事故
あんまり落ち込んでいる暇もない…
もう仕事に行く時間か…
「ハイお弁当」
「今日は何時くらいに帰れるの?」
(何だか機嫌がいい…かな?)
「なるべく早く帰るよ…」
「今日は頑張って帰ってきた方がいいかも…よ」
玄関を出て、ふとさっきの妻の含んだ笑顔を思い出す。
「何かの記念日かな?」
思い出せそうにもない。すぐに仕事のことに頭を切り替えた。
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(学校近く)
「あれっ?」
「今お父さんが呼んだ?」
「お姉ちゃん!そんなわけないでしょ!」
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(家の中)
「お父さん不思議そうな顔してたわ!」
「早く帰るように後でメールしてみよっ」
プルル プルル プルル プツッ…
「もう~、間違い電話かしら、取ろうとしたら切れるなんて」
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(駅前)
(あー。やっぱり気になるな!電話して聞いてみよう。これじゃあ仕事に集中できんよ)
携帯を取り出し、家に電話する。
呼び出し音が鳴る間も何の記念日なのかを考えている…
駅前の大通りの横断歩道に差し掛かる。
キキー!! ドボッ・・・
携帯を持っていたのが悪かった…
一瞬逃げ遅れてしまった…
交差点を猛スピードで曲がって来た大型トラックに引かれはしなかったが、サイドミラーにバッグが引っ掛かり道路沿いのビルの壁までふっとばされてしまった。
(くそー、まいったなー、結構やばそうだ…)
変に冷静な意識もすぐに消えてしまった…
小さく聞こえた声・・・救急車・・きゅう・・きゅ・・・