第1章 勇者達はわたしの・と・り・こ (2)
「申し訳ありません。送還は最低でも1年後となります。それまでの間、できるだけで構わないので、私達に協力いただけないでしょうか?」
ようやく、王女も俺の方へ向いて話し出した。俺も、これ以上俺を無視するならば、ここにいる全員に『淫夢』でも掛けてやろうかと思ったのだが・・・。
「そうだな、こちらの要求をのんでくれたならば、協力もできると思うぞ。」
「お金でしたら、支度金としてお一人様1000万G用意してあります。王宮にある武器や防具も無料で提供しましょう。ほかになにかありますでしょうか?」
「まずは、そちらの優秀な騎士や魔術師を付けてくれ、こちらの世界での戦い方を学びたいぞ。」
「それでしたら、近衛師団団長と筆頭魔術師をつけましょう。」
「その後1ヶ月かけて、周辺国を巡ってみたいぞ。」
「ほう、その訳は?」
「無いとは思うが、わし達を侵略行為の兵器のように使われては困るのだぞ。そうではないだろ!ならば、周辺国を見てきても大丈夫だな?」
「それは、信用頂けないということですか?」
「そなた達の信用は、わし達を呼んだ時点で0どころかマイナスだ。無理矢理、拉致してきたわけだからな。普通ならこの場で戦いになっても不思議ではないと思うぞ。ルル王女よ。そなたが逆の立場なら、どうする?真っ先に誘拐を疑うだろ。初めは大人しくしていても、逃げ出すことを考えるだろ。そういうことじゃ。」
王女は、ハッとした顔をした後、情けないほど動揺していた。
「私は、なんてことを・・・。わかりました。私を信頼して頂くためにも、同行しましょう。」
本当は同行してもらわないほうがいいのだけど・・・。まあ、仕方が無いか、どちらにしても1年後戻ってこなければいけないのだし。
「では、宝物庫にまいりましょう。」
・・・・・・・
宝物庫であらゆる防具や武器を装備しようとしたが、ことごとく弾かれる。宝物庫の担当である近衛師団団長のウォーリーによると、長年魔族と戦ってきたがため、一部の武器や防具を除いて、魔族が使用できないようにしてあるのだとか。
この宝物庫にある武器や防具で使えるのは、魔族から奪ったものだけなのだ。しかも、魔族は人族よりも身体が大きい種族が多く、多くの武器や防具は、両手でさえも持ち上がらないものばかりだった。
唯一使えたのは、先代の魔族のTOP3にまで登り詰めたこの世界のサキュバスの長が身につけていた防具唯一つなのだ。
そんなぴったりなものがあるのに、なぜ、他の防具や武器を手にしてたかというと、その防具は、どうみても、マイクロビキニなのだ。手に取って『鑑定』してみても、たしかに最強の防具で、身体の周囲に1Mのバリアが張られ、物理攻撃と火・水・風・雷の属性魔法と闇の無属性魔法の攻撃をすべて防いでくれる優れものだ。
唯一、光の属性魔法は防げないが、外見は魔族だが中身がニホンの男であるのだから、光魔法を受けても、なんら問題はないはずだ。そこのところは、大事なので来る時に神に確認した。召喚直後に光魔法で消滅とか、最悪そういうこともあるかと聞いておいたのだ。
背に腹は替えられない、仕方がないので、涙を飲んでそれを装備する。さすがに、この場で着替えれない。神にもらった無尽蔵に入るアイテムボックスこと『箱』に入れてから、『装備』を唱える。もちろん、着ていた30万円のアバターは『箱』に入った。
「うっひょー、すげよー。うん、よく似合うよ、よく似合う。触ってみてもいいかな。」
ジュウトが手を伸ばしてきたので、咄嗟に『電撃』を食らわす。
「げ、ここでもゲームのシステムが生きているのか。仕方が無い、見るだけで我慢するか。おーい、サカリもヤルも見にこいよ!」
3人でシゲシゲと見るに任せる。但し、手を出してきたら、『電撃』だ。実はゲームのシステムは働いていない。自分で『電撃』を放っているのだ。もし、これがバレたら、こいつらのことだ、力づくで触りにくるだろう。
1人ならなんとかなると思うが、3人一遍だと難しいかもしれない。なんせ、親密度が高いせいか、魔法攻撃が思いのほか良く通ってしまうのだ。まだ、人殺しにはなりたくない。
近衛師団団長のウォーリーも筆頭魔術師のラインハルトもガン見している。王女は前に居るせいか気付いていないようだ。
「さ、他の勇者達が待っているわ。行きましょう。」
「他にも、勇者が居るのか?」
「ええ、我が国は貴方達だけど、他国にも勇者を召喚できる魔術師が居るの。」
・・・・・・・
王女に案内され、大広間に入ると、やはり、男性からは、欲情に入り混じった視線を浴び、女性からは、敵対視線が送られてくる。
「ええ、こいつらなの。ルル王女が召喚した勇者達は?」
「そうよ、ラインハルトも証明してくれるわ。」
「だって、サキュバスでしょ、敵じゃないの?」
こっちで喚いているのは、どうやら他の国の召喚者のようだ。
「どうも、勇者のサキュバスが居る異世界らしいのよ。間違いなく勇者よ。」
・・・・・・・
向こうのほうで、控えていたのであろう。他国の勇者達が、揃ってこちらにやってきた。
「よろしく、ヒノモトの勇者達、私は、ヤマトの勇者、零だ。前衛でタンク担当だ。」
ホウホウ、中々のイケメンだが、その欲望の入り混じった視線はやめてくれ。
「わしは、サキだ。よろしくたのむぞ。回復担当だ。」
「私は十子よ。よろしくね。火力よ。」
気の強そうな子だな。要注意だな
「俺はジュウト、槍使いで中衛担当だ。よろ~。」
「私は百恵なのね。よろしくなのね。水魔法担当なのね。回復もすこしだけどやるのね。」
ライバル心、むき出しだな。
「俺はサカリ、大盾使いの力持ち、前衛だ。よろしく。」
「僕は、万葉だよ。付与魔法専門だよ、もちろん、女の子だからね。よろしくー。」
僕っ娘かよ。こりゃ、ハーレムだな。3人ともレイを見る目が違う。恋する乙女なのか?
「俺は、ヤルだ。弓使いの後衛だ。よろしくな。」
俺は『魅了』をレイにかけ、耳元で囁いた。
「すまん。わしの『ヒーリング』は、親密度が上がるほど、回復量が増えるんだ。おそらく、掛かるかどうか選択肢がでてきていると思うが、YESを選択してくれんか?」
俺は更に、彼の手を胸元に導き、こう囁いて『魅了』をかけつづける。
「1回につき、1タッチOKだぞ。さっきから、触りたかったんだろ!」
『魅了』はすべてYESなのだろう。さっきから、頭の中で親密度が上がりましたとアナウンスが続いている。そろそろいいか。
「なにしてるのよ。ふざけないでよ。私達のレイを・・・。ちょっと、胸が大きいと思っていい気になってんじゃないよ!」
俺はトウコを無視して、レイにお願いする。
「レイ、親密度のこと説明してやってくれ。説得してほしいぞ。」
レイは親密度が上がったせいなのか、胸を触ったせいなのか、ポーっとしたまま、彼女達に説明している。
「イヤ、絶対にイヤ!」
「何でだ?なにも損はしないじゃないか。な、是非とも、してもらおうよ。」
「僕はいいよ。やってもらおうよ。じゃ、お先に。」
「裏切りもの!」
カズハはこっちにトコトコとやってきた。
「おねえさんの胸おっきいね。受け入れれば触ってもいいんだよね。じゃ、いっただきまーす。」
レイは遠慮気味だったが、カズハは好きなだけ触り始める。俺は、できるだけ気分を逸らしながら、『魅了』を放ち続ける。親密度がMAXになったので引き剥がす。こら、ひっぱるな!見えるだろうが!
ビキニを直し、顔を上げるとレイや俺の仲間はもちろん、この部屋に居る男達はいっせいに目を逸らした。ひー、全員に見られた。・・・・アレは男の乳首だ。見られても困らない困らない・・・・。ひたすら暗示を掛けておく。思わず、涙目になったのは、内緒だ。
「ほら、団長達もこっちに来てくれ。」
「わしもさわっていいのかの?」
「いいわけないぞ。まあ、真近でみるのはかまわんが。」
もう、好きなだけ見るがいい。ウォーリーとラインハルトを初め、戦力になりそうな男達が近寄ってくる。そんなに傍で見たかったのか。俺は皆に向かって『魅了』をかけつづける。
「ルルはいいのか?」
「私は、胸が見たいわけじゃないもん。」
そうじゃないだろ。そうじゃ・・・。
「なら、いざという時真っ先に死ぬのだぞ。それでよいのか?」
「へっ、ああ、親密度を上げるのだったわね。あまりにも、イヤらしい男達ばかりで忘れてたわ。」
そうかもしれないな。俺もうんざりだ。
「ん、じゃ、お願い!」
俺はルルに向かって親密度がMAXになるまで『魅了』をかけ続けた。
俺はトウコに向かい最後通告を突きつける。
「じゃ、合同チーム戦になった場合、真っ先に死ぬのは、トウコさんに決定だぞ。まあ、好きにしてくれや。」
「え、イヤよ。」
「イヤなんだろ。別に掛けないよ。まあ、HP回復ポーションを沢山持っていくんだな。」
「ダメよ。掛けて、掛けてよー。」
虐め過ぎたかな。泣き崩れてしまった。俺は、傍に行き無理矢理立たせる。
「ほら、ラストチャンスだ。わしにキスしてみろ!ならば、掛けてやるよ!」
トウコは意を決したかのように、必死になってキスしてくる。まあ、これ以上虐めても仕方が無いので、『魅了』をかけ続け、親密度をMAXにした。
こらこら、そこの勇者レイ、生ツバを飲むんじゃない!そんな目でみても、してやらんぞ。カズハ!