秋風の遊び心
無心になって文字打ってたら出来上がったので、熱が冷めないうちにと思って、ハイ。
お久しぶりです。多分誰も僕の存在覚えてません。
今は昼休みである。
一人の男が、仕事で首を切られた。その男にとって、首を切られることは初めてではない。もう、二度三度と経験している。
またか、と溜息を吐きながら、家に居たところでイラつくだけだろうと、煙草を吸いながら昼過ぎの町を歩いていた。
次の仕事は何にしよう、もう探す気も起きない。対して特技も無いし、アルバイトに落ち着こうか、とも考え始めていた。
秋風が冷たく、煙草の味を奪っていく。ムカムカした気分のままではそれさえ腹立たしく、煙草を吐き捨てて舌打ちを打った。
美味しくない煙草は無用だ。意味が無い。
役目を半ば強制的に終わらされた吸殻が、心做しか寂しそうに転がっていく。
_______あれは、自分だ。役に立たないなら意味が無い、それだけの理由で捨てられる、無様な生物の一つに過ぎない。
帰っても寒いし、飯を作ってくれる人も居ないし、これからどうしよう。……あぁ、人はこうして孤独死していくんだろうな。白い息がそれを男に悟らせては消えていく。
_______足元にボールが転がってきた。使い込まれていてもうボロボロで、強く蹴ったら潰れちまうんじゃねぇかって、それくらいのボロクソなサッカーボールが、転がってきた。
畜生、誰だ、俺に向かって蹴りやがったガキは。
ボールを足に掛け、向かって左手に広がる公園を睨み付けると、一人の少年が立っていた。
少しぶかぶかのジャージに身を包み、一歩一歩とこちらに向かってきている。あのガキか。
悪びれた表情はしていない、かと言って、馬鹿にしたような雰囲気も無い。
おいガキ、サッカーするなら周りくらい気をつけろ。
そう声を掛けてやろうとして、しかし言葉が出てこない。相手のガキに対して偉そうに出来る程、大きい人間じゃないから。
代わりに、白い息と共に何も思わず出てきた言葉を吐き出した。
「お前、一人なのか」
秋風に吹かれる寂れた公園に、ガキが一人。サッカーは一人じゃ出来ないだろうが、友達とやれよ、といった言葉の数々が次第に次々と浮かんできた。
ガキが、首を縦に振る。つまり、自分は一人であると。
なぁ、サッカーは一人では出来ないだろ。一人で寂しくないのかよ。
そう声を掛けてやろうか、止めておくか、脳内で激しく葛藤された。
二度も三度も首を切られた男が、八つ当たりのようにガキに酷い言葉を掛けてやるなんて大人げない。最低だ。
ならば、なんて声を掛けてやればいい?無言でボールを返して、あっさり引き返すべきか?
数秒間脳内で葛藤して、自分にとってらしくない言葉が零れる。
「一緒に、やるか?」
足に掛けたままでいたサッカーボールをガキに向けて軽く蹴った。
懐かしい感覚だ。自分もこれくらいガキだった頃、こうしてサッカーボールを蹴って遊んでたな、と。
ガキにボールが届くと、今度は少し強めに蹴ってきた。それが、ガキからの返答だった。これだけ強く蹴られるなら、と少しボールを飛ばす。受け止められなくて、遠くに飛んでしまいそうな威力で。
……思いっきり油断した。受け止められないだろう、と思って余所見をした隙に、奴はちゃんと蹴り返してきやがった。そのボールが顔面に直撃した。
「っ……てっめぇ、今のわざとだろ!」
そのまま足元に落ちたボールを、間も無く蹴り返した。しかしガキは蹴り返して来なかった。
「オイ、蹴り返して来いよ」
「ねぇ、そんなに笑ったり怒ったり出来るなら、頑張りなよ」
声変わりしていない、まだガキのままの幼い声が秋風に吹かれた。
「……あ?」
砂埃が立ち、少し目を瞑る。強めの風が、蹴り返したボールをこちらに運んできた。
ボロボロのサッカーボールに掠れた文字が浮かぶ。その文字に目を疑った。
男の名前だ。何故、俺の名を。
ボールを拾い顔を上げると、ガキは居なくなっていた。
寒さをもたらすだけの風が、またあの声を乗せてきた。
「頑張れよ、未来の俺」
久々に文章っぽい文章が書けた気がするーヽ(´・∀・`)ノ
あらやだ、そうしてるうちに昼休み終わっちゃう。