俺「どうだ、明るくなったろう」
26 : 22 : 33
「グヘヘヘ……見ろよコレ!!大金持ちだぜ!!」
「その笑い方止めなさいよ…なんか小悪党にでもなった気分になるわ」
サクラの小言も今なら軽〜く受け流せるぜ。
なんたって今の俺らは大金持ち!!!
金持ちは心が広いってのは本当だったんだな〜!!
ふへへ、今の俺らは現時点じゃほぼ間違いなく全プレイヤー中で1番資金を持っているグループだぜ……!!
笑いが止まらねぇたぁこの事だよなぁ!!
「アークさんすごいですね!こんなにたくさんお金を稼いじゃうなんて!サクラにも見て欲しかったな、行列すごかったんだから!!」
「そうだよねぇ。僕はずぅっと生産してただけだから分かんなかったけどぉ、こんなに売れて嬉しいなぁ。木工スキルも上がっちゃったぁ。」
桃華ちゃんはぴょんぴょん跳ねて喜んでくれている。
色んな所も跳ねている。
俺もニッコリだ。
ピンカートンも賞賛してくれているが、実はこの作戦に俺らはそんなに必要じゃねえって点には一生気付かないで欲しいかな!
「さぁさて、今日の所はとりあえず作戦大成功って事で終わったが……。実の所、ここからが大事だ。」
「まだ売るんですか?お金、もうたくさんありますよ?」
「いやいや桃華ちゃん、お金ってのは稼げる時に稼いどかないとね。初日の掴みはバッチリ、だが2日目は少し客も落ち着くだろうからね。」
「えぇ?でもぉ、噂が広がって人が増えたりするんじゃないのぉ?」
ふむ、ピンカートン君。
君はオンラインゲームを分かっていない。
人の心理を理解していない。
思想が善人に寄りすぎているのだよ。
もっとずっと悪辣に、利己的に。
現実から離れたバーチャルな仮想現実において、モラルという枷のなんと薄っぺらい事か。
君はまだ、人間という生物の事をよく知らないようだね?
「……転売、あとパクリね。」
「そう、サクラの言う通り。
俺達が売り捌いているアミュレット。
アレはな、プレイヤーメイドだからこそ、誰にでも作れるアイテムだからこその金脈だ。」
そうだ。
このゲーム内において木工スキルを持っているのはピンカートンだけじゃない。
稼ぎたいプレイヤーは俺達だけじゃない。
だからこそ、そりゃあ作るだろうさ。売るだろうさ。
現実においてそれらの行動を縛る商標だの著作権だの特許だのなんて法律はこの世界には存在しない。
人の悪性を縛るものなんて、この世界ではゲームシステムと運営、個々人のモラルしか存在しない。
そんな世界の中で売れる商品があり、それを誰でも作れるってんなら真似しない訳が無いのだ。
プレイヤー共は馬鹿じゃねぇ。小賢しくも俺らがマーケットを去った後、同類の商品を売り出す事だろう。
喜び勇んで、もしかすると俺らよりも安く、大量の在庫を用意して。
又は、自分たちで必要な分は自分たちで生産して、そうやって『必要』を埋めていく奴らも居るだろう。
そうする事で、後追い達は自分たちの利益を確保しつつ俺たちの価値を下げるのだ。
きっと今この時、既に売っている筈だ。
俺らは「えへへ、すいやせんね、在庫が〜〜」とか適当こいてマーケットを19時キッカリで閉店、ズラかった後。
……まぁ本当はもう少し残りたかったが、学生っぽい桃華ちゃん達の限られたプレイ時間を全部商売に注ぎ込むのは気が引けたからね…。
若人の青春の邪魔をする権利など誰も持ち合わせていないのだよ。
まぁとにかく、俺らの店が閉店した後。
俺らのアミュレットォ(ピンカートンの、では無い!)を買い、観察し、試作した生産職達が後追いを始めている頃だ。
なんならオンゲーの民にとっては、これからの深夜帯こそがゴールデンタイムだからな。
そんで後追い始めたのは生産職だけじゃねぇだろうな。
大手のプロゲーマーグループや攻略班、検証班に木っ端プレイヤーまで、このアイテムの生産に乗り出す奴らは全プレイヤーの数割にまで及ぶだろう。
オンゲーでスタートダッシュ決め込む様な奴らで犇めいている現在、そういう利になる情報に耳聡いプレイヤーが殆どだろうからな。
しかも俺らがご丁寧に素材である『ヒノキのスティック』を重点的に、割高で買い取ってやったからな。
素材についても確信して作成が可能ときてる。
何故、分かっていて放置するのかだって?
後追い、パクリに転売ヤー?
ハッ、大いに結構!!
ベストセラーが現れたなら、流れにちゃっかり乗っかってわ模倣し、改良し、数を用意して、それらが一つの市場を形成する。
その市場を乗りこなしてこそ、資本主義の醍醐味ってもんだろ?
そうでなきゃあ楽しくない。
これはゲームだ。
楽しまなきゃ、損ってもんだろ?




