慣れないロールプレイは気持ち悪いらしい
おはにちばんわ。
いつのまにかブクマが十数件あって恐れおののき拝み倒したワタシですよ。でも読まれると恥ずかしくなっちゃう。だって、コミュ症なんだもんっ!
「……で?まだクエスト受けてもないのに呼び出した理由は?私の貴重な時間を食いつぶすだけの理由はあるんでしょうね。」
「だよね、薄々こうなるんじゃないかなって思ってた。俺分かってた。」
俺に撫でて貰って満足したのか、ご機嫌な様子のスラリソ。ぽよぽよしながら待機中。
そう、ぽよぽよしながら。
こいつサクラが来るってなった瞬間にまたスライムに戻りやがった!
ああ分かってたさ、薄々な!
だってサクラと桃華ちゃんが居なくなってすぐだったもんな!美少女変身スラリソガールちゃんよぉ!見計らったかの様に変身しやがる!何かフラグがあったとすればそれしか考えられないもんなぁ!
うぅむ、十六歳程の美少女が手足の先から徐々に赤く透明な不定形物体に変わっていくのはちょっとしたスペクタクルであった。しかしどう見ても体積が増減しているのは一体どういうことなのか。謎である。
あ、でもデータの世界だからそこら辺はどうとでもなるのか。
「で?何か言い分は?無いなら即座に判決を下すけど。」
「無罪?」
「もちろん有罪よ。」
「叙情酌量は?」
「無い。ただ、事と次第によっては考えてやらないでもないわ。」
OK分かった話し合おうじゃないか。でもね、知ってる?裁判てのは拳を突きつけながらやるもんじゃないんだ。それはね、脅迫って言うんだよ。
「うーん…どこから話せばいいのやら…。割と長くなるかも…。」
「簡潔に纏めて話しなさい。」
「あぁでもその前にその拳を下ろして頂けると嬉し…。」
「何?」
「何でもありゃっせん!まぁ簡潔に三行で纏めるとですね、
もうちょいレベル上げしようぜ!
スラリソがリトルドッグを発見!
スラリソがティーンエイジャーガールに変身!」
「なにそれ馬鹿にしてる?」
事実なんだよなぁ。
振り返れば奴が居ると思っていた時代が俺にもありました。でも居たのは美少女である。これだけ聞いたら俺はラノベ主人公だな。タイトルは『俺のペットは美少女スライム⁉︎』とかに違いない。
「いやいや、全く馬鹿にするつもりは…。とにかく謎の非常事態だったから情報通のサクラさんを呼んだ次第でありまして。スラリソは美少女だし、サクラさんを呼び出したらスライムに戻るし、サクラさん怖いし、もうわけ分かんないのですわ。」
「うーん…それじゃあ信じるとして…。
まずスクショや動画は?無いなら容姿や言動に何か特徴は?バグとかはあった?何かフラグと思われる物や行動、イベントとかなかったの?ていうかスラリソだっていう確証は?プレイヤーネームとかなかったの?スライムから女の子に変わっていく所とか見たの?他のプレイヤーに見られたりとかはなかった?戦闘はした?コミュニケーションは取れそうだった?友好的だった?やり取りをしたのなら最初から全部教えてくれない?アジア系?ヨーロッパ系?服装は?気になる点とかあった?女の子になっていた時間はどれくらい?何か兆候とか考えられる条件とかあった?ていうかまず絶対に性別女性?男性の可能性は?ティーンだって判断した理由は?あ、あと貴方に何か影響はない?他に何か気付いた点とかあったら教えて。」
「怖い怖い怖い怖い。」
急に詰め寄りながら真顔で質問責めとかやめてやめて怖いです。まくし立てられても質問を覚えられないです。
「いいから早く答えなさい。こっちもあんまり時間無いのよ。」
そういやログイン時間も少ししか残ってないって言ってたな。それでもそれ以上に鬼気迫る何か、又は何か使命感めいたものを感じさせる表情をして…ん?
「スクショ…とかってチートツール使ってでもないと出来ないんじゃ?未実装だし。こんだけリアルなゲームだと絶対悪用されるし、実装されないってこた無いだろうけど運営もそこら辺の調整頑張ってる最中なんじゃねぇかな…。」
「…だから無いなら容姿とかを教えろって言ったでしょ。」
「んー…そっか。」
ふっと目をそらすサクラ。
ふーむ、何か違和感が残る感じだが、まぁいいか。先にスラリソの検証をしてもらいたい。知り合って間も無いパーティメンバーと気不味くなっても後がゲームしにくいしな。
「えっと、まず容姿は赤いさらさらロングストレートヘア、長さは腰くらい、かな。で、中高生のハーフ美少女って感じ。線が細くて可愛いって言うよりはちょっと幼さがある綺麗系っていう印象だったな。あ、あとワンピース着てた!白い奴!」
おい後ろの。可愛いとか綺麗とかの言葉に反応してんじゃないよ。ぽよぽよしてうるさいわ。お前ずっと掴んでるせいでその揺れがダイレクトに伝わって来るんだから。やめなさい。
「言動とかは、うーん…意味のある言葉は『スラリソ!』ぐらいかな。スラリソか?って聞いたら答えて、ふんぞり返って偉そうにしてた。後は『ん!』とか言いながらリトルドッグを指差したりしてたぐらいだったかな。」
「あ、とりあえずそのモノマネやめてくれない?貴方がモノマネしてるせいで想像してた容姿がどんどん美少女からかけ離れていくから。」
ぐふぅっ!!
アークは精神的なダメージを受けた!判定に失敗!一時的狂気に陥った!
「まぁモノマネはともかく…。お前らが居なくなってからすぐだったな。振り返ったら既に美少女変身してたからもうびっくり。指差してる方向にリトルドッグが居たからとりあえず迎撃したんだけど、スラリソがワンパンで吹き飛ばして戦闘終了。マジで強いわスラリソ。で、サクラを呼び出したらまたスライムに戻り出して今に至る。」
「ふーん…。じゃあバグとかもなかったのね?変身してた最中は?女の子になってた時間はどれくらい?」
「バグとかは感じなかったなぁ。時間はまぁ五分ぐらい?やっぱフラグがあるとしたらスラリソと二人きりってのじゃないかと思うんだが。」
ていうかバグの可能性とか考えなくていいだろ。仕様以外でそんなん普通無いだろ、普通。バグってのはもっとゴチャゴチャっとノイズとかグラフィックの崩壊とか、そういうのじゃん?モンスターが美少女になるバグとかそんなん大歓迎だわ。むしろ他のゲームにも感染するぐらいの勢いで構わない。でも討伐はしにくくなるかなぁ。
「そう…分かったわ。こっちでも検証してみる。」
「あぁ、また何か判明したら教えて欲しい。」
「……そういえばなんか、あんたさっき一緒にいた時とはとは雰囲気変わったわよね。」
おっと、勇者ロールが剥がれていたか。焦りすぎた様だぜ。
「そっちの方が良いわよ。少なくとも私はそう思うわ。」
「お、おぉう?そ、そっか。」
え、何、サクラフラグ立ってた?いつの間に…アーク、侮れない男!モテる男は辛いねぇ!
「前の感じだと気持ち悪かったから。」
…はい。勇者ロールやめまーす。
普通は最初にバグの可能性なんて考えないですよね。
そしてロールがロールと分かりやすく言動する前に剥がれてしまうの巻。ちなみにイケブタさんは素でイケメン。素ブタさん。