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第5章 私が魔王なの・か・し・ら (1)

お読み頂きましてありがとうございます。

 魔族の部族の長をすべて、俺の支配下に置いて、ヒノモトに帰ったとたん、まことしなやかに、俺が魔王なんじゃないか・・・既に世界は魔王の支配下におかれたのではないかという、噂が飛び交っているという。どうやら、噂の出所は、ヒノモトの他の貴族達のようだ。


 今回の戦いで、勝ったことで魔族の国を属国化して奴隷として扱うことができると考えていたようなのだ。それが、単に俺の支配下に置くだけで、ただ休戦を勝ち取ってきただけでは不足なようなのだろう。


 面と向かっては言ってこないものの、事あるごとに、こちらのやることなすことに文句を付ける。偶に領地の政策で失敗すると、それみたことかと直ぐに見下げる。


 俺も好きで魔族の国に対して賠償請求をしなかったわけではない。魔族の国の至る所を回ってみたが、どこもかしこも貧乏で、戦争に負けたことで物資が滞り、飢え死にするもの達が出ている。そんなところに損害賠償をしても仕方がないのだ。


 ヤマトもヒノモトも飢え死にする人はいない。戦争で死んだ家族を持つ人々でさえも、遺族手当てでそれなりに裕福な暮らしを満喫している。


 せいぜいが農村部で重税にあえぐ、農民達ぐらいだ。カツカツの生活を強いられているのは・・・。このあまりに経済格差が酷い現状をみると、損害賠償どころか、魔族を奴隷として働かせることさえもできない。本当は援助したいくらいなのだが・・・。


 しかし、情報とは漏れるもの。いつしか、俺が魔族を奴隷支配できることが世間に知れ渡ると、当然の要求とばかりに、奴隷の分け前を要求される始末だった。


「なぜだ。お主の領地では、魔族を働かせているそうじゃないか。100人でも200人でもいい、こちらに回してくれ!」


 確かに、参勤交代のつもりで、魔族の長の半分とその随行員でおよそ2千名をこちらで働かせはしている。3ヶ月後には入れ替わりにもう半分の魔族の長と随行員が来ることを予定している。


 この方々には、人族と全く同じだけの給与を払っており、一種の出稼ぎである。稼いだお金で、領土内の食べ物を買って帰ってもらえば、飢え死にする魔族も減らせるだろう。


 しかし、この考えも賛同してもらえず、タダ同然の労働力として欲しいと言うのでは、到底渡すわけにはいかない。たとえ、ある程度の給与を出すところが現れるにしても、部族の長を一種の人質として近くに置いているせいで、大人しいだけなのだ。


 これを引き離せば、どんなことになるかは、目に見えているだろう。きっと、そういうことがあっても、それに対する保証まで要求してくるのは、わかっている。


「だから、お主が『支配』すればいいだけだろうが・・・。」


 MPも無尽蔵ではないのだ。2千名の半分であっても-2000MP、『支配』だけで合計最大MPの3分の1を失うことになる。とても受け入れられない。


 魔族との戦の最中に『魅了』で築いた親密度など、もう下がりすぎて、崩壊寸前だ。


 そのうち、王宮での応酬に留まらず、領地の境での諍いは日常茶飯事で、時折冒険者同士の殺し合いなのか、軍隊を送り込んできているのか解らないくらい物騒になりつつあった。


「ルル、どうすればいいかの?もう、一掃の事、あやつらを打ち滅ぼしてしまえばと思うぞ。」


「お待ちください。こちらから仕掛けるのは、不味いです。1侯爵と戦っている最中に他の侯爵達がどのような手を打ってくるがわかりません。最悪、戦争を仕掛けた罪で領土剥奪となりかねませんから。」


「では、どうすればいいんだ。もう、一掃の事、領土を捨て魔族の領土にひきこもろうか?」


「今度、王宮である話し合いがチャンスです。そのときばかりは侯爵達が一堂に揃うのですから、煮るなり焼くなりすきなようにどうぞ。」


「ルルがセッティングしてくれたやつか?もしかして、ルルも怒って居ったのか?」


「ええ、もう腹に据えかねております。父にも、どのような手を使ってもいいと、承諾を得ましたので、好きにやっちゃってください。」


・・・・・・・


 ワザとヘベレケに酒に飲まれた振りをした。その日の宿は、王宮に泊まらずに、近衛師団宿舎近くの高級宿を貸しきった。仲間の勇者達は、繁華街に行き、娼館めぐりだ。さらに、ルルは、王宮に泊まってもらった。


 俺は、王宮から派遣された、わずかな随行員と共に、宿に戻ってきている。おそらく、随行員は、どこかの侯爵と密通しているだろう。こちらの情報はダダ漏れだ。


 だが、ここまでの計画を立てたのはルルだ。密かに宿の近くには、乞食に身をやつした近衛師団を張り巡らせているし、ルルも王宮からのこの宿に直結している脱出孔で厨房に待機してもらっている。実際この宿の主人は、後宮の女官長だった人物で、この宿の従業員は、すでに後宮の侍女達とすり替わっている。


 どのような手を使うかわからないが、必ず、俺を襲い、俺を自分達の支配下に置こうと企むであろうことは確実だろう。


・・・・・・・


 とつぜん、周りが騒がしくなり、覚醒した振りをする。


「うう、何奴ぞ!」


 周りには、いつのまにか、50名くらいの屈強な男共と侯爵達が現れた。飛んで火にいる夏の虫ってところだろう。


「この人数にマワしてしまえば、如何なサキュバスとて、従順になるに違いない!やってしまい、野郎ども!!」


 俺は、既に例のマイクロビキニを着て準備万端だ。そう、どんな物理攻撃も半径1Mで無効になってしまう。1MPでおよそ1時間持つから何年でも耐えられる。まあ、数時間もかからず、近衛師団が制圧するに違いない。


 俺はベッドの上で寛ぐことにした。周り中、むさ苦しい男達ばかりだが、それは我慢するしかない。


「どうしたのだ、さっさとヤっておしまい。」


 どんな剣の使い手だろうとこのバリアは越えられない。先ほどから、数人が一斉に剣を振り下ろしているが、弾き返され、魔術師が放った炎が水が風が雷を悉く、弾き返す。そのうち、近衛師団の先陣を切って、ウォーリー団長がやってきた。


「おお、いいところへ。このサキュバスに拉致されたのだ。」


 言うに事欠いてそれかよ。そろそろ、出番だぞ。と部屋の隅に目線を移動する。


「すべて、見ておりましたわ。侯爵達がこの男共を引き連れてこの部屋を襲ったのです。」


 部屋の隅から、秘密の通路で厨房からやって来たルルが、其処には居た。


「ぐぬぬ・・・。仕方がない、やってしまい!とにかく、ここから脱出するぞ!」


 そろそろ、使ってもよさそうだな。『ハイドレインライフ』このスキルは、単純にある相手からHPを取り出し、自分のものにするものだ。一瞬にして、侯爵の近くにいた男が皺皺の状態で倒れる。『淫夢』『淫夢』『淫夢』『淫夢』『淫夢』あっというまに5人の男達が、そこらに転がって、如何わしい夢をみている。


「そこを退け!そこを退け!そこを退けというのがわからんのか、お前の家族がどうなってもよいのか?」


 案の定、近衛師団の中にも、買収されたり脅されたりしていた奴らが居たようだ。


「ほら、お前達、侯爵達によく見えるように、お見せしろ!!!」


 ウォーリーが叫ぶ!近衛師団の首元から現れたのは、隷属の首輪だ。何があっても裏切れないように、一時的にこの場に居る団員は、俺の支配下に置いてあるのだ。


「なんていうことだ!あれだけ、日頃から飼いならしていた副長さえも、逆らえないというのか!」


「で、この結末はどうしたらいいかの?ルル?」


「侯爵と伯爵あわせても、20名くらいなのだから。隷属してしまえばいい。そうすれば、もう、貴女に逆らえるものなど居はしないわ。」


「わかった。よし!お前達、死ぬのがいいか?隷属されるのがいいか?好きに選べ!」


 侯爵達は全員死ぬのは嫌らしく、その場で隷属の首輪をハメて『支配』を唱えた。


「さあ、しゃべってもらおう。お主達の悪行と近衛師団との癒着振りを・・・。」


明日7時に更新します。

毎週金・土曜の7時に更新する予定です。


いつも評価を入れて頂きましてありがとうございます。



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