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2012年40歳  作者: 龍太郎
10/10

決意

ピンポーン!!


18:50(さすが時間ちょっと前だわ)


「はーい!」(もしかして新聞屋さんだったら恥ずかしいくらいいい返事だわ♪)


玄関を開けると・・・

いつもの壁のない笑顔の介護士さんが立っている・・・ちょっと雰囲気が違うのは普段着だからなのか?

少し後ろに・・・!?


(お坊さん??)

茶色のサムイにつるつるではないが坊主頭のおじさんが立っている(この人が代表か・・・)

「始めまして。宅老所わがやの瀬能と申します」


なんとも・・・この人も壁のない笑顔だ!いや?笑っていないのに不思議と温かい。(やはり坊さんか?悟りの境地か?)


挨拶を終え、家の中え招く。

(瀬能さんが何気なく家の中を見渡す)


お茶を出し、何から話していいのか迷っていると瀬能さんが・・・

「大体の話は聞いているのですが、確認してもいいですか?」


「は、はい。お願いします!」(何をお願いするんだ?落ち着け!私!)


瀬能さんの話はほぼ今までの流れをついていた。それどころか私が何を悩み、何がわからずに苦しんでいるのかさえずばり当たっていた。


「こんな所でしょうか?まあ、この娘から聞いただけなのであいまいな所があったら訂正して下さい。特に悩みや困難は人にはさらけ出したくない所ですが、それこそが大切な所です。」


「本当は父のことなんか面倒見たくありません!!なんて言われても驚きもしません!人の気持ちはそんなに単純ではありませんからね。色んな気持ちの集合体でしょう?」


(あっ・・・)頬を涙が流れる。

今まで気付いていなかったが気が張っていたのだ!

その緊張の糸が切れた!

しばらく話が出来なかったが、前に座っている二人はゆっくりと待っていてくれる。せかすような表情もない。


大きく深呼吸をしてやっと声が出た。

「父の事は私が見ます!!」

こんなに相手のことを一直線に見て話した事があったか?

私が初めて腹をくくった瞬間だった。


「はい。わかりました。これからも大変な事が多いと思います。けれど、一緒に乗り越えましょう。佐藤さん!一人ではありません!今からは私たちも一緒ですから。お客と事業者ではありません。

大切な事なので覚えておいてください!私たちはチームです。同じ方向を向いて歩いていくパートナーです。・・・」


パートナー!!

ありがたい。最近回りは敵だらけみたいになっていた。もしかすると私がそうなっていたのかもしれない。病院の人も施設の人も役所の人も、皆パートナーだったのかもしれなかった。

(なんだか自己嫌悪だわ)


「はい。何も解らないのですけど・・・平気でしょうか?」


「大丈夫ですよ。楽ではないでしょうけど。皆始めはそうでしょ!子育てだってね!それよりは手探りではないですよ。大事なのは頑張らない!!これです」


これからの手順(書類関係やケアマネへの相談、準備するもの)も紙に書きながら教えてくれた。


話が進むにつれて「私でも出来る!一番良い方法が見つかった」と思えるようになってきた。



「あの~」今まで黙っていた介護士さんが

「私は・・・飯田と言うんですけれど。ケアマネになるんです。本当はこんなこと言っちゃあいけないんですけど。今後のマネジメント。私に任せてもらえないかと・・・」


「え?介護士辞めちゃうんですか?」

「はい!それで瀬能さんのところで・・・」


「もちろん飯田さんにお願いしてもかまいませんが・・・名前を出してもかまわないの?」


「そうですね~~。ダメでした!!スイマセン♪」

「申し訳ありません」瀬能さんもなぜか誤る。なんだか夫婦漫才を見ているようで笑える。


結局、今のケアマネさんに宅老所の利用を相談し後にケアマネを替える事になった。


細かなサービスに至っては後日となったが、基本は家で見る事になりそうだ。不安は山ほどある!けれど昨日とは違う。何とかなりそうなそんな気がしてきた。

また父と二人暮らしが始まる。



二人が帰る。2時間もたっていておどろいた。

玄関で瀬能さんが振り向き

「ではまた。ご馳走様でした。」

「・・・あと・・・私は坊主ではありませんよ♪」

と笑った。


私は顔が真っ赤になり(何で分かったんだろう?心が読めるのかしら?)

そういえば笑った顔を始めて見た事に驚いた。





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