天然美少女の友達は世話好き少女の法則
可愛いは正義(真顔
俺、復活っ!!
てなわけでね、はい。
二度目のセクハラBANからの復帰です。とは言っても、別に一週間後とかではない。僅か数時間だけの凍結だったのだ。あの後、運営からメールが届いてだな。お堅い文面ではあったが要約すると。
被害者である桃華ちゃんが身の潔白を訴えてくれたから、ペナルティなしで凍結解除してやろう。他のユーザーからの通報だったもんで仕方なかったんや。スマンな(棒)
とのこと。
まぁ、対応が光の速さだったからな。セクハラBAN明けの俺を監視していたのだろう。そしてこの心のこもっていない謝罪文といい、補填も何もないという誠意の薄さといい、きっと対応した運営は男だったに違いない。醜い嫉妬は怖いもの。恨むべきは俺のラッキースケベっぷりか…。いやぁ、普通は怒るべきなのだろうが、心に余裕があるっていうのかな。下々の男達のやっかみなど、もはや微笑ましいものに見えてくる。ふふふ、もう、何も怖くない。
ログインが完了して辺りを見回す。近くのベンチに桃華ちゃんが座っているのを発見。仏の笑みを浮かべながら手を振り近付く。
「やぁ、桃華ちゃん。さっきは大丈夫だったかな?」
「あ、アークさん!さっきはすみませんでした!」
桃華ちゃんはこちらに気付くと開口一番に謝罪を始めた。ぶぉん!とヴィジュアル系のライブでも中々お目にかかれないだろう見事なヘッドバンギング。俺の心配がさらっと流された事など気にしない気にしない。俺は今、波紋一つ無い水面の様な心を持っているのだ。
「私のせいで、二回もセクハラ扱いに…。」
「いやぁ、運営も冤罪だって分かってくれたみたいだし、全然気にしてないよ。桃華ちゃんが運営に言ってくれたそうじゃないか。ありがとう、助かったよ。」
「いえ、そもそもの原因は私の不注意ですし…」
いや、確かに桃華ちゃんの不注意が原因なんだけど。例えただのグラフィックだとはいえ、俺もいい思いしちゃったしな。なんだか悪い事した気分になる。桃華ちゃん、すげーションボリしてるし。
「本当に全然気にしてないから、そんなにかしこまらなくても大丈夫だよ。ほら、顔あげて、ね?」
「私、昔っからドジで、馬鹿で、色んな事やらかしてばっかりで…ホントに、すいません…。」
だめだこの子フォローしてもどんどんネガティブになっていくし。話聞いてすらいねぇ。どうしろと。仏の心を持ってしても、女の子の扱いは分からないものなのか。ならば、世のチャラ男は仏を超える手腕を持っているとでもいうのか…!?
どうしたらいいのか分からずオロオロする俺と、ションボリしている桃華ちゃん。
落としどころの見当たらないこの状況。そんな中、救いの女神が舞い降りる。
「その子、そうなったらどうにもならないから、気が済むまで謝らせてやんなさい。原因が桃華なのは事実なんだし、被害者らしく振る舞えばいいのよ。まったく、この子にはしっかりと反省させないと!何回気を付けるように言っても聞かないんだから!」
「サクラ〜…これでも気を付けてるつもりなの〜…。」
いつのまにか隣に立っていた短髪の少女が腕を組んで桃華ちゃんを睨みつけている。
え、あ、はい。この娘がさっき桃華ちゃんが言ってた友達かね。
「はじめまして。この子のリア友のサクラよ。これから固定パーティ組むんだからね、呼び捨てでいいわ。」
なるほど。この娘が桃華ちゃんの言ってた拳士の友達か・・・。気が強そうで、拳士の職がイメージにピッタリだな。
「それじゃあ早速、フレンド登録とパーティー登録しましょうか。」
そしてサクラちゃんから差し出される手。・・・おお?握手すればいいのかな?
「あぁ!わたしから!」
その時、突然横から俺の手をかっさらっていく桃華ちゃん。
ピロリン
【プレイヤー:桃華からフレンド申請が届きました。フレンド登録をしますか?】
「お、おぉぅ・・・い、YES・・・。」
【プレイヤー:桃華とのフレンド登録が完了しました。】
突然の事で驚いたが、恥ずかしそうにしている桃華ちゃんを見てるともうなんだかもう今なら過去現在未来全ての罪を許せそう。
可愛いは正義。異論は認めない。
「まったく・・・びっくりするじゃない。じゃあ、次こそ私ね。ほら。」
差し出される手。掴む俺。
【プレイヤー:サクラからフレンド申請が届きました。フレンド登録をしますか?】
「YES!これからよろしくね!」
【プレイヤー:サクラとのフレンド登録が完了しました。】
キラッと擬音が付きそうな笑顔で挨拶を交わすと同時に飛んでくるフレンドチャット。
『桃華に手ぇ出したらどうなるかは分かってるわよね?(ニッコリ』
「ええ!私も仲良くやっていきたいわ!よろしくね!」
アッハイ。
もうニッコリと笑うサクラの笑顔が、チャットの所為で脅しにしか見えない。言動と一致しない行動、これが女性という生き物である。思わせぶりな言動で男を翻弄し、俺に気があるんじゃね?って告白したが最後。ばっさり切り捨て御免、である。女性とはかくも恐ろしい生き物である。勿論、天使は別だけどねっ!そんな恐ろしい策略に組み込まれ、俺の気付かぬ内にこのパーティーの力関係は既に構築されていたようだ。
桃華ちゃんという天使に、天使を守護するグラップラー、そしてピンクネームの奴隷。
「あの、アークさん、私もよろしくお願いしますねっ!」
サクラの隣に天使の笑顔。なんという飴と鞭。ここに降臨している天使を無意識に信奉してしまいそうである。もしもこんな桃華ちゃんの行動が全て計算だったなら、俺の心は砕けてしまうだろう。オウ、ジーザス。願わくば桃華ちゃんよ純真無垢なままでいてくれ。
…あれ?サクラが桃華ちゃんに近づく俺を警戒するのも分かる気がする。天使に近づくピンクネームのおじさん。犯罪である。
「ああ!よろしく!桃華ちゃん!」
まぁ、こんな感じで俺たちの冒険が始まるんだぜ!
ちなみに桃華ちゃんも呼び捨てにして欲しそうにしていますが、恥ずかしがり屋なので言い出せません。