39歳
「おはよう」
リビングへ通じる階段を下りながら、まだ眠い気持ちを振り払い
精一杯の元気さとさわやかさを意識しながら挨拶してみた。
・・・
「はい おはよう」
オープンキッチンの向こうから妻の声…
・・・
目の前に座っている14歳と11歳になる娘たちはTVを見ながら
ロールパンを食べ、まるで返事などしない。
(存在を認めたくないかのようだ)
私がテーブルに着くと、スーと席を立ち、お母さんにだけ
「いってきまーす」
(私のひがみもあるが)
挨拶もそこそこに二人とも学校へ行ってしまった。
「ふー」知らずのうちにため息が漏れる。
「年頃でしょ!」
妻の結衣が何かを感じたのか慰めの言葉をくれた…
「わかっているよ」(わかってはいるつもりでも寂しさはごまかせないんだよなー)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私は 佐藤春一
妻の結衣と恋愛の末結婚して、もう15年
二人の娘を授かり、郊外に一軒家を立てることもできた。
仕事は都内の広告代理店の課長
このご時世でも何とか黒字の会社のおかげでローンも払えているし、家族にもそれなりの生活をさせてあげることが出来る。
その反面、忙しすぎる仕事は、私から家族との時間を奪っていく。
よき理解者の妻はまだしも、子供たちには不満もあるだろう。
長野に住むお互いの両親などは、たまに電話すればよいくらいだ。
仕事人間ではない自負はある。
家庭は毎日かえりみている!
けど、しょうがないだろう?って毎日思っている。
そんな39歳の秋のいつも通りの朝食の風景…
そう
いつも通りだった…