみると青い光は俺の手のひらに吸い込まれ消えていく。あ、これで合ってたのね。改めて漫画やアニメの主人公がこういうイベントの時になんの説明も脈絡もなく正しい行動が出来るのって規格外だなって思う。あの人達何故分かるし。
【”女神の神託”を手に入れました。神殿の外で使用してみよう!】
おっとアナウンスさんがいつになくフレンドリー。あれか。チュートリアルみたいなもんか。神殿の外で、ね。じゃあこのイベントはとりあえず終わりでいいのかな。
気がついたら神殿を包んでいた光は消えていて、周りには未だに祈るプレイヤーと真ん前に並ぶプレイヤー達が。時折手を前に伸ばすプレイヤーもいるな。個人別でエフェクトが見える仕様なの?え?いかに一度に祈る人数が限定されてるとはいえ、どんなスパコンだったらたいして重くもならずVRで実現できるのか。運営サーバーは化物か…!
神殿を出ると、待たせている二人を探す。おっと発見。
「おーい。イベント終わったぞー。待たせてゴメーン。…ん?」
「あぁ、ちょうどパーティーメンバーが来たわ。」
「この人が待っていたパーティーメンバーなんだね。初めまして、グラッジといいます。君ともしっかり自己紹介したいところだけどね。ちょっとこの後約束があるから、また縁があったらよろしく頼むよ。じゃあね!」
「はい!ありがとうございました!またよろしくお願いします!」
爽やかスマイルを浮かべながらアハハハと去っていく豚。
もう一度言う。爽やかな豚である。
誤字ではない。しかも農家さんのとこでたくさん飼われてる系の豚である。よくあるオークみたいな感じじゃない。
つぶらな瞳がちょっとかわいらしい。あの薄汚れた感じとかを見るにキャラメイクをかなり頑張ったんだなってのは分かるが、何故に豚。
「今の豚の人は…?プレイヤー、だよね…?」
ちょっと自信がない。
「ええ。しつこい勧誘に捕まってたとこを助けてくれたの。で、アークが来るまで勧誘避けに一緒に居てくれたのよ。」
「なんでも『ひーる』をやってみたくて豚さんキャラにしたらしいですよ?ハンマー持ってましたけど、回復職なんですかねー?」
桃華ちゃん。きっと回復魔法じゃなくて、悪役の方だと思うよ。なるほど。きっとオークを目指したのね。悪役のロールプレイングしたかったのね。何を間違えたかリアルなすごくリアルな豚頭だったけど。
「現実の自分とは違う自分になりたかったーって言ってたけど、多分あれは無理ね。根っからの善人、現実じゃイケメンよ、きっと。天然ボケの。」
呆れたように言うサクラ。妙に納得してしまう説である。イケメン爆発しろし。
「名前も分かりやすくグラッジだったからね…。恨みとか、買う事も自分で恨む事も全然なさそうだったけどな…。」
Grudgeとは恨みや仇の意味を持つ言葉である。自分の名前に「恨み」とかするのも悪役としても何だか微妙なセンスだと思う。ちなみにサクラと俺は頷き合いながら共感しているが、桃華ちゃんはよく分かってなさそうな顔で微笑んでいる。可愛い。
と、忘れていた。
「それでオラクルの取得って、この”女神の神託”使うだけでいいの?」
「あ、うん。使えば鑑定してくれるわ。」
鑑定?副職業的なものじゃないの?まぁ使ってみたら分かんべさ。
メニューからアイテム、で、”女神の信託”を選ぶ。使用っと。
お、目の前に画面が出てきた。なになに?
【棒切れ】
効果:棒で切れる。
「【棒切れ】…だって。効果は、棒で切れる……?」
「棒…?切れる?え、あぁ…ドンマイ。多分ハズレオラクルだと思うわ、それ…。」
ゑ?
ちなみに。
女神像で同時に祈れるのは101人まで。真横は人気がないというよりは、誰もいないので祈る場所と気付く人が少なくて空いてました。なので、この後すぐ真横にも人が入ってます。倍率高いのは像の目の前だけ。
そしてイケブタさんも後々出てくる予定。あくまで予定。