第1章 勇者達はわたしの・と・り・こ (1)
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始まりの街では、冒険者ギルドに所属して、薬草採取や街の周囲で小動物相手に討伐を行う。そんなありきたりのパターンだった。いままではゲーム廃人が作ったギルドに所属し、先輩達が不要になったアイテムや武器を安く譲ってもらって、あっという間にレベルアップが完了するのだが、ここは違った、ギルドで売っている武器も店で買うよりは安いが、店へ売るよりは、高い設定にしてあり、より現実に近い様相となっていた。
まだ、運営の課金ガチャのほうが、当たりはずれがあるぶんいいかもしれない。きっと、運営の思惑もそこらあたりにあるのかもしれない。
俺の衣装で課金口座を使い果たした俺達のチームは、ひたすら目立った。ほとんど、同姓同士のチームの中で、俺達だけ混合なのだ。しかも、種族はサキュバスで、きわどい衣装を着ているのだ。いったい、どう思われているんだか。男性キャラからは、欲情に入り混じった視線を浴び、女性からは、敵対視線を浴びていた。
課金アバターがすべてパーになる、キャラメイクのやり直しはできないし、仕方が無いので、そのまま続行し、今は周辺の小動物相手にナイフを振るっている。そう、私が討伐主体なのだ。不思議と思われるかもしれないが、チームでは、まず回復系を育てるのが最優先なのだ。
3人が、1ドットのHPを残し、削り取り、最後に俺が、ナイフを振るう。そんな光景が延々と続けられた。こういうことは、ゲーム廃人にしかできないと思うが、パンピーはできるのだろうか。何百匹目を殺してやっと、レベル3へ上がる音が聞こえた。
まず、俺は、味方の3人に『魅了』をかける。こうすることで親密度が上がり、チーム向けの回復魔法が徐々に上がって行き、最終的には500%増まで達するのだから、バカにできない。
それからは、皆平均的に経験値を得て、ようやく始まりの街を出て、旅に出られるレベル10に達することができた。ちなみに、俺の成長性は高く、レベル15まで達しており、敵をパニックに陥れ、敵同士を相打ちにさせる魔法を覚えた。3人との親密度もうなぎ登りに増えて行き、私が命令すると逆らえないようになっていた。
・・・・・・・
とつぜん、目の前に「召喚クエストが発生しました。召喚に答えますか?YES・NO」と表示された。3人を見渡すと皆頷いている。そうこういったイベントは、受けたほうが得なのだ。特に初心者レベルなら、ボーナスステージといっていい。
俺は、YESを選択する。そうすると、白い靄が掛かった場所に出た。
『すまない!君たち4人に異世界からの召喚魔法が降りかかってしまった。これから、君たちには、異世界に行ってもらうのだが、私達からプレゼントだ。君たちがやっていたゲームと同様のシステムのスキルポイントを400ポイント用意した。好きに割り振ればいい。まあ、その1割だけでも、十分に異世界の勇者としてやっていけることは確かだが、安全に帰ってこれるようにするのも、私達、神の役目だ。』
俺達はまだ、これはゲームの一部だと思っていたのだが、次の光景をみたとたん、足が震えてきた。それは、部屋でVRMMOのヘッドセットを被っている俺達の身体だ。
「え、これは、現実?本当に異世界に行けと・・・。」
「そうだ、だから、報酬の前払いを渡したのだ。元の身体は心配しなくていい、戻ってくるのは、こちらの世界で約10分後だ。そのまま、ゲームの世界にもどしてやる。」
結局400ポイントは、親密度が上がったままなのか、すべて、私にというのを、無理矢理、各自に50ポイントずつ使わせ、残り250ポイントの半分以上である150ポイントでサキュバスのスキルに極振り、残り100ポイントで、回復魔法系、補助魔法系を最大にしてもまだ残ったので、状態異常付与に残りをつぎ込んだ。
『終わったようだの。では、言ってくるがよい。まあ、ゲームだと思い、楽しんでくるんだな。』
神はそういい残すと次の瞬間には、薄暗く少し広い空間になにやら魔方陣が書かれた場所にたどり着いた。
・・・・・・・
「なんで、サキュバスが・・・。わ、私間違えた?悪魔を召喚してしまった?」
「おちつけ、お前が召喚者か、我らのチームを召喚したものは・・・、一応言っておく、大変迷惑だ。即刻、送還しろ!」
突然、目の前に、「今、鑑定を受け取りました。ステータスを渡してもよいですか?YES・NO」と当然NOを選択する。どんな相手かも解らないのだ。与える情報は少ないほどよい。
「こやつらは、間違いなく勇者達です。勇者達以外には、鑑定魔法を拒否できないのですから!」
「じい、ようやった。ようこそ、勇者の方々、私は、ヒノモト王国、第1王女ルルと申します。ようこそ、いらっしゃいました。」
ルルは、俺の目を見ず、他の仲間の方を向いている。
「誰に向かっていっておる。わしが、このチームのリーダーサキだ。間違えたなら、さっさと送還しろ!」
俺は思わず、気が立って、そう言ってしまう。なんとなく、ゲームでこのもの言いが受けたので、思わずそのまま使ってしまった。
「サキさま・・・ですか。」
尚も逡巡する様子が見られたが、とりあえずは考えるのを放棄したようだった。
当分は王女との絡み中心になる予定です。