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ひのきのスティックはさいきょーのぶき(笑)!!  作者: ピンクのぽんちょマン
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王道にはプロローグが必須だと思っている。

まあてきとーな感じで。



それは見上げんばかりの巨大な樹。

森に飲み込まれた太古の遺跡。

朽ちた武器が散逸する荒野。

賑わう町と行き交う様々な姿形をした人々。

静謐な神官達がかしずく荘厳な空気に満ちた神殿。

人魚が泳ぎ、幻想的な光景に包まれる海底。

吹雪き、その合間にて現れる眩むような雪山の白銀世界。

空中を浮遊する大地の上で鎌首をもたげる巨大な竜。

大軍が一糸乱れず佇み、睨み合い、今にも戦いが始まりそうな草原。



視点は滑るように流れてゆく。

次に映し出されたのはどこかの洞窟の中だろうか、岩肌に囲まれた場所。

如何にもな装備を身に着けた男女五人組が松明の灯りを頼りに進んでいく。

そこに、何かが動く気配。五人に気取られぬ様にしているのであろうか。灯りの元には出て来ない。

しかし、他愛もない話をする振りをしながら互いに目配せをしている。


そう、彼らは気付いている。

待っているのだ、暗闇より敵が襲ってくる瞬間を。


突然、暗闇より巨体が躍り出てきた!

手にしていたこん棒を目の前の男を目掛けて振り下ろす!

男は即座に勢い良く前転!

見事な受け身を取りながら反転、敵と相対する。

暗闇から出てきた敵は腰蓑を身に着けた大男。しかし、その大きさは対する五人と数倍はあるだろうか。しゃくれている下顎から上に突き出た大きな牙、全身に纏った野生溢れる筋肉。唸り、咆哮を上げる様子からは話が通じるように見えない。


五人はそれぞれ武器を構えると目の前の大男へと立ち向かう。

後方に待機する杖を持ったミステリアスな女性と、細身の双剣を持つ耳の尖った軽装備の男性は走り込みながら呪文を唱えているようだ。

重装備に身を包んだ鎧の男性は身の丈以上の大楯を構えてこん棒の攻撃を防ぐ。

即座に法衣に身を包んだ後方の女性が跪き祈る。

鎧の男性を緑色の柔らかな光が包むと同時に、ほとんど防具を身に着けていない少年かとも見える小柄な男性が大楯の陰から短弓を構え、射つ。右目を射抜かれた大男は苦し気に呻いた後、痙攣するように体を震わせると膝をついてしまった。

この隙を逃す訳は無い!双剣にそれぞれ炎と冷気を纏わせた男性が回転しながら飛び上がり鋭く斬りつける!

後方、呪文を唱え終えた女性杖の先端の宝石から激しい雷を放つ!

全身からプスプスと煙を上げながら、大男は倒れ伏した。



場面は再び変わり、今度は晴れ渡る青空。

一転、嵐吹きすさぶ荒天。

目を光らせながら、姿見えぬ獣が潜む夜のとばり


突然、空間にひびが入ったかと思えば、穴の淵をガシリと掴む巨大な腕が出て来て…。


アリキタリファンタジー!

ついに5月12日発売決定!!




\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\


やったぞ!!ついに手に入れた!!五年前から発売延期を繰り返していたこのVRMMO!!

[アリキタリ・ファンタジー]!!!

略してアリファン!!


…まぁ名前はちょっとふざけてるけど、王道のファンタジー要素をふんだんに取り入れた王道の中の王道、それがこの[アリキタリ・ファンタジー]。厨二溢れる少年の心を持つ者達が集う場所になるだろう。


王道…それは良いものだ。世界の真理である。

世界中ではあらゆる少年少女達が王道のストーリーに憧れる。

王道の恋物語。

王道の冒険活劇。

王道の悲劇。

王道のあらゆる物語達。

正確には良いものが王道となるのだ。良いものは皆に好まれ、真似され、似せられていく。最初こそ異端であろうとも、それが本当に良いものはやがて標準(レギュラー)、つまり王道へと変わる。王たる道。堂々たる正道。それが王道。

厨二でもいいじゃないか。かっこいいんだものな。

夢見がちでもいいじゃないか。夢を見れない奴は夢を諦めた奴なのだ。

ありきたりとは素晴らしいものなのだよ!


そうして五年、待ったのだ…そう、五年だ…。長かった…俺もおじさんになるわけだ。

最初にPVが上がった時の興奮が蘇ってくる。ネットでは待ち続けた奴らと叩く奴らで大盛り上がり。祭り状態だ。叩いてる奴もなんだかんだ興味津々みたいで、購入した人数も多い様子。この盛り上がりが爆死の前兆なのかどうなのか。この私自らが確かめてやろうではないか…!!


とにもかくにも!!いざ!!プレイング!!

スイッチイイイィィィイ!!オオォォオン!!


-----------------


「…お?」


気が付くとなんだかサイバーチックな空間に浮かんでいた。目の前には真っ裸ののっぺらぼう。キャラメイクか?俺のユーザーアバターは?


【…ロード中です…25%…55%…80%…完了致しました。これより、当ゲーム[アリキタリ・ファンタジー]で使用するキャラクターのメイキングを開始します。VR機本体に記録されているユーザーアバターを使用しますか?】


あ、そっか…。アリファンのために本体も新しいの買い直したからな…。キャラデータは基本アバターしか記録されてないし、だるいなぁ。

ま、新規アバターの作成だな。【NO】だ!


【【NO】を確認しました。ユーザーの身体情報のスキャンを行いますか?身体情報からアバターを作成する場合、憲法第1029条『仮想現実における仮想身体の規制』より、現実の身体から体の部位ごとに15%以上の変更が求められます。】


【YES】!最初から作り直すとかめんどくさいかんね!!


【【YES】を確認しました。身体情報のスキャンを開始します。…23%…48%…74%…99%…完了しました。アバターの造形の変更を開始しますか?】


【YES】!


【【YES】を確認しました。アバターの設定を開始します。】


さてさて、アリファンのアバターならやっぱ、王道のイケメンを目指すべきよなぁ…!!いっちょやったりますかいね!

身長高め、髪の毛は金髪、目は青で…。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


「で、でけたぁ…。」


目の前には快活そうな金髪青目の少年が小生意気な顔して佇んでいる。え?身長高めのイケメンはどうしたのかって?


いや、よく考えたら王道のイケメンって大体かませかライバルポジだって事に気づいたのだよ。王道の主人公といえばやはり才能溢れる元気一杯の少年で、困難や強敵を乗り越えてだんだんと強くなっていくストーリーかなって考え直したのだ。


我輩、かませとは違うのだよかませとはっ!!


まあ、作ったイケメンがイケメンすぎてイラっとなったってのもあるが。

イケメンなんぞ爆発すれば良いのだよ。



それはさておき、とりあえず王道目指してアリファンの世界へレッツゴーだぜ!

俺たちの冒険はこれからだっ!


【まだ本サービスは開始されておりません。】


……ん?


【まだ本サービスは開始されておりません。】


………サービス開始はまだだったんだぜっ!

そういえば俺たちの冒険は明日からだったんだぜっ!!




MMO物って書くの頭使うのね。知恵熱出そう。

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