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第6章 魔王を・さ・が・せ (2)

お読み頂きましてありがとうございます。

 この半年間、いろんな国のいろんな都市を駆け巡った。


 大量の奴隷を従えていると聞いていってみると、その領主の奥方が金を湯水のように使って奴隷を買っているだけだったり。


 なにをしても、草木1本生えない土地があると聞いていってみると、俺が『チームドレインライフ』を使った場所だったり。


 人族に大量の餓死者が出たと聞いていってみると、主食を買占めている悪徳商人が居たり。


 大量の死者が出たと聞いていってみると、ワイバーンが狩りをしている最中だったりした。


 俺?もちろん、放置してきたさ!だって、世直し旅をしているわけじゃないからな。


 結局、魔王どころか魔族のオリエンスやアリトンの活動の一端さえ、掴めなかった。それどころか、魔族に餓死者が出て、休戦状態をいいことに、大量の悪徳商人がやってきて、搾取のかぎりを尽くしていたり、ある王家が食料援助を条件に、魔族の秘宝を要求していたり・・・もちろん、そういうのは潰した。


 我が領地が地道にしている援助が無駄に終わるのは困るし、秘宝は俺が貰いうける代わりに王家の提示した額の1.5倍の援助を約束した。


・・・・・・・


 しかし、すべて無駄に終り、この日を迎えることになった。


 明日には送還準備がすべて整うらしい。今日の晩餐は、ヒノモトの王家が主催した、ごくプライベートなものになった。


 最後の最後まで欲望に満ちた視線に晒されるのは嫌だから、このようにしてもらった。


 国王と俺の仲間以外はすべて、女性である。侍女はもちろん、給仕も料理人も、警護、果ては門番まで女性で構成されていた。


・・・・・・・


 晩餐が終り、国王のプライベートルームで恐れ多いことに国王シーダー自ら、秘蔵の酒を供してもらっていた。ニホンでは、未成年だか、異世界の成人を既に超えているので、別にかまわないだろう。


「では、ラインハルトに『譲渡』をよろしくお願いします。いままで、重責お疲れ様でした。」


 俺は国王シーダーから優しい言葉を得て、筆頭魔術師である、ラインハルトに対して、隷属関係をすべて、預ける。これで、暫くは休戦状態を維持できるだろう。


 そういえば、ラインハルトに対しては、『鑑定』していなかったような。念のため、見とくか・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・げ、魔族だ。


 ということは、隣の近衛師団、団長ウォーリーにも『鑑定』をする。


・・・・・・・・こいつもか・・・・。



「ん、どうした。」


「いえ、準備がありますので、少々お待ち頂けますでしょうか?」


 俺は内心の動揺を悟られないように、精一杯平静を装って言う。


「ルル王女こちらへ。」


 儀式の最中に、全く予定のなかった、ルルは、すこし驚いた顔をしたが、すぐに神妙な顔を向けてこちらにやってきた。


 つぎの瞬間、意識が飛びそうになり、必死に唇を噛み締める。先ほどの酒に何かが混入?で、この二人が魔族だとすると・・・。防具である、例のマイクロビキニにMPを投入し、ルルに告げた。


「こ・の・・二人が魔族だ・・・ということは・・・魔王は・・・シーダー・・・。」


 これを言った途端、意識が完全に飛んだ。


・・・・・・・


 意識が戻ったので、身体を起すと、目の前にはルルが居た。そして、周りにはいつのまにか鉄格子が張り巡らされていた。


「よかった。意識が戻ったのね。」


「あれから、どうなった?」


「すぐに、ウォーリーに捕まってしまったわ。貴女には、手出しできなくて、貴女の周囲にこの鉄格子を嵌めていったわ。」


「ルルは、連れて行かれなかったのか?」


「ええ、ここに閉じ込めておくのが都合がいいらしいの。それに、貴女が隷属支配してくれていたから、助かったわ。私には、『支配』が効かなかったらしいの。」


「そうか、譲渡はできても、上書きはできないのか。」


「ほ、本当に、父が魔王ですの?」


「おそらくな。数年前に国王が床についた時期があったと言っていたな。何年前だ?」


「そうね。たしか・・・7年前だったわ。」


「たしかか?」


「ええ、私の10歳の誕生日の直前だったから、よく覚えているわ。」


「それなら、一致するな。アマイモンの話では、7年前に魔王が降誕したと巫女が言ったそうだ。密かに近づいたオリエンスとアリトンを従えるために、魔王としての能力を使ったとしたら、人族の身体には、負担だったのだろうと思う。」


「そうね、それまで、聞いたことがなかったラインハルトとウォーリーが相次いで、近衛師団団長と筆頭魔術師に昇格したと聞いたのも、その頃と覚えているわ。しかも、私が魔術師の職業持ちだときいたからか、この王家には伝わっていなかった召喚魔法を積極的教えてくれた。今、考えるとおかしいところばかりね。」


「もし、召喚できたのが魔族ではなくても、『支配』を積極的に教え、使わせるつもりだったのかも・・・。侯爵に任命されたせいで、国王とわしは国王の身体に負担が少ない従属関係が刷り込まれている。実質、魔王が世界征服したも同然なわけだ。」


「しかし、折角、重臣の位を与えたのに、帰ると言い出した。従えている魔族に『譲渡』できれば、しめたもの。できなくても、貴女を拘束できれば、問題ないわけだわ。」


「とすると、一生ここで飼い殺しか。ルル、ここでは、送還魔法は使えないのか?」


「ええ、あれは大量のMPが必要なの。王家に伝わる拳大の宝玉にMPを込めるだけで、1年近く掛かったわ。あの場所でしか使えないわ。」


「おそらくルルが知ってしまったのは、誤算だと思う。わしとルルを同時に謹慎させるのも、無理があるだろう。ルルは信じていない振りをしろ!できるか?」


「でも、貴女は大丈夫?」


「ああ、この防具さえあれば、手出しはできない。食べるものも、『箱』に大量にあるから当分篭城できるぞ。」


「そうね、魔族を探すのに各国の各都市を巡り、各都市で大量に食料を買っては、『箱』に仕舞っていたものね。」


「ああ、向こうに帰ったあとで、ゆっくり楽しもうと思って買ったのがよかったらしい。」


・・・・・・・


「ああ、起きたのかい?ルル。」


「パパ、なんで私こんなところに居るんですの?」


「サキュバスの言うことを信じないのかい?」


「それはサキュバスですもの。信じるわけが無いじゃないですか。『支配』を受けたのも国に有用だというだけですわ。反逆するのであれば、不要ですわ。」


 結構、辛らつだな。嘘だと解っていても、傷つくな。


「開けてあげるから、こっちへ来なさい。」


 ルルには言わなかったが、この瞬間がチャンスだ。開いた瞬間、ルルを押しのけ、転がり出る。


「パパ!!」


 相手は、とんでもないHPを誇る魔王だ。高火力の魔法を持っていない俺は、どうやっても、勝てないだろう。しかし、親密度はMAXにしてあるから、魔法は通りやすいはずだ。


「世界征服したいのだろう。さあ、受け取れ!!『譲渡』」


 たかだか、4大魔族の2人を従えて寝込んだ国王だ。さらに他の4大魔族の2人と100の種族の長や人族、妖精族、獣人族のすべてを、従えさせたらどうなるか。しかも、本人はそれを常に望んでいる魔王なのだ。拒否できるはずもない。


 国王シーダーは、歓喜に満ちた表情をしながらも、急速に衰え、皺だらけになって、息絶えた。


 魔王を葬った俺はというと、巨大な経験値を得て、これまでに経験したことの無いレベルアップ痛にみまわれていた。急速にスキルポイントが増えていくのかと思えば、レベルアップ先を意識しないと5ポイントからは、HPとMPが交互に上がっていくらしい。

 試しにMPに意識を向けるとMPが、腕力に意識を向けると腕力があがっていく。この世界でMP不足に悩んだ俺は優先的にMPのレベルアップを行った。


・・・・・・・


 それからが大変だった。オリエンスやアリトンは、魔王が倒されたことで諦めがついたのか、あっさりとその首を差し出し隷属支配に加わったが、ヒノモト国はいきなり、国の屋台骨である国王と重臣2人を失ったのである。


 しかし、侯爵達が代替わりしていたからか、隷属の支配下においていたからか、国の体制はニホンを真似た体制に簡単に変えられた。


 まず、ルル王女の弟を国王に据えたが、実質の権限は剥奪し象徴とした、そして、高額納税者から選ばれた衆議院、貴族で構成された貴族院の2院制で国王を補佐し統治を進める首相を選べるようにした。


 なぜ、一般市民に選挙権が無いかというと、税金で魔獣を討伐する冒険者や貴族を養う必要があるからだ。もし、一般市民に有利な治世を行ったならば、冒険者や貴族はすぐに路頭に迷い、魔獣を討伐できなくなる。そうすると、犠牲になるのは一般市民というわけだ、


 つまり、一般市民に選挙権を与えると風が吹けば桶屋が儲かる的に一般市民が犠牲になるわけなのだ。


・・・・・・・


 俺はさらに、国の体制を整えるために、首相に立候補し、一人目の首相に就任した。ま、全侯爵を支配している権力を使っただけなのだが。


 就任1年後、衆議院選挙が行われ国の体制が整ったのを確認し、ルルに送還準備に入ってもらう。

 結局、国王シーダーに対して、行った隷属支配の『譲渡』は、譲渡途中で国王が死んだことで、跳ね返り、俺に戻ってきている。熟考の末、新たな譲渡先は、ヤマトのレイにお願いした。


 そのことがヤマト国に伝えられると、ヤマト国の重臣の全員の一致した意見として、レイがヤマト国の次期国王に推挙され、国民に承認された。


・・・・・・・


「これで、お別れですね。寂しくなります。」


「すまんな。異世界に縛り付ける結果になって。」


「そうですよ。一生離れられないじゃないですか。しかし、それは解っていたことです。召喚されたときに、送還できないときっぱり言われましたから。」


「そうなのか?」


「ええ、元は魔族が開発した魔法の一部だけを取り込んだもののようで、過去を振り返っても送還したという歴史はヤマトには伝わっていないようです。ああ、ルル王女ではダメです。貴女達の話を聞いて、わかったことがあります。俺達のニホンよ貴女達のニホンは別の次元のニホンだということを、なんせ俺達の世界にはVRMMOというものは存在しませんから。」


「帰るニホンは召喚者しか判らないということか。君達の召喚者が送還魔法を使えないかぎりは無理というわけだ。」


「まあ、俺は貴女の居ないニホンなんか帰るつもりは、さらさら無いのですけどね。貴女が残した痕跡がある異世界のほうが、マシです。さらに貴女が残していってくれたものを守る使命も貰ったのだから・・・。」


「ああ、ありがとう。君は最高の友だよ。」


「友より、恋人のほうが良かったんですけどね。最後にお願いを聞いてくれますか?」


「ああ、おいで!!」


 俺は、彼にキスと身体にタッチする権利を与えた。それくらいの対価は必要だろう。こら、下半身はダメダ!!胸をまさぐられるまでは我慢したが、手が下半身にタッチしてきたので、ピシリと叩いてやった。


・・・・・・・


「これでお別れですが、貴女を送還したあと、必ず、私もニホンに行きますからね。待っていてくださいね。」


「諦めていなかったんだな。まあ、一度きりの人生だ。後悔のないようにな。」


「はい、3年以上もこの世界にために、ご協力頂きありがとうございました。」


「なんだ、締まらないぞ。そんな、涙目で言われてもな。」


「そこ!突っ込むところですか、もう。では、いきます。」


・・・・・・・


 次の瞬間には、神の前に立っていた。


 あれっ・・・たしか、VRMMOの世界に戻ってくるはずじゃ・・・。


「不思議そうじゃの。そうVRMMOの世界に戻すつもりだったんじゃが・・・事情がかわっての。まあ、もうすぐ来るからまっておれ!」


 暫く待っていると、やや大人びた姿のルルが隣に現れた。


「本当にやって来たんだ!にしては、そちらは、あれから何年後の姿なのか?」


「ええ、もうあれから10年経ってしまいましたわ。」


「とういうことは、もう30歳か?」


「違いますわ。20代です、20代です。」


 17+2+10=29か


「すまんすまん、20代ね、20代。向こうは変わりはないか?」


「ええ、ヒノモト国は貴女の敷いて下さった政治体制を今も保ってます。ヤマト国もレイ国王に正妻4人で側室20人で物凄い子沢山になっています。」


「話の途中すまんがいいかな。」


 ああ、そうだった。目の前の神と話していたのだった。


・・・・・・・


「え、マジですか?」


「そうだ!お主が行ったときは、魔王が寿命で死んだ後、帰ってくる予定だった。それなら、与えたスキルポイントだけをお主の魂から引き剥がせばすむだけだった。」


「俺が魔王を倒したために、レベルアップが魂に刻まれ、まっさらな赤ん坊からやり直すしか無いというわけですか?」


「いや、他にも選択肢はある。」


もう、お判りと思いますが、まだ完結しません。


主人公にはどんな未来が待っているのでしょうか?

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